サイトウ・マコト展 SCENE[0]

caltec2008-08-24



金沢21世紀美術館にて「サイトウ・マコト展 SCENE[0]展を見る。


正直に言うと、金沢には「ロン・ミュエック」展を見るために来たのであって、本展覧会を見るためではなかったのだが、遠路遥々金沢くんだりまで来たのだから、同時期に開催されている企画展も見ておこうと、「ついで」に見たのが本展である。


が、ところがどっこい、かなりイイ作品が多く、個人的に大満足して帰ってきた、そんな展覧会だ。


美術館のHPによる本展覧会の概要は下記のとおりだ。

グラフィック・デザインの領域で国際的に知られるサイトウ・マコトによる国内初の大規模な個展。1980〜90年代、斬新な表現によってグラフィック・デザインの常識を破り、時代を塗り替えてきたサイトウ・マコトが、本個展において長年あたためてきた絵画作品を約50点初公開します。


サイトウが21世紀の世界に向けて発信する注目の新作展です。


サイトウのこれまでの幅広い創作活動は、「見る」という行為への無限の問いかけのなかで形作られてきました。デザインの領域で活躍する一方で、1990年代半ばからは本格的に絵画の研究も始めています。今回サイトウは、幼少のころから親しみ、自身にとって特別な意味をもつ映画から一瞬のショットを切り取り、デジタルという現代のフィルターを通して大胆に解体するなど、これまで一貫して培ってきた現代への鋭い視点を反映した絵画作品を発表します。本展は、このように「見る」行為を「描く」という行為へと拡げた、サイトウの現在を展観するものです。


作品のなかの人物像は、いずれも体温を感じさせない冷ややかな空気に包まれています。温かさやナチュラルさといった癒しを安易に求める昨今の風潮に挑むかのように、温度のないゼロ地点-SCENE [0]-からうごめきだす不穏な世界。独自のモチーフとテクスチャーにより創出されるサイトウの絵画空間は、時代の新しい感触をとらえ、現代に生きる私たち自身の姿を容赦なく映し出します。


グラフィック・デザインの分野、とくに商業広告の写真を中心としたビジュアルデザインの世界で数々の輝かしい実績を残してきた作者の、絵画作品、、ということで、「どんな作品だろうか?」と思い会場に足を踏み入れたとたん、そこには歪み、変容し、そして溶解する人間のポートレイトがたくさん展示されていた。


実を言うと、始めのうちは「気持悪いな」としか思えなかったのだが、だんだんと「人間を直接描くのではなく、このような表現手段をとることによって逆に人間の感情や気持ちをよりわかりやすく表現しているのかもしれない」などと勝手に自問自答し始めたりしてしまった。一見複雑で判りづらいと思いがちな現代アートだが、要は自分がその作品(そのアーティストの作風を)「好き」か「嫌いか(好きじゃない)」によると思う。 そういう意味で言えば、サイトウ・マコトの作品は、何故だか理由は上手く説明できないが、感覚的にすごく「好き」なのである。


ウィーンでエゴン・シーレの大回顧展を見て、「何故か」エゴン・シーレが好きになってしまった、そのときの感覚と似ている。そして、この感覚は実際に作品と対峙して、その作品の持つパワーや作品が語りかけてくるメッセージと自分との対話の結果による「好き」という感覚なのである。


もちろん全ての作品を部屋に飾ろうなどとは思ってはいないが、「祈り」「果物」「絵日記」「包容」「その男」などのシンプルでブルー系がメインの作品などは、購入したい、などと思ってしまうほどのお気に入りとなった。もしかすると後日見ると「気持悪い」と思ってしまうかもしれないが、今日の気分としては、とても「面白い」作品だなと感じた。


企画力  :★★★☆☆
展示方法 :★★★☆☆
作品充実度:★★★★☆
満足度  :★★★★☆


@ 金沢