祝福のうつわ〜伊万里・鍋島名品撰〜

caltec2012-02-04



渋谷松涛にある戸栗美術館にて「祝福のうつわ〜伊万里・鍋島名品撰〜」展を鑑賞。


去年の戸栗美術館の1〜3月期の展覧会も似たような構成ではあったのだが、やはり、鍋島・伊万里の器を観に、ついつい戸栗美術館に足を運んでしまう。 昨年の秋に伊万里・有田・鍋島の窯元を訪ねて一層、鍋島や伊万里への愛着を深めたcaltec、今回の展覧会は作品と対峙し、濃密な時間を過ごすことになった。


戸栗美術館のHPによる本展覧会の概要は以下のとおりだ。

慶賀の文様として馴染みのある松竹梅、長寿を祝う鶴亀、平和を表す鳳凰麒麟。やきものには、縁起のよい文様が施されていることが多く、特に「献上手」とも呼ばれ、贈答品としても用いられた伊万里焼の型物金襴手のうつわや、将軍家などへの献上用として作られた鍋島焼にはおめでたい文様が選ばれています。今展示では、当館所蔵の伊万里焼・鍋島焼の名品の中から、江戸時代の人々も楽しんだ祝いのうつわで新春を飾ります。


本展覧会のメインはやはり第一部で登場する鍋島で、初期の鍋島、吉祥文様を不老長寿や子孫繁栄、富貴、永遠などの3つのテーマに分けて読み解く、その展示作品の鑑賞に多くの時間を割いてしまった。


やはり大胆に洗練された形でデザインされた鍋島の意匠は秀逸で、赤・青・黄・緑の4色のみの色展開である点も合わせ、主張しすぎず、上品で、デザイン性に富んでいて、今見ても斬新だと感じ入ってしまう、見事な逸品が多かったです。

《展示詳細》
【鍋島焼の吉祥文様】


江戸時代、17世紀の後半に佐賀藩鍋島家直轄の御用窯として始まった鍋島焼。幕府献上・贈答用の最高級品であったうつわには祝福の意味を込めて、松竹梅や鳳凰、亀甲などの文様を施しました。不老長寿や子孫繁栄、富貴などのおめでたい意味が込められた文様のことを吉祥文様と呼びます。それらの文様の多くは中国から伝わり、伝説や説話がもととなっているものも少なくありません。


慶ばしいことを象徴する鳳凰、不老長寿を意味する亀甲、子孫繁栄を意味する石榴、富貴を意味する牡丹など、人々は幸せを願い文様に思いを託しました。


新年や慶時によく用いられる松竹梅は厳しい環境に耐える力強さと不変な高潔さを愛でて中国では「歳寒三友(さいかんさんゆう)」と呼ばれ、代表的な吉祥文様のひとつとなっています。日本では個別に表わされることも多く、それぞれに吉祥の意味を持っています。常緑で、冬でも落葉せずに枯れないことから不老長寿を意味する松。寒中でも真っ直ぐに勢いよく伸び、強い繁殖性を持つ竹は子孫繁栄を意味します。早春に花を咲かせる梅は新春をあらわす縁起の良い植物として文様にも取り入れられるようになりました。松・竹・梅の3つを組み合わせて用いられるようになったのは江戸時代以降のことです。このように吉祥の意味を持つ文様をいくつか組み合わせてめでたさを強調し、意味合いを深めているものもあります。


第1部では、うつわに描かれた吉祥文様を読み解きながら、初期の段階から後期までの鍋島焼の名品をご紹介いたします。  


第二部と第三部は伊万里焼き。「ハレの日を飾る、宴の器」としての第二部、そして「季節毎のイベント時に使われる器」としての第三部。それぞれに趣が違っていて興味深く鑑賞した。


着物・掛け軸などもそうだが、風光明媚で四季がはっきりしている日本、季節毎に衣食住の全てにおいて装いを変え、日々の生活を楽しむ(それを風流という?)、そんな「日本の良さ」を堪能できる展示内容であったように思う。


展示途中で「鍋島」と「伊万里」の違いを、作風が類似している作品を並べて展示することで、その違いを解説しているコーナーがあったが、こういう展示をするのも戸栗美術館ならでは。毎回、作品横に添えられる解説をじっくりと読みながら鑑賞できるのも本美術館の良いところだと思う。(個人的にはもっと人が訪れても良い美術館だと思うが、あまり人が来すぎても、ゆったりと作品を鑑賞できないため、それはそれで大変か。。)

伊万里焼の吉祥文様】


江戸時代初頭に誕生した伊万里焼は、江戸後期になるまで日本でほぼ唯一の国産磁器でした。高級品として、ハレの日や祝い事の宴席を彩るうつわとしても用いられたのでしょう。吉祥文様が表されたうつわのほかに「壽」「寶」などの吉祥文字が書きこまれたものもあります。 


元禄時代(1688〜1704年)に作られた“金襴手”と呼ばれる伊万里焼は、赤や金彩を多用して、宝尽くしのほか、龍や鳳凰麒麟、獅子、鯉など瑞獣をモチーフとした吉祥文様が多く描かれ、特におめでたい気分を具えています。金襴手は素焼き・本焼き・色絵付け・金彩の焼付けと、最低でも4回は窯に入れて焼かなければならない高級なやきものです。その中でも日本国内の富裕層向けに作られた最上級品は「献上手」「型物」と呼ばれ、祝いの品として贈答したり、祝いの席でのうつわとして用いられました。 


第2部では、金襴手を中心に、伊万里焼の祝いのうつわをご紹介いたします。  


【季節を感じる文様】


春夏秋冬、日本では移ろいゆく四季を感じながら季節ごとに様々な行事や催しが行われます。うつわの中にも季節を感じる文様を見出すことができます。年の初めのお正月には、各藩の大名が江戸城に登城し、春の訪れによって自然界に新しい命が誕生することを慶び新年を祝いました。文様にも干支の動物や獅子、鶴亀、松竹梅といったお正月の慶賀の気分を思わせるものがみられます。 


中国からは五節句と呼ばれる、季節の節目を祝う節句が伝わり、江戸時代には公式行事として定着します。季節の変わり目には悪い気が満ちやすいと信じられ、災厄が起こらないようにと願いを込めて宮中では邪気を払う宴会が行われるようになりました。節句に関係する文様としては春の七草のひとつでもある大根や、雛祭りの桃や重陽の菊などがあります。


春にはお花見をし、又秋には紅葉を楽しむように、日本には季節のうつろいを愛でる習慣があります。江戸時代にも大名から一般庶民まで、季節ごとのお祝いの席には、こういった文様のうつわを使って楽しんでいたのかもしれません。


第3部では、伊万里焼の中から季節を感じる四季折々のうつわをご紹介いたします。

五節句…1月7日の人日、3月3日の上巳、5月5日の端午、7月7日の七夕、9月9日の重陽のことをいう。


3月下旬まで開催しているので、また来月に器たちに会いに来ようと思う。


企画力  :★★☆☆☆
展示方法 :★★★☆☆
作品充実度:★★★★☆
満足度  :★★★★☆



人気ブログランキングへ