ジーザス・クライス・スーパースター


ジーザス・クライス・スーパースター』(劇団四季)を観てきました。


『キャッツ』『オペラ座の怪人』などの作曲家として有名なアンドリュー・ロイドウェーバーの初期の代表作かつ、彼の出世作ともなったこの『ジーザス・クライス・スーパースター』(以下、JCSと記載)。


『ヘアー』や『フーズ・フー・トミー』などと共にロック、サイケ、ゴスペルなど、70年代の音楽的エッセンスのつまった、「ロックオペラ」的なミュージカル作品です。映画化もされているので、ビデオなどでその作品を見た人も多いと思います。


さて、劇団四季版の「JCS」ですが。。。
何と言ったらいいのか。。。このミュージカルを観ている最中「?」という記号が僕の頭の中で絶えず浮かんでいました。


というのも、全然オリジナルの「JCS」ではないのですよ。完全に劇団四季流にアレンジされた「JCS」。


「JCS」の特徴である、ロック、ゴスペル、ヘヴィメタテイストを完全に抜いて、劇団四季の特徴である、甘く、こじんまりとした仕上がりにしたのが今回の舞台の特徴。


ディープパープルのイアン・ギランがジーザスを演じたことからもわかる通り、ジーザスの高音は、ヘヴィメタばりの高音シャウトをするようなナンバーなのですが、芸大卒の主役、柳瀬大輔が歌うジーザスは、とってもオペラチック。


他の出演者にしてもしかりで、JCSの持つナンバーの鋭さ、作品としての斬新さが全くなくなっていました。これはもう、「ロックオペラ」なんて恥ずかしくて言えませんね。「正統派オペラ」テイストなミュージカルの仕上がりでした。


翻訳もののミュージカルでは、仕方ないとは思いますが、訳詞の問題もあって、それが少し乗りを悪くしていたのかな、という点もありました。
ソウルシンガーが唄う
「♪Jesus Christ, Superstar,
♪Who are you、What are your sercrified」という歌詞が、
「♪ジーザスクライスト、スーパースター
♪誰だ、おまえは誰だ?」
となっていたのにも少し笑えて。。。


主要キャストの中で、ただ1人オリジナルテイストを醸し出していたのがユダ役の芝 清道。
ビートに乗って、パワフルに唄うところは、よかったです。高音のシャウトや、徐々に音階を上げて唄うところなど、とても原作(?)を研究している印象を受けました。
#他の人は、ビートにすら乗っていなかった。


あと、印象に残ったのは、ヘロデ王役の下村尊則
この人は、キャラクターが濃い、濃い。しぐさ、唄い方、踊りが、劇団四季版「美川憲一」。きらきらとした衣裳を身につけ、濃いメイクと派手は振り付け。そして、パワフルでセクシー(美川チックな)な歌声。その存在感は、圧倒的です。全体的にダラーっとしがちな舞台の強烈なスパイスとして、見事に舞台の流れを引き締めてくれました。


残念だったのは、この作品を通してのメッセージがうまく伝わってこなかったことです。


これは完全に演出ミスだと思うのですが、作品の持っているテーマを上手く抽出できていないというか、全体的なバランスが悪いような気がします。出演者は頑張っているのに。。。


とにかく、僕の頭の中に会ったJCSとは全く違った作品を見せられた気分でした。


アレンジ(演出家)次第でこうも変わるものか、という新発見をしたこの舞台。


劇団四季オリジナルの「ジャポネスクバージョン」という舞台もあるそうなので、そちらも観る機会があったら、観てみたいです。
#今回の舞台は「エルサレム・バージョン」でした。
また酷評するかもしれませんが。。。


今まで演出家のことは全然気にも留めずにミュージカルを観ていましたが、今後は少し演出家にまでこだわって舞台を選んでいこうと思います。



音 楽 : ★★★★☆
脚 本 : ★★★☆☆
演 出 : ★☆☆☆☆
役 者 : ★★☆☆☆
舞台/衣装:★★★☆☆
満足度 : ★★☆☆☆