名和晃平─シンセシス展

caltec2011-07-16



木場にある東京都現代美術館にて「名和晃平シンセシス」展を観る。


2009年に観た「ネオテニー・ジャパン 高橋コレクション 展」の中でその存在を知った名和晃平。「面白そうだなあと」と漠然と思いながら展覧会会場を訪れたが、展示内容は知的好奇心を満たされる、とても充実しているものだった。


東京都現代美術館のHPによる、今回の企画展の概要は以下の通りだ。

「Cell」という概念をもとに、先鋭的な彫刻・空間表現を展開する名和晃平(1975年生まれ)の個展を開催します。


名和はビーズやプリズム、発泡ポリウレタン、シリコーンオイルなど流動的な素材・メディアを情報社会における感覚や思考のメタファーとして扱い、デジタルとアナログの間を揺れ動く身体と知覚、感性のリアリティを表現しています。本展では、国内外での多数の受賞・発表をふまえ、パラレルに姿を変える名和作品の根幹を各カテゴリーの方向性や相互の関係から探り、そこにかいま見える今後の姿を追求します。


BEADS / PRISM / LIQUID / GLUE / SCUM / DRAWINGなどのカテゴリーに新たな展開を加え、音楽やファッション、プロダクトデザイン領域とのコラボレーション、パブリックアート、プロジェクトチームによる制作などを通して、国際的に活躍する作品世界の魅力が紹介されます。また、手法そのものの開発からスタートする表現スタイルなど、名和作品の多義的な創作のありかたを探ることによって、そのすぐれた造形性、表現の拡がりや可能性を呈示します。


名和は「映像の細胞PixCell=Pixel(画素)+Cell(細胞・器)」という概念を通して、感性と物質の交流の中から生じてくるイメージを追求しています。彼は自らを「彫刻家」としながらも、私たちが、感性と物質を繋ぐインターフェイスである「表皮」の質を通して対象をリアルに感知・認識していることに注目し、その表現領域をさらに拡げつつあります。本展は、その卓越した表現力の源とは何か、そして次世代の創作のあり方について考える貴重な機会となるでしょう。


本展覧会を通じて感じたのは、彼が発信しようとしているメッセージの深さと、その結果彼が選んだ発信する媒体(作品)の明快さのギャップ。一見すると、シンプルでわかり易くて、素通りしてしまうこともできる、そんな作品なのだが、その作品を注意深く観、彼(名和)が表現しようとに思いを巡らすと、とたんにその作品の深みがグッと増してくる。


個人的に現代アートは、わかり易いものがいいと思っている。背後に壮大な重いテーマがあろうとも、それを難解で複雑なものとして表現するのではなく、作者のフィルターを通じ、明快でわかり易い、シンプルな形で表現しているものが好きなのだ。「アート=難解なもの、主張が強いもの、判る人だけが判ればいい」という、独りよがりな作品ではなく、「アート=親しみやすいもの、とっかかりやすいもの」という、接する人の間口を広げられるような、そんな作品を評価したい、という(勝手な)思いがある。


なので、名和晃平作品、いろいろなシリーズを観たが、どれも楽しめた。映像、ドローイング、立体作品、いずれも「ほほう」と唸らせるものが多く、日頃疑いもしない「確実」だと思っている自分の「認識」や「感覚」といったものが、いかに「曖昧」なものであるか、問われているような気がした。


企画力  :★★★★☆
展示方法 :★★★★☆
作品充実度:★★★★☆
満足度  :★★★★★


現代アート好き、知的好奇心満たされたいという人にはお勧めの展覧会だ!



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