エリザベート

caltec2010-10-16



帝国劇場にて『エリザベート』を観劇。


トート役・ルドルフ役がトリプルキャスト(トート:山口祐一郎石丸幹二城田優、ルドルフ:田代万里生、伊礼彼方、浦井健治)、エリザベート役・ゾフィー役・ルドヴィカ役がダブルキャストエリザベート朝海ひかる瀬奈じゅんゾフィー寿ひずる杜けあき、ルドヴィカ:阿知波悟美春風ひとみ)ということで組み合わせの妙が楽しめる本公演、主役のエリザベートを元宝塚トップスターが演じるとあって、なかなかチケット入手が困難なこのエリザベート石丸幹二城田優の新Wトートに興味があり、今回の観劇となった。


全体的に、セットがシンプルかつ合理的な作りになった点と、死者が棺桶から甦りエリザベートの話を演じる劇中劇であることが明確になった点が、今までの同作品の演出から良くなった点だと思う。特に後者が明確になったことで、ストーリーテラー狂言回しとしてのルキーニの立ち位置がよりはっきりとしてきた。


作品自体は(個人的には『エリザベート』より『モーツァルト!』の方が好きなこともあり)、リピートするほどまでハマッている作品ではないので、もう一人の新トート、城田優バージョンを観るかどうか現在思案中


以下、メインキャストの感想を・・・


エリザベート 瀬名じゅん

実は、宝塚月組公演で観ている瀬名シシィ。当時は男役が(限定的に)女役を演じるということで、凛とした佇まいが印象深かった瀬名シシィですが、東宝版の瀬名シシィは、宝塚版シシィよりは女性らしい感じです。

皇后としてのシシィの葛藤や、母親になったときの演技など、その演技に奥深さを感じることができ、また高いファルセットまで出ることに驚きましたが、敢えて彼女(瀬名じゅん)がシシィを演じる必要があったのか、という点については少し疑問が。もちろん、宝塚でルキーニ、エリザベート、トートという3役を演じたのは彼女だけですし、シシィを演じるには十分な要素は揃っていますが、敢えて宝塚元トップスター(男役)がエリザベートを演じなくても、別にいいのではないか?とも、最近思い始めています。

個人的には、瀬名シシィが安藤和津に見えてしまい、何度も旦那様(奥田映二)の顔が浮かんできました。。。


【トート】 石丸幹二

石丸幹二=フランツ役者でしょう」と、誰もが思ったはずで、彼のトート起用は、今回のエリザベートの中での一番のサプライズ。端正なトートになるのか?と予想しているcaltecに飛び込んできたのが、妖しげな石丸トートのスチール写真。カルーセル麻紀と、三田明を足して二で割ったような、独特のビジュアルに「どんなトートになるのだ?」と逆に興味をそそられました。

で、肝心の石丸トートの観劇後の印象ですが、雑誌のインタビューで答えていた「ねっとりしたトート」という印象はあまり受けませんでした。しっかりとした音程、意外と野太い声で朗々と歌い上げる様は、見た目よりも男性的なトート。ただし、絡みつくような手の演技、目線の配り方、悠然とした歩き方からは、人間ではない何者かを体現しようとしている意図が十分伝わってきました。

ただ、トートが持っているはずのカリスマ性まで表現できたかというと、実は不十分だったのではないか、という印象を受けました。エリザベートを「死」に招き入れる主というよりは、エリザベートによって作り出された幻影という印象の方が強く、色々な場面で出てきてはいるものの、エリザベートが心底疲れ果てたときに初めて、彼女と結ばれるという、ちょっと哀しいトートであったような気がします。個人的には彼のフランツをやはり見てみたい。


【ルドルフ】 浦井健治
今回のトリプルルドルフの中では一番のお兄さん格の浦井ルドルフ。初代ルドルフの井上君がルドルフ役者(王子様が似合う役者)であるのに対し、浦井君の場合は、器用なのか、いろいろなタイプの役を演じることが出来る変幻自在な役者だと思います。

そのためか、ルドルフについては、良い意味でも悪い意味でも、平均点的なものを感じました。浦井君の現在の実力を考えると、実は、もうルドルフを敢えて演じなくてもいいのかなあ、もっと上のハードルの高い役を演じてもいいのではないか、とも思っている次第です。


【ルキーニ】 高島政宏
初演からずーっと変ることなく、しかもシングルキャストでルキーニを演じている高島兄。東宝エリザベートで一番多くの舞台数を踏んでいるのは、間違いなく彼、です。
そのためか、とても余裕な役作り。今回の高島ルキーニは、終始笑顔というか、薄ら笑いを浮かべていて、紙芝居屋の弁士、サーカスの団長のように、やはりエリザベートという一つの物語を演じる一座の座長的な位置付けで演技しているのでは?と勝手に勘ぐってしまうような演技をしていました。(初演の頃の、目一杯真剣な、チカラの入った演技が懐かしい・・・)
高島兄も、そろそろルキーニ卒業かな?でも次のルキーニ役者は?となると候補者が・・・ ん?橋本さとし


ゾフィー 寿ひずる
安定感ありありの寿ゾフィー。演技力、歌唱力、そして舞台での華(目立ち方)、どれをとっても素晴らしいです。特に彼女が衰え、そして死を前にするナンバーの秀逸さは・・・ 脇をしっかりと引き締めることで、中央が浮かびかがってくるのだなあ、と彼女の演技を見ていていつも思います。


【子ルドルフ】 鈴木知憲

今回は2階席からの観劇で、ひとつ気付いたことが・・・ オープニングの棺桶から出てきて、全員で踊るオープニングシーンの子ルドルフの動きがメチャクチャ可愛い!!! 健気に体をのけぞらせ、腕を振り上げ、一生懸命踊っています。
次回観劇した際にも、オープニングの子ルドの動きから目が話せなさそうです。実はこれが、今回の観劇での、一番の収穫ポイントでした。


【フランツ】 石川禅

やはり禅ちゃん、上手いです。芝居・歌・どちらをとっても良いですね。フランツも若いとき、晩年とメイクも芝居も変えて演じ分けていましたが、後半、少ーしだけ、「パイレートクイーン」の役とオーバーラップする表情が出てきて、少し受けてしまいました。
レミゼのマリウスも期待してます!)



音 楽 : ★★★☆☆
脚 本 : ★★★☆☆
演 出 : ★★★☆☆
役 者 : ★★★★☆
舞台/衣装: ★★★★☆
満足度 : ★★★☆☆



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