三文オペラ


音楽劇 三文オペラ蜷川幸雄演出、Bunkamuraシアターコクーン)見てきました。


実は、僕は舞台(芝居)が苦手で、あの芝居独特の台詞回しがイマイチ好きになれなかったのですが、世界の蜷川演出であるということ、音楽劇であるということ、この2点にひかれてこの舞台観劇となりました。


さてさて観劇後の正直な感想ですが。。。何だか分けわからん、というのが正直なところ。


そもそも「三文オペラ」という意味すらよくわからん。おまけに音楽が 複雑怪奇な旋律をとったりするので、僕の頭の中の「?」マーク状態に輪をかけてしまい、なんだかなーという感じ。


あまりに勉強不足で観劇に臨んだことを反省し、翌日タワーレコードに行って輸入版のCDを買ってきたのですが、英語のタイトルだと「The Three penny Opera」となっていて、なんだ「三文オペラ」の「三文」とは「二束三文」の三文か。。。と一人納得する始末だったのですから。英語のCDを聞く方が歌詞の意味がわかりやすい箇所もあったりして、翻訳劇の難しさをまたまた感じた次第であります。


さて舞台の方はと言えば、鹿賀丈史扮する怪盗マクヒス(別名メッキー)をめぐり、愛人だの、恋人だの、親友の警官だの、恋人の両親だの、娼婦だのがまあいろいろとごちゃごちゃと絡んでくるという、複雑なんだか簡単なんだかよく分からない話で、僕にはこのストーリーが意味していることがよくわかりませんでした。


まあ、ガイドブック的に言えば、、、

舞台は19世紀末のロンドンの下町。怪盗と乞食と娼婦を主人公に、資本主義社会に鋭い風刺のメスを入れたブラックコメディで、当時の前衛的なジャズ、ブルース、ポピュラー・ソング、タンゴなどを巧みに融合させたその楽曲は今日でも多くの歌手に歌い継がれています。。ということなのかな?


三文オペラ」というタイトルとは違い、この舞台はどちらかというとオペレッタに近いような気がします。
#もちろんミュージカルとは違うよね。


台詞のあるミュージカルは大体、登場人物の感情の高まりとともに歌になり、彼/彼女らの悲しみや喜びや驚きなんかを、歌を通して伝えるみたいな感覚があり、芝居と歌との間に相関関係があるのだけれど、この「三文オペラ」の場合、前後の芝居とはまったく関係ない、妙に哲学的な歌詞を急に歌ったりすることが多かったです。芝居とは別に、作者ブレヒトの社会に対する考え(風刺?)が歌を通して伝わってくる、そんな構成になっているような気がしました。


僕はもっと明るくて楽しいものをこの舞台に期待していたのだけど、1幕、1幕の構成(ストーリーの繋がり)が、なんかちぐはぐな感じでおまけにエンディング自体もなんか納得がいかなくて、「?????」だらけでした。


世界の蜷川というくらいだからどんな演出なんだろうと思ったけど、ちょっと驚いたのは全裸の女性がちょこっとだけ出てくることくらいで、別にアバンギャルドでもなければ、革新的でもなく、ましてや感動的でもなく、彼の何が凄いと言われる所以なのかは、こちらもわからずじまい。。完璧に自分の無知というか無教養さをさらけだしてしまう結果と相成りました。トホホのホ、です。


出演者は、鹿賀丈史、村井国男、嵯川哲朗、茂森あゆみ森川美穂大浦みずきキム・ヨンジャ、というミュージカルからポップス、果ては演歌まで、ジャンルにとらわれない実力派歌い手が揃ったという感じでした。


今回初めて見た茂森あゆみは、声は奇麗だし、歌唱力はあるのだけれど、歌を通して感情を表現するとなると、どうかな?という感じがしました。あと彼女の芝居の場面は鹿賀、嵯川、大浦などの舞台経験豊富な役者との絡みが多いので、少し可哀想な気もしましたが、でも明るく元気に頑張って演じていたと思います。


この出演者の中で出色だったのが、娼婦ジェニー役のキム・ヨンジャ。彼女の唄う「ソロモンソング」が特に良くて、唄い終わると会場から大拍手が。彼女の凄いところは、テクニックとか見せ方とかにこだわるのではなく、自分なりの解釈で、自分の感情から唄っているようなところだと思います。


他の出演者の方が、おそらく音程とかテンポとかそういった技量は上なのだと思いますが、彼女の歌を聴いてしまうと、他の出演者の歌が上滑りというか、深みがないように感じてしまうのです。おそるべし、演歌歌手、韓国の歌姫、キム・ヨンジャ。やはり演歌は心の歌なのですね。


音楽劇(彼女はミュージカルと言っていたが、敢えて音楽劇と書こう)は初めての出演、というキム・ヨンジャであるが、彼女の起用は大成功だったと思います。


7時に始まって、終了したのが10時半近くという(途中20分間の休憩あり)結構長いこの舞台。僕は「?」がいっぱいつまった頭を抱え、疲労困憊して帰宅したのでした。


しかし、良く考えてみると「???」をいっぱいもたらしてくれる舞台ってのも、あるようであまりなくて、そういう意味で蜷川は「世界の蜷川」と呼ばれているのだろうか?うーん。。。演劇の世界は奥が深いのか。


なんだかわかったような、わからないような、だまされたような、一人納得しているような、そんな不思議な感覚を味わせてくれた舞台でした。



音 楽 : ★★☆☆☆
脚 本 : ★★☆☆☆
演 出 : ★★★☆☆
役 者 : ★★★☆☆
舞台/衣装: ★★★☆☆
満足度 : ★★☆☆☆