月組：ベルサイユのバラ〜オスカル編〜
ベルバラレポート、最後を飾るのは、月組公演。「ベルバラ〜オスカル編〜」です。
ベルサイユのバラと言えば、個人的には、テレビ放映のときの「♪草むらに〜ぃ、名も知れず〜（中略）バラはバラは美しく咲いて〜ぇ♪」というあの主題歌が強烈に印象に残っているのですが、世間一般で言えば、やはりオスカルなんでしょうね。
月組公演はこのベルバラの主役、オスカルに焦点を当てた舞台なのですが、他の３公演とは違い、主要キャストのフェルゼンとマリーアントワネットが登場しません。つまり、オスカルとアンドレを軸に物語が展開していくわけです。
しかし、男役３人＋娘役トップ１人が活躍するのが宝塚の舞台、ということで、この月組バージョンでは衛兵隊の荒くれ男アランとその妹ディアンヌが、物語の主軸をなす登場人物として大きく扱われています。
主要キャストは以下のとおり
オスカル：涼風真世
アンドレ：天海祐希
アラン ：久世星佳
ディアンヌ：麻乃佳世
アンドレ役は天海祐希（月組）杜けあき（雪組）日向薫（星組）大浦みずき（花組）のクワドラップキャストで月組の２番手天海以外は皆、他組のトップ。それだけに、この月組のオスカルバージョンにかける宝塚の期待というのが、ひしひしと伝わってきます。テレビでは、月組の天海が出演する回を録画したものでした。
オスカル役の涼風真世ですが、「男装の麗人オスカルを演じるにはこの人しかいない」という感じで、ぴたりと役にはまってました。宝塚の男役自体が、実はオスカルと同じ男装の麗人なのですが、涼風は歴代トップの中でも、希に見る女らしい（つまり男っぽくない）男役トップだと思うのですよ。男役を演じても、どことなく中性的な雰囲気が醸し出されてしまうという。。
そういう彼女が演じるオスカルというのは見ていてある種の清々しさすら感じられて、全然イヤミじゃない、そんな印象を受けました。歌・芝居・ダンスの力量もあり、華も（妙な）貫禄もあって、彼女の場合は、宝塚という場所でなかったとしても、舞台の上ではどこでも輝ける人なんだろうな、という感想を持ちながらテレビ放映を見てました。（たまに、宝塚だから人気が出たんだろうなあ、と思うような男役がいるもので）
普通のミュージカルや芝居に親しんでいる私から見ても、彼女からは、宝塚舞台を見るときの違和感を感じず、逆に一種の清涼感すら感じました。これは凄いことです（笑）。演じることがすごく好きなんだな、楽しんで演技してるんだな、というのが伝わってくるような気がします。
アンドレ役の天海は、逆にまさに宝塚のために生れてきたような人。舞台に立つだけで、正統派の二枚目男役トップの雰囲気が十分で、最年少でのトップ就任にも納得。経験年数が浅いので、芝居に対する深みというのがあまりないのですが、きちんとした台詞回しをし、感情表現もしっかりできて、なおかつコミカルな味も出せて、歌もきちんと歌える、という、その演技。落第点がひとつもない優等生的な印象を受けました。円熟味がない分、逆に彼女のフレッシュさ、伸びやかさが目立ち、これが彼女の魅力のひとつとなっていることは事実です。その上パーフェクトな演技を望むのはある種の無い物ねだりなんでしょうけど。(^_^;)彼女が舞台に登場するだけで、その場が華やかになる、それを実感した舞台でした。
アラン役の久世星佳は男役３番手。演技も歌もしっかりしているのだが、いかんせん華がない。涼風、天海の２人と並ぶとその差は歴然。悲しいかな本人の持つ資質の差。
ディアンヌ役の麻乃佳世は、可憐な女性という印象。アンドレ編、フェルゼン編と比べ、今回のオスカル編ではアントワネットが出ない分、娘役トップの活躍の場が少ないので、彼女の真の実力はわからずじまい。。。
しかし、一昨年の「カンパニー」など、宝塚退団後の彼女が出演しているミュージカルの舞台を見ているので、どんな人かは、わかりますが。。。私の中の麻乃佳世とディアンヌ役を演じるタカラジェンヌとしての麻乃佳世は、全然似ても似つかぬものでした。。。
アンドレとオスカルの関係性、
近衛隊から衛兵隊へと転身したオスカルの葛藤、
オスカルを想うアンドレの葛藤、
当時のフランス貴族と平民の違い、など。
このオスカル編において、主要キャストを減らし、物語の焦点をオスカルに集めたことにより、全体的に筋道の通ったストーリーになり、一つ一つのエピソードにも深みが加わり、舞台の完成度（観劇後の充実感）は４公演の中で一番だったように思えます。
「ベルサイユのバラ」という作品のもつ世界を一番体言できていた、とも言えるでしょう。
主役の涼風真世の好演と脚本の妙に支えられた舞台が、月組版ベルバラなのかもしれません。
音 楽 ： ★★★☆☆
脚 本 ： ★★★☆☆
演 出 ： ★★★☆☆
役 者 ： ★★★☆☆
舞台/衣装：★★★☆☆
満足度 ： ★★★☆☆
