タイニー・タイニー・ハッピー
『はるがいったら』を読み終えたあと、すぐに『タイニー・タイニー・ハッピー』を読みはじめ、今日読み終える。読み終えた感想としては、とてもよくできた作品ではあるが、あまりにもまとまりが良すぎて、かえって作品としての魅力に欠けるのでは?と感じた。『はるがいったら』で感じた、ある種ザラっとした毒のような要素が薄れ、大衆受けする、コンセプト狙いの作品になったのかな、という印象を受けてしまったからだ、
- 作者: 飛鳥井千砂
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/08/25
- メディア: 文庫
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本作は「タイニー・タイニー・ハッピー」(通称タニハピ)と呼ばれるショッピングモールに勤務する男女の物語で、それぞれが主人公となる小作品の連作という形をとりながら、その実、物語としては関連性を持っている点が、まず心憎い演出といえる。前回読んだ『阪急電車』と同じ構成だと言っていい。
本作の中の各章の構成しても、題名どおり、タイニー(小さな)ハッピー(幸せ)というのがテーマなようで、各カップルの男女のちょとしたすれ違いを描きつつ、各章のエンディングでは、主人公が相手を理解し、思いやることで、小さな幸せを与え/与えられるという構成を取っている。
たしかによくできた作品なのだけど、あまりに出来過ぎていて、個人的にはもっと「ぐっと来る何か」を期待してしまう。タイトルどおり、日常生活の中の、ほんのちょっとした、タイニー・タイニー・ハッピーだと、物足りないのかな。大きな感情のうねりでもいいし、ストーリーの展開でもいいし、そんな「おお」と思わせるものを『はるがいったら』を読んだ後の 飛鳥井千砂 には期待してしまった自分がいたのかもしれない。