エリザベート


エリザベート』(帝国劇場)を観てきました。


ウィーン発のミュージカル。日本では宝塚で初上演。そのときに主役トートを演じた一路真輝東宝ミュージカルで主役のエリザベートを演じる。
#宝塚は男役社会なため、宝塚版『エリザベート』は主役がエリザベートからトートに変更されている。


この話題だけで、ミュージカルファンの間では「見る価値のある」舞台と称され、昨年の舞台はチケットを取るのも大変な盛況振り。概ね批評家にも好評で「今年一番のミュージカル」と言われてました。


かく言う私も、その前評判につられて、昨年も観たのですが、まわりの熱気に押され、かつ舞台から遠い客席ということもあって、イマイチその真価が分からずじまい。。。翌年のリベンジを誓ったものです。


そのおかげか、今年は結構いい席を取ることができ、ナンバーも事前学習して、準備万端、観劇に臨みました。(笑)


トート役のみダブルキャストで、そのキャストはミュージカル界のプリンスとなりつつある(とはいえ40を過ぎている)山口祐一郎とミュージカル初出演の内野聖陽

当然とはいえ、山口トートの公演の方が人気が高く、発売当日で完売状態でした。


僕は去年山口トート版を観ており、今年は内野版トートを観ることに決めていたので、比較的良い席を確保できました。


さて、舞台の方ですが、アンサンブルをも含めてキャストが去年とほぼ同じということもあってか、今年の方が作品としての完成度が高く、何よりキャスティングの妙が光った作品でした。


まずは、ミュージカル初出演のトート役の内野君について。
昨年の山口トートを観ていただけに、「大丈夫か?」と思っていたのですが、なかなかどうして、堂々とした立派なトートでした。


舞台役者なので、声が通るし、喉も鍛えられているのでしょう、山口トートより大きく、朗々と渡るしっかりとした声で、闇の帝王トートらしさを十分表現してました。ただ、高低が激しく行き来するナンバーはさすがにきついのか、少し音程に難がありましたが、トートの持つ強さなど、しなやかな身のこなしで表現してました。


山口トートが蔭で優しくエリザベートを静かに見守っている大人のトートだとしたら、内野トートは蔭でエリザベートを激しい想いで見るしかない、切ないトートという感じでしょうか?


とにかく、レミゼの安達コゼットの二の舞にならずに「ほっ」です。ただ、彼のしぐさ(目線とか、身のこなし)がどことなく宝塚の男役チックなのには、少し笑えました。
#演出家(小池修一郎)が宝塚の人なので、ミュージカル初出演の彼のこと、小池さんの指導を素直に実践したことが伺えて、彼の性格がでているなあ、と少し微笑ましく思えたのでした。


エリザベート』があたり役となっている一路は、昨年よりもより自然にエリザベートを演じている印象。


彼女は感情表現を歌の中で表現出来る人ですけど、今年はその表現に無理がないような気がしました。昨年は場面ごとに役を「作っている」という印象を受けるナンバーもあったのですが、今年はエリザベートになりきり、その心情を唄っているように思えました。役への距離を一歩縮めたように思えます。


阿知波悟美初風諄、井上芳夫、伊東弘美、シルビア・グラブなど、そうそうたる歌唱力の持ち主が、役柄ピッタリに演じる点もこのミュージカルを成功に導いている秘訣の一つでしょう。


アンサンブルを演じる出演者もレベルが高く、全員で唄う「♪ミルク」など、素晴らしいの一言に尽きます。


エリザベートの夫、フランツ・ヨーゼフを演じた鈴木綜馬は、優しい声質を活かした端正できれいで歌声で役を好演。劇団四季時代からいくつかの舞台を見てきましたが、今回のヨーゼフはハマリ役であると思います。


そして、今回の舞台の成功の鍵を握るのが、ルキーニ役の高嶋政宏狂言回し的な位置づけで、場面場面をつなぐ重要な役割を担い、また、いろいろなキャラクターに扮して舞台に登場もします。おそらく登場時間や台詞、唄うナンバーなど、エリザベートに匹敵するのでは?コミカルさ、狡猾さ、怖さ、威厳さ、等など、人間の持つあらゆる感情表現を台詞や歌で表現できないと務まらない役なので、彼の出来如何に、この舞台の成功がかかってくるのですが。。。とても上手かったです。


昨年は芝居は上手だけど、歌がもう少し良かったら、、、と思ったのですが、今年は歌もとても良かったです。
#ひょっとしたら、去年はトート役の山口祐一郎と比較し、今年は内野聖陽と比べていたからかもしれませんが。。。


場面構成も若干変更されており、結果として、全体的にストーリーの流れが昨年よりスムーズになっていたような印象を受けました。


トートダンサーの踊りなども含めて、近年のミュージカルの中では、スケール・完成度ともに高い作品だと思います。ミュージカルファンなら、一度は観るべし?


しかし、宝塚版って、どんな感じなんだろう?(宝塚は抵抗があって、まだ一度も見ていない)



音 楽 : ★★★☆☆
脚 本 : ★★★☆☆
演 出 : ★★★☆☆
役 者 : ★★★☆☆
舞台/衣装:★★★★☆
満足度 : ★★★☆☆