生活と芸術 − アーツ&クラフツ展 ウィリアム・モリスから民芸まで

caltec2009-02-22



上野にある東京都美術館にて「生活と芸術 − アーツ&クラフツ展 ウィリアム・モリスから民芸まで」を見る。


開館前から話題になっていた本展覧会。アーツ&クラフツはわかるけど、それがどう民芸と関わるのか?そのあたりが本展覧会の見所だな、と勝手に想像しておりましたが、、、


まずは本展覧会の概要を東京都美術館のHPより。

19世紀後半にイギリスで興ったデザイン運動「アーツ&クラフツ」の広がりを、ウィリアム・モリスを中心とするイギリス、ウィーン工房がひときわ輝いたヨーロッパ、そして民芸運動が花開いた日本での美しい作品からたどる展覧会です。


装飾芸術の殿堂、ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館(V&A)との共同企画で、V&Aと国内の美術館などから、家具、テーブルウェア、ファブリック、服飾、書籍やグラフィック・デザインなど約280点を一堂に出品します。必見は、柳宗悦らが昭和初期に建てた「三国荘」(みくにそう)の再現展示です。柳の収集品や若き濱田庄司、黒田辰秋らの作品で飾られた室内には、民芸の原点を見ることができます。


手仕事の良さを見直し、自然や伝統に美を再発見し、シンプルなライフスタイルを提案する――。アーツ&クラフツが生み出した精神は、現代の生活に影響を与えながら、今なお遠い理想のようにも映ります。モリスや仲間たちが作り出した家具や壁紙、当時の最先端都市ウィーンの前衛的な家具やグラフィック、「用の美」を見出した民芸の美意識を味わいながら、生活のなかの芸術について思いをはせる機会となれば幸いです。


実際に会場を訪れてみて思ったのは、本展覧会は、イギリスで興った「アーツ&クラフツ運動」そのものではなく、そのアーツ&クラフツ運動の精神や思想が、イギリスの周りの国家にどのような影響を及ぼしていたのか、そして世界的な潮流のなかで、日本ではその精神はどう受け継がれていたのか?という点に着眼が置かれており、ただのウィリアム・モリスのパターン展示ではない点が、他のアーツ&クラフツ展と一線を画するところだと思う。


花や自然をモチーフにしたイギリスの豊かな田園生活のイメージから、退廃的でアバンギャルドなウィーンの雰囲気、そしてシンプルで飽きのこない美しいフォルムのドイツプロダクト、土着文化の影響を色濃く受けたロシアや北欧の作品と、場所や民族が変われば、そこから生み出されるイメージも多種多様で、ひとえに「アーツ&クラフツ運動」と言いつつも、その多様性や広がりの豊かさを楽しむことが出来た。


個人的に本展覧会のハイライトは最後の「日本」コーナーの、「三国荘」(みくにそう)の再現展示コーナー。西洋と東洋がミックスした、柳宗悦のあの独特の感性を味わうことが出来き、充実した時を過ごすことができた。一点一点を見ると「それほどすごいのか?」と思いがちなアイテムも、こうして統一感を持って展示されると、その根底に流れる審美眼に改めて驚かされた。


ただこうして全体を眺めてみると、アーツ&クラフツ運動という運動に対しての疑問も生じてくる。手作業の良さや、伝統的な美への開眼、そして日常生活のクラフツを、こうしたアートの影響を受けたデザインのものに変えることで、豊かで精神性に溢れた日常生活を送ろう、というものが本来のアーツ&クラフツなのだとは思うが、モリスしかり、民芸しかりだが、最終的には彼らが生み出すプロダクツは高価なものとなり、結局は一般市民ではなく裕福層が享受するものとなるのでは?という印象を受けたのは僕だけだろうか?


企画力  :★★★☆☆
展示方法 :★★★★☆
作品充実度:★★★☆☆
満足度  :★★★★☆



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