開館1周年記念展「ガレとジャポニスム」

caltec2008-04-19



サントリー美術館にて、開館1周年記念展「ガレとジャポニスム」を見る。


サントリー美術館といえば、「ガレ作品」を多く収蔵している美術館として、caltecの中では認識されている(赤坂にあった旧サントリー美術館では、ガレの作品を結構目にしたので)。そのサントリー美術館でガレに関する展覧会が開催される、ということで、新たなガレへの理解が深まるかどうか、期待に胸を膨らませつつ、東京ミッドタウンにあるサントリー美術館に向かった。


サントリー美術館のHPによると、本展覧会は下記のように紹介されている。

19世紀後半、海を越えヨーロッパに渡った日本の美術品は、ジャポニスムと呼ばれるブームを巻き起こしました。日本の美は、その土地の美術や文化に取り入れられ、絵画、彫刻、陶磁器、ガラス、そして建築など、多様なジャンルに影響を及ぼしました。フランス・アール・ヌーヴォー期を代表する芸術家エミール・ガレ(1846-1904)は、そんな時代に、ナンシーでガラスと陶器の創作活動を開始したのです。ガレが手がけたガラス、陶器、そして家具には、さまざまな形で日本美術との結びつきが見受けられます。多くの芸術家たちがそうだったように、彼もまた、当初は表面的なモチーフの転用から出発しました。しかし、ガレに与えた影響は、日本の美意識への理解が深まるとともに次第に深化しつつ、彼独自の芸術性を確立する上で、重要な一端を担うことになったのです。その姿は、当時の批評家をして「ナンシーで日本人として生まれた運命のいたずらを、祝福してあげようではないか。」と言わしめるほどでした。
本展では、ガレにみられるジャポニスムの変遷を、国内外のガレ作品他、約140件の作品で紹介する試みです。また、30年余にわたるガレの名品を見ることによって、ものの真髄を赤裸々なまでに表現する、ガレ芸術の醍醐味を味わっていただければ幸いです


この展覧会の特徴は、ジャポニズムの影響をダイレクトに受けているガレの初期作品への考察(第一部「コラージュされた日本美術−ジャポニズム全盛の時代」、第二部「身を潜めた日本美術ー西洋的な表現との融合、触れて愛でる感覚」)にある。


後半(第三部「浸透した日本の心−自然への視線、もののあはれ」・第四部「ガレと「蜻蛉」」)の展示作品は、私たちが良く知っている、花や動物の意匠とガラス陶芸とが見事に融合された、所謂「ガレ」的な作品なのだが、その彼の作風の確立に一役買ったのが「ジャポニズム」。今まで数多くのガレ作品を見てきたが、その「ジャポニズム」の影響を多分に受けた初期の作品を目にするのは初めてだった。


ガレの作品だけではなく、彼が当時目にしたであろう日本の陶器や、ジャポニズムの影響を受けた他の芸術家の作品も展示され、「こうした作品を目にし、影響を受けた結果、展示されている初期のガレの作品がある」というアプローチは、なかなか興味深く鑑賞できるものだった。


ただ、美術館の展示会場のキャパシティーの問題、および、ゆったりと配置した展示ブースの影響もあるのだろうが、他の美術館と比べると、展示数が少ない印象を受け、その分、ボリューム感が足りない印象を受けた。あとは、ガレの晩年の、ガレらしい作品をもっと見られると良かったなあ、というのが正直な感想だ。


とはいえ、新たなガレの作品(初期作品)を多く見られるということで、お勧めの展覧会である。


企画力  :★★★★☆
展示方法 :★★★☆☆
作品充実度:★★★☆☆
満足度  :★★★☆☆


時々