アンドリュー・ワイエス 創造への道程 展

caltec2008-12-20



渋谷Bunkamura・ザ・ミュージアムにて「アンドリュー・ワイエス 創造への道程」展を見る。


学生時代にMOMAで彼の代表作「クリスティーヌの世界」を観てから、ワイエスファンであったこともあり、今年の年始当初から観るのを楽しみにしていた展覧会だったが、結果は予想を裏切らない、内容の充実したものだったと思う。


同美術館のHPによる、本展覧会の概要は以下のとおり、

アメリカの原風景を描くアンドリュー・ワイエス(1917−)は、アメリカン・リアリズムの代表的画家です。テンペラの作品が一般的に知られていますが、水彩画家として出発したワイエスは素描や水彩も数多く制作しています。多くの場合、ワイエスは鉛筆やペンなどで素描を描き、そして次に水彩を描きます。さらにドライブラッシュ(水気をしぼった筆で描く水彩画の技法)でより詳細に描き、最後にテンペラに取りかかります。一方、テンペラに至らず水彩やドライブラッシュで終えた作品の中にも、注目すべきものが多数あります。これらの素描や水彩には、完成されたテンペラに比べ、画家の激しい感情のほとばしりや、対象に対する関心の有り様や意識の動きが直接反映されているのです。


本展では、テンペラとともに素描・水彩にも焦点をあてることで、ワイエスの創造のプロセスを紹介します。制作過程で生れた作品の比較を通して、対象に対する画家の関心の変化を辿るとともに、その変化に応じた描き方の多様さを知ることができるでしょう。展示は水彩・素描を中心に、その準備制作を経て完成されたテンペラ約10点、総点数約150点によって構成されます。ワシントン・ナショナルギャラリー、フィラデルフィア美術館をはじめ、アメリカの美術館から主要な作品が出品され、さらにワイエス夫妻のコレクションから未公開の水彩・素描が、また丸沼芸術の森からメイン州のオルソン家を描いた水彩・素描が出品されます。ひたむきに制作を続けるひとりの画家アンドリュー・ワイエスの生の姿に迫る、ファン待望の展覧会です。


展覧会概要でも述べられているように、テンペラで描かれた完成作が展示される前に、鉛筆や水彩画で描かれたその作品のための習作が展示されていた。来館者は展示作品を順に見ていくことによって、ワイエスが一つの作品を作り上げるまでに、どのような過程を経て行ったのか、理解することができる構成になっていた。リアリズムを追求する画家ならではの展示内容・展示方法だな、非常に良い構成内容だな、と思いながら展覧会を楽しんだ。


本展覧会を観て、ワイエスについて感じたことは下記の4点である。


①非常に細かい作業をしている作家である。
完成作をみるとほんの一部分についても、徹底したリアリズムを追及している。例えば、作品の本の一部分である雨樋の部分を詳細にクローズアップしてスケッチをしており、作品を各パーツ毎に切り取り、詳細にスケッチした上で一つの作品を地道かつ念入りに仕上げて行く、その職人的な作業の仕方を興味深く見た。


②徹底して身近な作品を題材に取っている
ワイエスの作品は彼が避暑地として夏の間過ごしたメーン州のオルソン家、もしくは彼の故郷であるペンシルバニアの家の周りを描き続けており、そのモチーフへの徹底振りがすごいなと感じた。


③全体的に暗く落ち着いた色調を特徴とする
ワイエスの作品は全体的にグレーや茶色を基調としており、ほとんどモノクロームの世界であるといってもいい。ただ時折水色や赤などが指し色として効果的に作品の中に使われ、その色がもつ鮮やかさが、注意を向けたい対象物を全体から浮かび上がらせているように感じた。


④彼の作品はテンペラ画より水彩画の方が(個人敵に)好きである
古典的なテンペラ画を描いているが、全体的にトーンが整い調和の取れているテンペラ画よりも、個人的には習作として描かれていた水彩画の方が個人的に「いい作品だな」と感じるものが多かった。これは作品の質というより、より色が鮮やかでコントラストのはっきりとした水彩画の方を好むという、個人的な好みによるものだとは思います。


企画力  :★★★★☆
展示方法 :★★★☆☆
作品充実度:★★★★☆
満足度  :★★★★★



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