フェリックス・ティオリエ写真展 −いま蘇る19世紀末ピクトリアリズムの写真家−

caltec2010-07-18



世田谷美術館にて『フェリックス・ティオリエ写真展 −いま蘇る19世紀末ピクトリアリズムの写真家−』を観る。

最初期のカラー写真など、知られざる19世紀の写真家のヴィンテージ・プリントが一堂に


フェリックス・ティオリエ(1842−1914)は、優れた写真家であると同時に、19世紀末にヨーロッパで展開された「ピクトリアリズム」や「自然主義」の芸術運動を代表する作家の一人です。


彼の写真家としての業績は、長い間全く知られておりませんでした。それは、彼が当時の写真家たちと交流せず、展覧会にも出品せず、写真協会のメンバーにもならず、また存命中には写真を売ることもなかったからでした。ティオリエの作品を文化機関や美術館に初めて紹介したのは、その写真の素晴らしさに魅了された、彼の子孫の一人であるベルトラン・ジュリアン=ラフェリエール氏であり、それは1980年代のはじめのことでした。


その後、彼の写真作品は、1986年にニューヨーク近代美術館に、1995年にはサン=テティエンヌ近代美術館に、その翌年にはシュトゥットガルト州立美術館に次々と紹介され、1998年には、オルセー美術館横浜美術館にも紹介されました。このときオルセー美術館は、そのコレクションにティオリエの15点のヴィンテージ写真を加えました。これらの作品は近年、テーマ別の様々な展覧会「パリ 1900年」(グラン・パレ、2000年)、「ピクトリアリズムからウジェーヌ・アジェへ」展(オルセー美術館、2002年)、「風景と自然」展(オルセー美術館、2004年)で紹介されています。


本展では、こうした知られざる写真家、ティオリエが遺したヴィンテージ・プリントに加え、最初期のカラー写真ともいうべきオートクローム数点など、約170点の稀少な作品を展覧いたします。自然と芸術との調和をひとつのテーマとしてきた世田谷美術館において、バルビゾン派ともかかわりをもった美しい写真の数々が、一世紀以上の時間を超えて蘇ることになります。日本の美術館においては初めてとなるこの本格的なフェリックス・ティオリエの回顧展にて、皆様が改めて写真のもつ魅力に触れてくださることを願っています。


企画力  :★★★☆☆
展示方法 :★★★☆☆
作品充実度:★★★★☆
満足度  :★★★★☆



人気ブログランキングへ