全日本選手権

フィギュアスケート全日本選手権 高橋、小塚がバンクーバー五輪代表内定


バンクーバー五輪代表の最終選考会を兼ねた全日本選手権は第2日の26日、大阪・なみはやドームで4種目を行い、男子で高橋大輔(関大大学院)、小塚崇彦トヨタ自動車)が新たに代表に内定した。


男子シングル 

ショートプログラム(SP)首位の高橋はフリーでも168・28点をマーク、計261・13点とし、優勝。SP2位の小塚は順位を一つ落としたが、3位に入った。代表枠3の男子は、すでにグランプリ(GP)ファイナルで代表に内定している織田信成(関大)、高橋、小塚の他に日本スケート連盟の選考基準を満たす選手がいないため、2大会連続出場となる高橋のほか、小塚も五輪初出場が確実となった。


◇小塚3位 練習して、練習して…結実


小塚の笑顔に、緊張の演技を終えた解放感があふれた。昨季の世界選手権で6位に入り、日本男子の五輪3枠獲得に貢献した20歳が、自らその切符を引き寄せた。


「五輪がかかる大会の緊張で体力を奪われた」と、終盤の二つのジャンプが乱れ、予定の回転数に満たないミス。だが今季不調だったトリプルアクセル(3回転半)は2度とも成功し「きれいに決まってよかった」と、課題を克服した充実感も見せた。


11月のNHK杯で7位に低迷。その後は「練習して、練習して、練習してきた」。並々ならぬ意気込みが結実したが、五輪代表の先輩でもある父嗣彦さんは「もっと追い込める。まだ甘い」と厳しい。


小塚自身も、それはわかっている。「正式に代表に決まったらもっと練習して、五輪で自分の良さを前面に出したい」。さらに緊張するはずの舞台で力を発揮するため、覚悟を決めた。【石井朗生】


◇織田、連覇逃しても収穫


SP3位の織田は2位に順位を上げたが、優勝した高橋とは、SPであった13点あまりの得点差をさらに広げられてしまった。2連覇を逃した演技は納得いかない部分もあるが、冒頭には、今季回避し続けてきた4回転トーループに挑戦。回転不足で転倒したが、その後は大きなミスなくこなした。GPファイナル2位で五輪代表に内定。今大会前に「五輪前の最後の試合で、いろいろなことに挑戦できるチャンス」と話していた通り大技に挑戦し、収穫のあった大会となった。


◇逃げずに4回転挑み続け


日本男子陣のエースは、やはり高橋だった。ライバルの織田と小塚を撃退し、「全日本王者」の称号を取り戻した。


今季一つも成功のない4回転トーループは、この日も回転不足の両足着氷で乱れ、左手をついた。その後は持ち直したものの、後半の3回転ループと3回転ルッツは着氷が乱れた。一方、3度のスピンはすべて最高のレベル4認定で、表現力などを示すプログラム構成点は5項目中4項目で8点台、「音楽との調和」の項目は9・05点。「堂々と全日本チャンピオンといえる演技ではなかった」と悔やむが、2位に17点近い大差だった。


右ひざの靱帯(じんたい)を部分断裂し、昨年11月の手術。戦線復帰した今季、フリーでは好演技がない。4回転が決まらず、体力面も弱い。それでも必ず4回転を入れてきたのは、五輪を見据えてのことだ。「今の内容では五輪で勝てない。プログラムを変えるし、あとは4回転。試合だと硬くなってタイミングがずれる」と課題を挙げるが、この日はスピンなどで収穫も多かった。


8位だった前回トリノに続く五輪。大けがを乗り越えたことにも「メンタル面は強くなっていない。プレッシャーに勝てたと実感できていない」といい、「競技に入れば、けがをしたという甘えは通用しない」と周りの同情を拒む。鋭い目つきで「金メダルを取る」と誓う姿は、重圧に弱く「ガラスのハート」と呼ばれた4年前とは別人だった。【来住哲司】


◇男子最終成績
(1)高橋大輔(関大大学院)261.13点(SP92.85、自由168.28)
(2)織田(関大)244.30(79.60、164.70)
(3)小塚(トヨタ自動車)236.13(80.54、155.59)


女子シングル


女子のSPは4連覇を狙う浅田真央中京大)が69・12点でトップ。2位・中野友加里プリンスホテル)、3位・安藤美姫トヨタ自動車)、4位で67・84点の鈴木明子(邦和スポーツクラブ)までの4人が1点差あまりにひしめく大混戦となった。五輪3大会連続出場を狙う村主章枝(AK)は58・70点で6位と出遅れた。


◇難度下げ、スマイル復活


今季初めて氷上で満面の笑みを浮かべた。5位に沈んだロシア杯から2カ月。浅田が復調を印象づける演技でSP首位に立った。


今季8度試みて、一度しか成功していないトリプルアクセル(3回転半)。冒頭に3回転半−2回転トーループを降りたが、3回転半は回転不足と判定された。だが、これまでは転倒やパンクが多かっただけに、本人も「一応跳ぶことができたので、(フリーに)つながると思う」と手応え十分。伸びやかな滑りを取り戻して70点近い高得点を挙げ、「練習通り落ち着いてできた」と満足そうだ。


