アムステルダム国立美術館所蔵 フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展

caltec2007-10-14



アムステルダム国立美術館が改修工事のために、幸運にも日本でフェルメールの「牛乳を注ぐ女」を見ることができた、本展覧会の特徴を一言でいうと、こうなるだろうか。正直言うと、目玉となる作品はフェルメールの「牛乳を注ぐ女」くらいしかないと思う。(アムステルダム国立美術館に行ったものとしては、こう言わざるを得ない)


ただ、本展覧会の面白いところは、フェルメールの「牛乳を注ぐ女」を展覧会のメインテーマとしつつ、オランダ風俗画の観賞の仕方を、ガイドしてくれる点にあると思う。なので会場に行く前に新国立美術館のHPを観ること、会場に行った際には入り口で売っている図録もしくは、イヤホンガイドを購入することをお勧めします。


市民階級が台頭していた当時のネーデルランドでは、絵画の担い手は教会や貴族ではなく市民であった、というのは良く知られている事実だが、本展では、ネーデルランドでは男女の社会的役割が分かれており、道徳的・理想的な男女のありようというのが絵画や版画作品を通じて理解できる「解説」となっている。
また、風俗画については、その暗喩する意味を詳しく解説しており、知らなければ見過ごしてしまう、風俗画の持ついろいろな意味を理解しながら作品観賞を行うことができる点は評価に値すると思う。


ただ羅列したのでは、味気ない展示になってしまう作品を、当時の社会概念を用いカテゴライズすることで、ひとつひとつの芸術作品を観賞するだけではなく、当時のネーデルランドの社会・道徳観・暮らしぶりを同時に理解していく構成に仕上げている点がとても印象に残った好企画展だと思う。


企画力  :★★★☆☆
展示方法 :★★★★☆
作品充実度:★★☆☆☆
満足度  :★★★☆☆



ちなみに、世界にあるフェルメール作品、どれくらい観たのか、ちと集計。
(ヨーロッパとアメリカにしかないんですね)


<ヨーロッパ>
★「牛乳を注ぐ女」@アムステルダム 国立美術館(2002年、2007年:東京)
★「手紙を読む青衣の女」@アムステルダム 国立美術館(2002年)
★「恋文」@アムステルダム 国立美術館(2000年:東京、2002年)
★「小路」@アムステルダム 国立美術館(2002年)
★「真珠の耳飾りの少女」@ハーグ マウリッツホイス美術館(2000年:大阪、2002年)
★「ディアナとニンフたち」@ハーグ マウリッツホイス美術館(2002年)
★「デルフトの眺望」@ハーグ マウリッツホイス美術館(2002年)
★「紳士とワインを飲む女」(「ぶどう酒のグラス」)@ベルリン 国立絵画館(2006年)
★「真珠の首飾りの女」@ベルリン 国立絵画館(2006年)
★「取り持ち女」(「遣り手婆」)@ドレスデン 国立絵画館(2001年)
★「窓辺で手紙を読む女」@ドレスデン 国立絵画館(2001年、2005年:東京)
★「地理学者」@フランクフルト シュテーデル美術研究所(2000年:大阪)
★「絵画芸術」(「画家のアトリエ」)@ウィーン 美術史美術館(2003年、2004年:東京)
★「レースを編む女」@パリ ルーブル美術館(1999年)
★「天文学者」@パリ ルーブル美術館(1999年)
★「ブァージナルの前に座る女」@ロンドン ナショナル・ギャラリー(2007年)
★「ブァージナルの前に立つ女」@ロンドン ナショナル・ギャラリー(2007年)
「ギターを弾く女」@ロンドン ケンウッド・ハウス (イングリッシュ・ヘリテッジ)
「音楽のレッスン」@ロンドン英国王室コレクション(バッキンガム宮殿・ウィンザー城)
「マルタとマリアの家のキリスト」@エディンバラ 国立スコットランド美術館
「手紙を書く婦人と召使い」@ダブリン アイルランド国立美術館
「二人の紳士と女」(「ワイングラスを持つ娘」)@ブラウンシュバイク ヘルツォーグ・アルトン・ウルリッヒ美術館


アメリカ>
★「手紙を書く婦人」@ワシントン ナショナル・ギャラリー(1994年、1999年:東京)
★「天秤を持つ婦人」@ワシントン ナショナル・ギャラリー(1994年、2000年:大阪)
★「赤い帽子の娘」@ワシントン ナショナル・ギャラリー(1994年)
★「フルートを持つ娘」@ワシントン ナショナル・ギャラリー(1994年)
★「水差しを持つ女」@ニューヨーク メトロポリタン美術館(1994年)
★「少女」(「娘の頭部」)@ニューヨーク メトロポリタン美術館(1994年)
★「眠る女」@ニューヨーク メトロポリタン美術館(1994年)
★「窓辺でリュートを弾く女」@ニューヨーク メトロポリタン美術館(1994年、2000年:大阪)
★「信仰の寓意」@ニューヨーク メトロポリタン美術館(1994年)
★「兵士と笑う娘」@ニューヨーク フリック・コレクション(1994年)
★「稽古の中断」(「中断されたレッスン」)@ニューヨーク フリック・コレクション(1994年)
★「婦人と召使い」@ニューヨーク フリック・コレクション(1994年)
★「聖女プラクセデス」@プリンストン バーバラ・ピアセッカ・ジョンソン・コレクション基金(2000年:大阪)
「合奏」@ボストン イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館(現在盗難に遭い行方知れず…)


★:既に観賞(観た年)←30作品(あと5作品を見れば。。。)