『国盗人』−シェイクスピア「リチャード三世」より−

caltec2009-12-11



世田谷パブリックシアターにて「国盗人」を観劇。


国盗人とは、シェークスピアの「リチャード3世」を狂言をベースにアレンジしたもので、観劇中その独特の世界観に圧倒された。シェークスピア作品の日本風アレンジと言えば。。。りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピア シリーズにハマッているcaltecですが、「国盗人」もとても良かったです。


特に印象に残ったのは下記の3点


○言葉遊びの妙
悪三郎と杏、悪三郎と理智門、それぞれ同じような台詞を話しながら単語を変えることで、受け取り方が全然変ってくる、という点を対比を鮮やかに描き出していた。これぞシェークスピア劇なのだろう。 この対立する両者の台詞の掛け合いは狂言ならではの滑稽なやりとりもあり、なかなかに見ごたえがあった。


○面の効果的な使い方
冒頭、現代の能舞台におかれた面を一人の女性が拾い上げ「夏草や兵共が夢のあと・・」と言うところから夕立がおき、古の世界へと物語が進む。。。
ここで面とは、死者・亡霊・彼らの想い、のようなものを象徴している存在であるように思える。劇中、悪三郎により殺されていく登場人物が死のシーンで必ず面を被っているのも、面=死者(この世ではない、あの世のもの)ということをあらわしている。その面が一番効果的に使用されたのが最後の悪三郎と理知門の対決前夜のシーン。面を被った兵士がたくさん登場するが、これは、悪三郎に葬られた死者の亡霊を意味している。そして、対決のシーンでは自ら面を被って出撃する悪三郎。。。面を被ること=この戦でやがて死に至ることの暗示であり、いろいろと考えられた演出だなあ、と感じた。


白石加代子の演技
女性4名を演じ分ける白石加代子(冒頭とエンディングの現代女性を入れたら5役)。悪三郎に亡霊となって襲い掛かるシーンでは、4役それぞれの衣装を次々と着替えていくことで、それぞれの役に成り代わる、という舞台上での役替りを披露しており、観客に向けてのアピールという意味で、この舞台の成功の一つの要因になっていると思う。白石加代子という役者あっての演出だと思うが、個人的には、彼女が誰を演じているのか、一瞬わからなくなる場面もあり。。。 この作品の原作である「リチャード3世」という作品をある程度知っていないと、なかなかすんなりと理解できないような気もした。



音 楽 : ★★☆☆☆
脚 本 : ★★★☆☆
演 出 : ★★★★☆
役 者 : ★★★★☆
舞台/衣装: ★★★★☆
満足度 : ★★★★☆



人気ブログランキングへ


(嵐のようだった)