生誕150年 ルネ・ラリック展 華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ

caltec2009-07-12



六本木にある国立新美術館にて「生誕150年 ルネ・ラリック展  華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ」を観る。実は今年の展覧会の中で一番楽しみにしていたのがこのラリック展だ。


ラリックというと、トンボやコウモリなどの昆虫をモチーフとしたジュエリーや、植物の中に官能的な女性の姿が浮かび上がった装飾品がまず思い浮かぶが、その一方で、香水瓶で有名なラリック社の創始者としてのクリスタル・ガラスアートの作家である、という印象も持っていた。


一体どちらがラリックなのだろうか? という、モヤモヤとしたものが自分の中にあったのだが、本展覧会に向けての国立新美術館の展覧会概要を読むことで、その疑問が晴れた。

ルネ・ラリック(1860−1945)は、19世紀末から20世紀半ばにかけて、アール・ヌーヴォーのジュエリー制作者、アール・デコのガラス工芸家として、二つの創作分野で頂点をきわめた人物として知られています。1900年のパリ万国博覧会、1925年のアール・デコ博覧会で国際的な脚光を浴びたラリックの作品は、工芸の価値を、絵画や彫刻などの純粋美術と同じレベルにまで高めるとともに、生活に新たな美意識をもたらすものとして異例の評価をうけました。21世紀を迎えた現在、そうした見解は改めて確証され、ラリックへの賞賛は日を追って高まりつつあります。


生誕150年を記念する本展では、国内外のコレクションから厳選された約400点の作品を一堂に集め、ジュエリー時代とガラス時代の二つの人生を歩んだラリックの創作の全容を紹介します。夢見るジュエリーから光溢れるガラスの空間へ、小さな手作りの世界から近代的な産業芸術へと広がりをみせたラリックの美の世界。それは、一本の鉛筆を手に、かつて誰も目にしたことのない美の輝きを一筋に追い求めた、一人の芸術家のイマジネーションから紡ぎだされたものでした。


グルベンキアン美術館秘蔵のティアラや、アール・デコ博覧会で話題となった野外噴水塔のガラスの女神像、蓮花のテーブル・セッティングほか、カーマスコット全種類などが出品される本展では、時代を駆け抜けたラリックの輝かしい創造の軌跡を、かつてない規模で展覧します。


つまり、時代によって彼は表現のスタイルだけではなく題材をも変え、上手く時流に乗り、第一線のアーティストとしてあり続けた、ということだろう。


  アール・ヌーヴォー時代<華やぎのジュエリー>:ジュエリー作家
  アール・デコ時代   <煌くガラス>    :ガラス作家


さて、本展覧会を観た率直な感想だが、断然アール・ヌーヴォーのジュエリー作家時代の作品の方が優れたものが多いという印象を受けた。優れた、とは言いすぎかもしれない。アール・ヌーヴォー時代の作品の方が、個人的に好きである。


実は今回の展覧会の見物である「ティアラ《雄鶏の頭》」(カルースト・グルベンキアン美術館蔵@リスボンポルトガル)とは2度目の対峙である。ポルトガルを旅行した際にグルベキアン美術館を訪れ、その質・量ともに圧倒的なラリック作品に触れ、一気にラリックファンになったのであった。。。


幻想的で、優美で、そしてどこか官能的で退廃的な彼の装飾品は、何度見ても「仕事の細かさ」に目を奪われ、隅々まで見ていくと、時のたつのを忘れるくらいである。今回も至福のときを過ごすことができた。


一方、アール・デコの時代に移り、ラリックは次第に「ガラス」という素材に注目し始め、彼の作り出す作品はより大型化、シンプル化されていく。 後半の展示のなかでは、アール・デコ博覧会で話題となった野外噴水塔のガラスの16種類の女神像のうち、12種類が一堂に展示されるなど、見所は多かった。


ジュエリーはジュエリーとして、ガラス工芸はガラス工芸として、それぞれの趣旨での展覧会で個別に展示されてきたラリックのもつ2つの顔を、一度の展覧会で、逸品を通じて理解することができる本展覧会、なかなかに楽しいものだった。


企画力  :★★★☆☆
展示方法 :★★★★★
作品充実度:★★★★☆
満足度  :★★★★☆



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