往転─オウテン
三軒茶屋にあるシアタートラムにて「往転─オウテン」を観劇。とても意欲的・実験的な作品。
その構成等については、シアタートラムのHPにある記載を読むと良く理解できると思うので、まずは下記を。。
若手注目株の劇作家・演出家を迎え、幅広い世代に受け入れられる作品を創造することを目指し、11月にシアタートラムにて『往転─オウテン』を上演いたします。
脚本を、第52回岸田國士戯曲賞最終候補に『甘い丘』が選ばれ、2009年にシアタートラムでの再演時の作・演出で平成21年度(第64回)文化庁芸術祭新人賞を受賞した桑原裕子、演出を脚本家・演出家として数多くの作品で活躍する青木豪が務めます。
ある夏の日に高速夜行バスに乗り合わせた3組の男女とその運転手を中心に、4つの物語が進行します。各話で描かれる内容はいずれも女性を軸にしたもの。それぞれに個性豊かなキャストがそろいました。
リストラされた男と、かつての愛人だった女性とが、彼女の母親の遺言に従い、兄妹に遺骨を渡していく「アンチェイン・マイ・ハート」。浮気相手の女性を劇団☆新感線の看板女優の高田聖子、リストラされた男を大石継太が演じます。
双子の兄弟が経営する桃農園に、兄の婚約者だと名乗る女性が現れ、困惑する弟。彼女の素性と兄の思いが徐々に明らかになる「桃」。映像作品に数多く出演し、舞台では松尾スズキ作品で強い印象を残した市川実和子をはじめ、尾上寛之、安藤聖が出演します。
自宅の二階から飛び降り、入院することになった女性が、昏睡状態から目覚めた同室の男性と交流を深めていく「いきたい」。出演するのは「カフカの『変身』」で舞台デビューを果たした穂のかと浅利陽介、柿丸美智恵。
息子の友人と偶然バス停で出会い、同じ目的地へ向かう女性を描いた「横転」には、ナイロン100℃に所属し、他劇団でも活躍している峯村リエと仗桐安が出演します。
このほか、藤川修二、遠藤隆太が複数の物語に出演いたします。
時間軸を行き来しながら、徐々にそれぞれが抱える悩みや葛藤が浮き彫りになる物語。桑原裕子と青木豪、そして魅力的な出演者の化学反応に期待が高まります
舞台上では4つの異なるストーリーの一部が演じられ、その次にまた違うストーリーの一部が上演され、、という非常に凝った構成になっているのと、同じストーリー(例えば「アンチェイン・マイ・ハート」)の中でも、時間軸が前後したりするものもあり、観劇の途中まではこの作品の終着点がなかなか見えない、そんな状態である。
観劇の途中からこの4つの作品のそれぞれの登場人物の中に、横転事故にあったバスの観客と運転手が含まれていることから、間接的(一部直接的)に話の関連性が見えてくる、という仕掛けになっている。
そして、4つの話に共通するのは、それぞれの話の中に、行き方を変えようとするものと、変えられないものが登場して来、「変えようとする」ものはその物語から去っていき、「変えられないもの」はその物語の世界観の中に留まる、という点だ。
特に何か大きな主張があるわけではないが、演技力のある役者がそろい作り上げられた事件的な舞台、いろいろと考えさせられるものがあった。
<出演者>
「アンチェイン・マイ・ハート」
高田聖子
大石継太
「桃」
市川実和子
尾上寛之
安藤聖
「いきたい」
穂のか
浅利陽介
柿丸美智恵
「横転」
峯村リエ
仗桐安
音 楽 : ★★☆☆☆
脚 本 : ★★★☆☆
演 出 : ★★★★☆
役 者 : ★★★★☆
舞台/衣装:★★★☆☆
満足度 : ★★★☆☆