ネオテニー・ジャパン 高橋コレクション 展

caltec2009-06-05



上野にある上野の森美術館にて「ネオテニー・ジャパン 高橋コレクション」展を観る。


ネオテニーって何? 高橋コレクションの「高橋」って?という疑問は本展覧会のHPの概要を見ていただけるとわかると思う。

本屈指の現代美術コレクターとして知られる精神科医高橋龍太郎氏が収集したコレクションにより、世界から注目を集める1990年代以降の 日本の現代美術の流れと動向をたどる「ネオテニー・ジャパン―高橋コレクション」を開催いたします。


「neoteny=幼形成熟の意」をキーワードに、90年代以降の日本の現代美術にみられる特徴―幼さ、カワイイ、こどものような感性、マンガ、 アニメ、オタク、サブカルチャー、内向的、物語性、ファンタジー、過剰さ、日常への視線、技術の習熟、細密描写、巧みなビジュアル表現 など、日本の現実や若者の心象風景とリンクした世代のアーティストたちが生み出してきた新たな世界を多角的に読み解きます。


個人コレクターだからこそ築き得た、時代とアーティストの感性を鋭く切り取る高橋コレクションをまとめて紹介する初の展覧会です。出品作家 は、奈良美智村上隆など国際的に活躍するアーティストから若手アーティストまで33名。絵画、立体、映像、インスタレーションなど約80点 の作品をご紹介します。会期中には、アーティストによるトークやワークショップ、ライブなど多彩なイベントを予定しています。現代美術を観る楽 しさ、作品について考える愉しみを、この展覧会を通して、ともに発見していただきたいと思います。


(出展アーティスト)


会田誠、青山悟、秋山さやか、池田学、池田光弘、伊藤存、小川信治、小沢剛小谷元彦加藤泉加藤美佳工藤麻紀子、鴻池朋 子、小林孝亘佐伯洋江さわひらき須田悦弘高嶺格束芋千葉正也、照屋勇賢、天明屋尚、できやよい、奈良美智名和晃平西尾康之、町田久美、Mr.、三宅信太郎、村上隆、村瀬恭子、村山留里子、山口晃 (50音順)


Japan as cool(カッコいい、おしゃれ)として有名になった日本のサブカルチャー奈良美智村上隆の作品を扱うことで有名な小山ギャラリーの小山登美男さんの著作にも度々登場するので、高橋龍太郎氏、現代アート好きの人はご存知の人だと思う。


実際に展覧会を見た感想だが、
  ・よくこれだけの作品を個人コレクションで集めたな(有名なだけある)
  ・有名どころからこれからのアーティストまで幅広く集めているな
と感心する一方、
  ・(ただ)一連の作品を通した感じるセンスの統一があまりないのか?
という印象も受けた。


個人的に良いなと思ったのが下記の2名。
  山口晃 
  池田学


山口晃は歴史と現代とがが絶妙に融合した独特の絵画で知られ、特に日本画の中に六本木ヒルズが登場する絵が一般的に知られていると思う。会場では「今様遊楽園2000」という作品が展示されており、遠めに見ると歴史画(建物の作品)だが、近くに見ると、それは現代のスーパー銭湯的なアミューズメント施設が描かれている。


作品の下に、原画も展示されており、そこを見ると、建物の線画の上に、「温泉の元を入れている人」「おばQ」[裸踊りをする人たち」などの文字が描かれており、その文字が書かれた部分の完成作品を見ると、ちょうどその文字で書かれた行動をとる人物が描かれている。


よくよく見れば、現代風な服を着た髷の侍や、江戸時代の人々、そして現代の人々など、作風と同様、過去と現在が入り混じった、独特の世界を構築していることがわかる。


一人ひとりの登場人物や描かれているモチーフにストーリーがあるので、画の前に立ち、あれこれと物語を作りながら作品を見ていくと、あっという間に時間がたってしまう、そんな画風だ。テイストは違うが、画面いっぱいに人々を配し、ストーリー展開を行うという点では、ヒロヤマガタと似ているといえると思う。


もう一人気になったのが、池田学。実は彼の実作品を見たくてこのネオテニー・ジャパンに来た、といっても過言でないくらい、密かに期待していた作品。展覧会では2作品展示されていたが、彼の代表作といってもいい「興亡史」が本展覧会で一番印象に残った。


大きな画の中に、いろいろな隠れ要素が含まれており、屋根瓦の一部が波に変わっていて、その上をサーファーがサーフィンしていたり、絵の下方にある水の上で、競艇をしていたり、その下では合戦をしていたり、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」をモチーフにした絵があったり、窓から999のように鉄道が出発していたり。。。


とにかく、いろいろな要素が雑多に混ぜ合わされた独特の混沌とした世界が広がっていて、彼の作品は山口晃以上に、見所が盛りだくさん。気付くと30分以上、上から下、右から左、と隅々「チェック」をしている自分がいた。


いやー、とにかくおもしろい。


会場で売られている図録を見ると、池田は紙にペンとカラーインクのみで作品を描くようで、この大作「興亡史」もその手法で描いた作品だそうだ。製作におそらく1〜2年は有したと思われる本作品、お値段もやさしくはないんだろうなあ、、と思う。


しかし、こういう作品がっかに一枚あると、飽きないし、和むし、いいことが多いだろうな。だから、精神科医としての高橋コレクションに加えられているのだろうか、とも思いながら会場を後にした。


企画力  :★★★☆☆
展示方法 :★★★☆☆
作品充実度:★★★★☆
満足度  :★★★★★



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