ロン・ミュエック展

caltec2008-08-23



金沢21世紀美術館にて「ロン・ミュエック」展を見る。


日本で発売されている様々なアート雑誌、そして男性・女性情報誌にも、本展覧会の紹介記事が載っていることが多かった。それだけ注目されている展覧会であるならば。。。という想いで、東京から金沢に飛び、本展覧会を見た。(実は、SANAAの建築を見るために、金沢21世紀美術館にずっと来たい気持はあったのだが、なかなか来るキッカケが掴めずにいたのだ。)


美術館のHPによる本展覧会の概要は以下の通り。

本展は、現在最も注目される作家、ロン・ミュエック(1958-)の作品を総合的に紹介する日本で初めての個展です。 映画やテレビ番組用の模型作りの経歴をもつミュエックは、シリコンやファイバーグラスといった素材を駆使し、古典的な彫塑の手法を用いて、人間の身体を精緻な彫刻によって表現しています。 長く綿密なプロセスを要する制作の中で、ミュエックは、素材やモチーフとの対話に全身全霊を捧げ、作品を完成させます。 髪や皮膚の下の血管まで克明に描出する極限のリアリズムと、巨大であったり極小であったりするサイズの非現実性が交錯する作品世界は、現代社会における人間の存在性についての批評ともとらえられます。 身体と精神、日常と非日常を横断するミュエックの作品世界は、「創造」と「人間の存在性」の関係という芸術における根源的な問題を我々に鮮烈に突きつけてくるでしょう。


さて、とある展示室に入ると、その展示作品に以前どこかで出会った様な記憶が。。。 「イン・ベッド」という作品で、東京都現代美術館で開催されれていたカルティエ財団の展覧会に出展されていた作品だった。

当時は、その縮尺が現実の人間よりも格段に大きい点のみに注目しがちであったが、彼の作品を8点、一度にまとめてみることで、質感も含め、限りなく本物に近いその姿にまずは圧倒された。関節付近や皺などによる肌の弛み、それとは逆に緊張し、ピンと張り詰めた筋肉、産毛の一本一本、はては唇から覗く歯まで。。。 尺度が実寸の人間と同じだったら、本物と思ってしまうほどリアルな人形が目の前に居るのだ。


美術館の人気のおかげもあるだろうが、ロン・ミュエックの作品を鑑賞している多くの人が「好意的な笑い(微笑み)」をこの作品に向けているのが印象に残った。よくもまあ現実そっくりに、でも尺度を大きく(あるいは小さく)作ったもんだ、という、そうした感情から来る笑い(微笑み)だと思う。


逆に2割くらいの人は、あまりのリアルさ故に「気持悪い」としかめ面をしていたようにも思えた。


現在彼の作品はトータルで35点しかないそうである。そのうちの1/5を一度に見られるのだから、時間がある人は観ておいた方がお勧めである。雑誌やテレビや写真集で観るよりも、是非実物をしっかりと見て欲しい、そんな彫刻であるからだ。不思議なことに、実際に自分の目で実物を見たほうが、より一層リアル感が増します。


企画力  :★★★☆☆
展示方法 :★★★☆☆
作品充実度:★★★★☆
満足度  :★★★★☆


@ 金沢