ムンク展

caltec2007-10-13



ムンク展@国立西洋美術館へ行く。今までムンクというと「叫び」のような少し奇抜な作品か、とても端正で正統的な作品のどちらしか見たことがなかったのだが、今回のムンク展は、ムンクの「装飾作品」にスポットをあてるというユニークなテーマ設定になっており、今まで知らなかった新たなムンクの姿を知る良い機会となった。

本展は、ムンクが試みた装飾プロジェクトにそれぞれ1章をあてて構成され、彼の「装飾画家」としての軌跡をたどれるものとなっています。第1章では〈生命のフリーズ〉における装飾性の展開を扱い、それに続く各章では、アクセル・ハイベルク邸やマックス・リンデ邸といった個人住宅の装飾や、ベルリン小劇場、オスロ大学講堂、フレイア・チョコレート工場、オスロ市庁舎の壁画構想といった公的建築でのプロジェクトを紹介します。


(「ムンク展」のホームページより


会場に入ると、全体は7つの章で構成されていた。

  第1章: 生命のフリーズ 装飾への道
  第2章: 人魚 アクセル・ハイベルク邸の装飾
  第3章: リンデ・フリーズ マックス・リンデ邸の装飾
  第4章: ラインハルト・フリーズ ベルリン小劇場の装飾
  第5章: オーラ オスロ大学講堂の壁画
  第6章: フレイア・フリーズ フレイア・チョコレート工場の装飾
  第7章: 労働者・フリーズ オスロ市庁舎のための壁画プロジェクト


この中で第一章「生命のフリーズ」については、他のフリーズとは特色が違ってる。代表的なムンク作品はこの「生命のフリーズ」の一作品と捉えられるためだ。

<生命のフリーズ〉は、全体として生命のありさまを示すような一連の装飾的な絵画として考えられたものである。 ─エドヴァルド・ムンク「生命のフリーズ」より


ノルウェーの画家エドヴァルド・ムンクは、日本でもすでに数多くの展覧会が開かれ、愛と死、喜びと絶望といった「人間の魂の叫び」とも呼べるテーマを描いた作品が、非常に高い人気をえています。彼は、自らが描いた作品のなかでも、最も中心的な諸作品に〈生命のフリーズ〉という名をつけました。それは、個々の作品をひとつずつ独立した作品として鑑賞するのではなく、全体としてひとつの作品として見る必要があると考えたからでした。


つまり、ムンクが生涯を通じて表現しようとしたテーマは全てこの「生命のフリーズ」に属しているとも言え、作品を並べて観賞することによって、浮かび上がってくる一つのテーマがある、というものだ。


第2章からは、装飾画家としてのムンクの作品が展示されており、それぞれの装飾プロジェクトにおける彼の作品が見られる構成となっている。


本展覧会を観て感じたのは、ムンクは思想の画家である、という点だ。目の前の景色や人物を写実的に描く力量がありながら、ムンクは自ら考えるあるテーマや想いを伝えるために表現を変えていく。そして一つ一つの作品として観賞するのではなく、フリーズとして一連の絵画の集合体として表現するということは、目を通して見える絵画が重要なのではなく、その絵画の背後にある共通したテーマや想いが実は重要なのだ、という画家の主張であるように思えたからだ。


企画力  :★★★★☆
展示方法 :★★★★☆
作品充実度:★★☆☆☆
満足度  :★★★☆☆