パウル・クレー ― おわらないアトリエ展

caltec2011-07-15



竹橋にある東京国立近代美術館にて「パウル・クレー ― おわらないアトリエ」展を観る。会場について、まずは(平日であるにもかかわらず)鑑賞者の数の多さに圧倒された。


本展覧会の率直な感想だが、クレーの代表的な有名な作品、傑作と言われる作品を見たい人にとっては、正直言って、本展覧会は「物足りない」と思う。しかし、クレーの作品作りの考え方を知りたいと思っている人にとっては、とても素晴らしい、得るもののある展覧会である、と言えるのではないかと思う。


東京国立近代美術館のHPによる、今回の企画展の概要は以下の通りだ。

スイス生まれの画家パウル・クレー(Paul Klee, 1879-1940)は、長らく日本の人々に愛され、これまでにも数多くの展覧会が開催されてきました。それらの展覧会では作品の物語性や制作上の理念が詩情豊かに詠われ、多くの人々にクレーの芸術の魅力を伝える役割をはたしました。


国立近代美術館で初となる今回のクレー展では、今までの展覧会成果を踏まえた上で、これまでクローズアップされてこなかった「クレーの作品は物理的にどのように作られたのか」という点にさまざまな角度から迫ります。この観点から作品を見てみるならば、視覚的な魅力を体感できるのみならず、その魅力がいかなる技術に支えられているのか、ということまでもが明らかになるでしょう。


クレーは1911年から終生、制作した作品の詳細なリストを作り続けます。1883年、画家4歳のときの作品を手始めに、約9600点もの作品からなるこのリストには、作品のタイトルのみならず、制作年と作品番号、そして使用した材料や技法などがこと細かに記されています。「何を使い、どのように作ったのか」ということは、この画家にとってきわめて重要な関心事だったのです。
その「制作プロセス」を、クレーは、アトリエ写真というかたちで記録に留めたり、自ら「特別クラス(Sonderklasse)」と分類した作品を模範作として手元に置いたりしながら、生涯にわたって検証し続けました。 具体的な「技法」と、その技法が探究される場である「アトリエ」に焦点を絞り、クレーの芸術の創造的な制作過程を明らかにしようする本展において、鑑賞者は、ちょうど画家の肩越しに制作を垣間見るような、生々しい創造の現場に立ち会うことになるでしょう。


スイスのパウル・クレー・センターが所蔵する作品を中心に、ヨーロッパ・アメリカ・国内所蔵の日本初公開作品を数多く含む約170点で構成されます。


展示内容は大きく分けて、2つに大別される。一つ目は、クレーの4つのアトリエを通じ、そのアトリエでの製作年代で、クレーがどのような作品を制作していたのかを展示するゾーン。ここでは「クレーらしい」見所のある作品が展示され、クレー作品はどのようなものか、概要を知ることが出来る。


このアトリエゾーンを出て、2つ目の「クレーの作風(作品制作技法)を解明する」ゾーンに出る。ここでは、クレーの様々な作品製作技法を、まるで迷路のように入り組んだ展示スペースの中で観ることになる。クレーの作品は美しいものを製作する「芸術」作品というよりは、どちらかと言えば「実験」的な作品だと認識しているが、このゾーンの什器もその「実験」的なもので、クレーの知的遊びに参加して作品を鑑賞している、そんな気分を盛り上げるのに一役買っていると感じた。


企画力  :★★★★☆
展示方法 :★★★★☆
作品充実度:★★★★☆
満足度  :★★★★☆


「望み過ぎ」なのは重々承知した上ではあるのだが、個人的には、もう数点、クレー作品の傑作・秀作が展示されていると、より充実した素晴らしい展覧会になったのではという感想を持った。



人気ブログランキングへ