ヴィジョンズ オブ アメリカ 第3部 アメリカン・メガミックス 1957-1987

caltec2008-12-07



恵比寿にある東京都写真美術館にて「ヴィジョンズ オブ アメリカ」3部作の最終回、「第3部 アメリカン・メガミックス 1957-1987」展を見る。


同美術館のHPによる、本展覧会の概要は以下のとおり、

ジャック・ケルアックがビート世代を代表する小説『オン・ザ・ロード』を発表した1957年からポップアートのスーパースター、アンディ・ウォーホルが没した1987年まで、写真、美術、文学、音楽など、20世紀後半のアメリカ文化を横断的に捉え、今なお輝きを失わない魅力と時代の中での変貌、現代文化への圧倒的な影響力について考えます。展示は「路上」、「砂漠」、「戦場」、「家」、「メディア」という5つの象徴的な場をキーワードに構成します。


正直に言うと、18世紀から20世紀の歴史的なコンテクス上必要な観点からの切り口で語られていることもあり、第1部、第2部の「ヴィジョンズ・オブ・アメリカ」に関しては「イマイチかな?」という思いを拭い去れないでいたが、今回の「第3部 アメリカン・メガミックス 1957-1987」に関しては、「これぞアメリカンカルチャー」という要素が満載で見所の多い展示内容だったと思う。


HPによる各パートの解説は以下の通りだ・

【第3部の見どころ】


1.路上

戦後アメリカ文化のダイナミズムは「路上」にあったのではないだろうか?ロバート・フランクアメリカ人』、ウィリアム・クライン『ニューヨーク』のストリート写真は過去のドキュメンタリー写真の既成概念をくつがえし、現代写真のルーツとなった。現実とイメージの関係を問い直したリー・フリードランダー、路上での出会いの可能性をシークエンス写真で表現したドゥェイン・マイケルズ、ストリートで行きずりの通行人たちを動的に捉えたゲリー・ウィノグランドなど、「路上」が活気を放っていた50年代半ばから80年代までのアメリカを映し出す。


2.砂漠
西部の広大な砂漠に写真家たちは何を求め、何を見いだしたのか?砂漠の風景もまた、アメリカを象徴するヴィジョンとして写真家を魅了した。ヘンリー・ウェッセルは砂漠に人工物が点在する風景や、文明と自然の境界線に目を向けた。リチャード・ミズラックは砂漠が人間によって造り変えられ変容していく様を記録した。砂漠の原初的風景にヌードモデルという現代的な身体の美を配した篠山紀信、地球的規模で自然の畏怖を捉えた白川義員、神話的な時空間を表現した奈良原一高など、西部の砂漠が見せてくれる惑星的なスケールの景観は、日本人写真家の想像力をも大いに刺激した。


3.戦場
激動の60年代。戦場はヴェトナムにあり、アメリカ国内でも平和や自由、平等を求めるあらゆる場所が「戦場」だった。ヴェトナム戦争(1959年−1975年)ではグラフ誌『ライフ』の記者ラリー・バロウズをはじめ日本人写真家・石川文洋、岡村昭彦らが活躍した。前衛芸術家オノ・ヨーコ反戦運動を展開し、ウィリアム・ユージン・スミスは『抵抗の60年代』で反戦・反人種差別デモや伝説のロック・フェスティバル「ウッドストック」に集った若者たちを共感的な視線を向けた。


4.家
1963年、ジョン・フィッツジェラルドケネディ大統領が、テキサス州ダラスで暗殺された。アメリカン・ドリームを信じることのできる時代は終わりを告げ、アメリカのアイデンティティは分裂していった。写真家にも、人間の絆を確かめ、関係性を模索するように「家族」や「私生活」、「日常」「地域性」といったテーマが浮上してくる。ダイアン・アーバスは、人間のネガティブな面を「真実」として写し出し、その強烈なヴィジョンは、アメリカの内面の狂気と他者との相互理解の不可能性を気づかせた。ウィリアム・エグルストンは、南部のローカルな風景や日常のディテールを題材とし、「家」や「郊外」という表象は、そこに住む人間のアイデンティティや文明の対比を喚起させた。サリー・マンは子どもたちとの日常生活を題材に、実生活と虚構が混ざりあい、透明感のある独自の映像世界を生み出した。ナン・ゴールディンは、自身の実生活を取り巻く流動的な人間関係をテーマとし、愛と性の問題や友人たちとの関係を正面から描き出して20世紀末アメリカ写真の寵児となった。


5.メディア
アメリカのテクノロジーがもたらすメディアの先進性は世界を変えてきた。そして映画やテレビが描くアメリカの夢と虚構は世界を魅了してきた。「メディア」という舞台で演じられ、生み出される数々のイメージがアメリカのヴィジョンとなって、20世紀から現代に大きな影響を与えてきたのである。人類史上初のアポロ月面着陸を記録したNASAの公式記録写真、アメリカの光と影を鮮やかに描き出したアンディ・ウォーホル、人間存在の闇を描き出すジョエル・ピーター・ウィトキン、80年代アメリカ文化を象徴するロバート・メイプルソープシンディ・シャーマンら、現実と虚構が織りなす20世紀アメリカの夢と記憶をたどる。


この展覧会では、アーノルド・ニューマンが撮影したホワイトハウスの前で微笑むジョン・F・ケネディ第35代アメリカ合衆国大統領ケネディ大統領)や、ブルース・デヴィッドソンによるマーティン・ルーサー・キング・ジュニアキング牧師)の姿も展示されています。公民権運動の頂点である「ワシントン大行進」を捉えたこの作品は、キング牧師がパレードの中心となり全米から集まった25万人もの人々とともに力強く行進する姿がみられます。奇しくもバラック・オバマ氏が第44代アメリカ合衆国大統領に選ばれ、アメリカが変革を選んだ今、アメリカの歴史を写真で振り返り、アメリカがどこへ向かっていこうとしているのかを考えるきかっけとなることでしょう。


東部の摩天楼(ニューヨーク)、西部の砂漠、都市と都市を結ぶ道路、そして人々の住む郊外など、各地の様々な断片を通して見えてくるアメリカ、ベトナム戦争公民権運動など「戦い」と対峙するアメリカ、そして1970〜80年代のポップカルチャー。 いわゆる「アメリカ」の文化をそれぞれのテーマ(切り口)から観ることができ、いろいろと考えるいい機会になった。


しかし、アメリカの写真を扱っているのだが、アメリカ合衆国出身の写真だけではなく、外国からこの国にやってきてフィルター越しに景色を切り取った人がたくさんいた、というのもアメリカ(合衆国)の多様性を体現しているようで興味深かった。


企画力  :★★★☆☆
展示方法 :★★★☆☆
作品充実度:★★★★☆
満足度  :★★★★☆



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