ミス・サイゴン

caltec2008-10-18



帝国劇場にて「ミスサイゴン」を観る。前回の上演から4年振りの再演となるのだが、今回の再演では初の観劇。しかもマチソワ(マチネ:昼公演とソワレ:夜公演を、同日に見ること)しての観劇。今回はマチネの感想を。


気になるプリンシパル


 【エンジニア】 筧利夫
   4年前と比べ、小芝居が減って、彼なりにエンジニアと正面から向かい合って
   役を演じている印象を受けました。
   小柄である点と、歌唱力(音程が安定しない)というハンデはありますが、
   「アメリカンドリーム」で見せるダンスのキレとか、アドリブとか、「光る」ものを持っているのも事実。
   特に「アメリカンドリーム」はエンジニアの哀愁が伝わってきて、良かったです。
   

 【キム】 ソニン
   「スゥィニー・トッド」「ペテン師と詐欺師」の活躍で結構期待していたソニンですが、
   全編歌のキム役は彼女には荷が重すぎたようで、歌は全体的にイマイチでした。
   特に歌や音域によって声色が変わる点と、微妙にピッチ(音程)が低めな点が、気になりました。
   ただ、田舎から出てきたばかりの状態でオドオドしながらダンスを踊ったり、
   力強い母親としてタムを守ったりするという、「演技」の面では良かったな、と思います。
   今までみた「命をあげよう」の中では、彼女の歌に一番グッときたのですが、
   それは歌唱力というより、歌に込めた「想いの強さ」の違いなのかな、と思ったりもしました。
    

 【クリス】 藤岡正明
   登場のシーンで「あれ?太った?」、「中川家の弟に似てない?」と感じてしまいました。
   (ファンの方には申し訳ないが。。)
   声の良さ、歌の上手さ、声量、そして「歌を通じて演技できる」という点が良かったです。
   「朴訥で不器用だけど、正直で誠実な」男。彼の演技から伝わってくるのはこんなクリス像です。
   惜しいなあ。あとは見た目だけなんだよなあ。。 


 【ジョン】 坂元健児
   サカケンには元々演技力は期待していないのですが、今回のジョンは良かったです。
   今回の舞台で彼が作り出していたジョン像は、
   までの「上滑りで能天気ないい人キャラ」ではなく、少し渋みが増した思慮深い人物。
   一本調子の台詞回しも気になりませんでした(それは全編歌だから?)。
   スコーンと抜ける歌声は健在で、聴いていて気持ちよかったのですが、
   音程ではなく、特定の「言葉」の発音の汚さが気になりました。(例えば「で」という言葉とか)
   あと、ブイドイ、もう少しゆっくりと落ち着いて舞台を動いた方がいい気がします。
   チョコチョコと舞台の端から端まで移動していたのですが、
   あれだと「熱い男」ではなく、「落ち着きのない男」に見えてしまいます。
   上記2点以外は、とても良かった坂元ジョン。今後に期待です!
  

 【エレン】 浅野実奈子
   アンサンブルからの昇格組ですよね?
   歌の安定感・演技力・エレンの雰囲気作りも良かったと思います。
   敢えて言うと、押し出しの強さというか、Only One的な特徴の出し方が
   他の人と比べるとまだ弱い気はしました。


 【トゥイ】 泉見洋平
   彼のトゥイを観てから、他の人のトゥイが観られなくなってしまった、マイベストな泉見トゥイ。
   今回は、熱く一途にキムを思うだけのトゥイから、もう少し全体を見回す余裕のある、
   男として一回り大きなトゥイ像を形成していた印象を受けました。
   それは革命後の委員長になってからの演技に表れているのですが、
   単に彼が年齢を重ねた、ということなのかな? 演技力の上達なのかな?
   いずれにせよ、前よりもさらに良くなった泉見トゥイでした。


 【ジジ】 桑原麻希
   桑原ジジ、良かったです。
   正直言って、ジジの聞かせどころは1曲しかないので、今までジジ=プリンシパル?と
   思っていたのですが、やはりジジはプリンシパルだと今回の観劇で思いました。


 【アンサンブル】
   大柄でパワフルで力強い男性チームとこれまた押し出しの強い、力強い女性チーム。
   アンサンブルがたくさん集まるシーンでは、かなり濃厚な舞台づくりが出来ていたように思います。



音 楽 : ★★★★☆
脚 本 : ★★★☆☆
演 出 : ★★★☆☆
役 者 : ★★☆☆☆
舞台/衣装: ★★★☆☆
満足度 : ★★☆☆☆