ワシントン ナショナル・ギャラリー展

caltec2011-07-01



六本木にある国立新美術館にて「ワシントン ナショナル・ギャラリー展」を観る。


アメリカの首都、ワシントンDCの博物館群(通称モール)にある、このナショナル・ギャラリー、フェルメールの作品も数点収蔵しており、とても充実したコレクションを誇る美術館なのだが、日本ではあまり知られていない気がしている。そんな美術館の印象派を中心とした作品がセレクションされての日本での展覧会ということで、楽しみにして出かけた。


国立新美術館のHPによる、今回の企画展の概要は以下の通りだ。

12世紀から現代までの世界有数の西洋美術コレクションで知られるこの美術館は、一人の男の壮大な夢と情熱で創設されました。


その男の名はアンドリュー・メロン。19世紀末から20世紀にかけて銀行家、実業家としてアメリカ屈指の財を築き、1890年代末にはジョン・ロックフェラー、ヘンリー・フォードらと並んでアメリカ合衆国を代表する大富豪となった人物です。


合衆国財務長官、イギリス大使を歴任した彼は、美術品の収集に関心をもち、いつしか自国の首都にふさわしい美術館を創る夢を抱きます。そして自らの審美眼と財で集めた絵画約130点を含むおよそ150点にのぼるコレクションと、美術館設立のための資金を連邦政府に寄贈したのです。


こうして1941年に完成した西館は当時世界最大の大理石造りの建造物であり、まさに老実業家の夢の結晶でもありました。

 
その後も氏の志に賛同する人々が作品の寄贈を続け、今日に至るまで同館の所蔵品約12万点はすべて一般市民による国への寄贈で成り立っています。寄贈は美術品そのものであったり、美術品を購入するための資金であったりしますが、それはまさに、「アメリカ市民が創った奇跡のコレクション」と言えるでしょう。


本展では、ワシントン・ナショナル・ギャラリーの所蔵作品の中でも特に質が高いことで知られる印象派とポスト印象派の作品から、日本初公開作品約50点を含む全83点を展示します。出品作品の約半数は、創設者アンドリュー・メロンの遺志を受け継いだ娘のエルサ・メロン・ブルースと、息子ポール・メロンのコレクションに帰属するもので、同美術館の心臓部ともいえるこれらの作品が、これほどの点数でまとまって館を離れるのは極めて稀なことです。


一人の実業家のロマンと憧れ、そしてその精神を受け継ぐ美の殿堂。アメリカの首都が誇る珠玉のコレクションを、どうぞご堪能ください


展覧会は4部構成となっている。
  1.印象派登場まで
  2.印象派
  3.紙の上の印象派
  4.ポスト印象派以降


つまり印象派を本展覧会のメインとしながらも、印象派にいたる前の芸術運動(バルビゾン派写実主義など)をコローや、クールベブーダン、マネなどの作品を通じて理解してもらった上で、本展覧会のメインとなる印象派の展示ゾーンへと鑑賞者を誘い、印象は絵画を十分堪能してもらった上で、印象派の素描・スケッチ等の紙の上での作品を鑑賞し、最後に、ポスト印象派として点描のスーラや、セザンヌゴッホゴーギャンなどの作品を展示するという構成となっている。歴史的変遷に沿った形で展示してあるため、当時の絵画の流行(運動)の流れが展示内容を見ることで理解できるようになっている。


今回の出展の特徴としては、印象派ではモネ、ルノワールの作品が多いことと、(アメリカの美術館ならではの、アメリカ人女流画家)メアリー・カサットの作品が多く展示されていること。そして、明快でわかりやすく、親しみやすい作品が選ばれていることが挙げられると思う。その画家の特徴が良く現れている作品が出展されていることが多いため、同じ印象派といっても、自分はどの画家の絵が好きなのか、展示作品を見ながら鑑賞者が感じることが出来ると思う。


個人的には、モネの『日傘の女性、モネ夫人と息子』が秀逸だった。この作品の構図、色調が、好みドンピシャリなのは言うまでもないが、絵画として安定しているというか、揺るぎないというか、他の作品と比べても別格の感があった(個人的にそう感じているだけだとは思いますが)。


この絵の前に立って作品と対峙していると、風の流れや、草の匂い、そして陽光、爽やかな空気、などといったものが感じられるようで、すっと作品の世界感に入っていくことが出来る。この絵の前にたたずむこと20分弱。何とも言えない充足感を感じながら、次の作品へと向かった。


モネ以外には、ルノワールと、カサットの作品に秀作が多い印象を受けた。特にカサットは女性ならではの視点での子供の描き方(ぷっくらした頬や手の表現や、子供の表情)、そして同じく女性ならではの画面の色彩構成(どちらかと言うと、ファッション的な色の取り合わせ)が他の印象派の画家とは一線を画しており、なかなかに見ごたえがあった。


あとは個人的にも好きなカイユボットの作品も(一点だけではあるが)出展されており、改めて、枯れの作品の持つ明快さ、明るさ、スポーティーさといったようなものを感じ取ることが出来た。


他にはドービニー、ゴーギャンゴッホの作品も○。全体を通じて、外れがなく、良質の作品を多く揃えており、十分に堪能できる展覧会であたったと言える。


企画力  :★★★☆☆
展示方法 :★★★☆☆
作品充実度:★★★★☆
満足度  :★★★★☆



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