GPシリーズの不振を受け、ロシア杯後はプログラムを修正した。3回転半は審判席の前で跳んでいたのを反対側に変更。小林れい子・JOC専任コーチングディレクターは「人間心理として目の前は回転不足を厳しく見る。跳ぶ方もプレッシャーになる」と理由を説明する。浅田も「入り方で激しい動きをなくし、落ち着いて入れるようにした」という。ストレートラインステップは45秒から38秒に短縮。スパイラルも姿勢変化の順序をやりやすいように変えた。難度を下げて負担を減らし、演技に余裕を生む狙いが奏功した。


「SPがキーと思っていた。ヤマ場を一つ乗り越えた」と浅田。出られなかったGPファイナルをテレビ観戦し、「試合が待ち遠しかった」という。1・28点差に4人がひしめく大接戦だが、大会4連覇と五輪初出場がはっきり視界に入った。【来住哲司】


◇「今季一番の出来」


安藤は「今季一番の出来。五輪につながる」と納得顔。冒頭のコンビネーションジャンプで、最初の3回転ルッツの感触が良くなかったため、続くループを予定の3回転から2回転に変える機転を発揮。ステップも情感豊かに演じた。五輪行きを決めたGPファイナルまでは失敗を恐れて緊張に襲われたが、今大会は「楽しく滑れている」と余裕も。「勝てなくても、心に残る演技ができれば私には金メダル」


◇中野、ミスなくホッ


険しい表情でリンクに立った中野が、演技後はにこやかな笑顔に変わった。「今までになく緊張したが、一つ滑り終えてホッとした」。今季はミスが多かったジャンプをすべて決めた。大会前にトリノ五輪覇者の荒川静香さんから「練習しているんだから、あとは運次第」と励まされたのも力にした。昨年はSPで首位ながらフリーで5位に後退。「去年は守りに入って攻められなかった。あんな経験はしたくない」


◇大舞台経験で成長


GPファイナルで3位に食い込んだ鈴木は、「心を込めて滑ることができました」と満足そうに振り返った。国際大会で着実に実績を残している今季については「大きな舞台を踏ませてもらったことが力になっている」と。「選考や点数より、自分が見せたい演技をすることに集中した」というSP同様、逆転優勝を狙える位置で迎えるフリーにも、自然体で臨む。


村主章枝


(冒頭の連続ジャンプでミス)投げたくなかったので、勢いの中にも丁寧にと心掛けた。滑りは悪くなかった。


ペア


ペアは唯一出場の高橋成美(アクアリンクちば)、マービン・トラン(カナダ)組が2連覇。


◇衣装でもアピール


アイスダンスで、五輪日本代表を目指すリード姉弟。扇子を手にした浴衣姿の2人は、「さくらさくら」のメロディーに乗って「純日本風」の演技を披露した。今季、ODのテーマは民族舞踊。五輪本番用に、絹を使った着物を準備。姉のキャシーが「色も柄も秘密」という衣装で、一層のアピールを狙う。


27日の同連盟理事会をへて、男女各3、アイスダンス1組の五輪代表が発表される。


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バンクーバー五輪代表の選考


男女各3枠、アイスダンス1枠。男女は、GPファイナル日本勢最上位のメダリストである織田と安藤が、全日本選手権出場を条件に内定を得ている。そのほかは、全日本選手権の優勝者を選出。残りを全日本選手権3位以内▽GPファイナル進出者▽世界ランキング日本勢上位3人−−を対象に、競技会得点などを総合的に判断する。


毎日新聞 2009年12月27日 東京朝刊)

フィギュア:親子2代で栄光の舞台…小塚選手が五輪切符

フィギュアスケート男子で名古屋市出身の小塚崇彦選手(20)が、26日に大阪・なみはやドームでの全日本選手権で3位に入り、織田信成高橋大輔両選手とともに来年2月のバンクーバー五輪の切符獲得を確実にした。68年グルノーブル五輪日本代表の父嗣彦さん(63)ら一家総出の英才教育を受け「5歳で競技を始め、父が出た五輪にずっと出たいと思っていた」と言う栄光の舞台に立つ機会を得た。


前日のショートプログラム(SP)は2位。26日のフリーで順位を下げたが3位を確保。演技終了後にはほっとした表情を見せた。正式決定は27日の理事会だが、日本スケート連盟が選考対象にしている世界ランクなどで、3選手のほかは選考基準を満たしていない。


祖父・光彦さん、母幸子さんも元選手の「3代スケート一家」。光彦さんは愛知県スケート連盟の草創期から競技普及と発展にも尽力。連盟には「小塚トロフィー」が与えられる大会もある。そんな恵まれた環境で早くから才能が開花し、06年に世界ジュニア優勝。昨季はグランプリ(GP)シリーズのスケートアメリカを制し、GPファイナルも2位。今季も10月のロシア杯で2位になった。


今年1月に名古屋で成人式に参加。2月の誕生日に先駆けて報道陣から20歳の決意を求められ「演技で男らしさ、大人らしさを追求したい」と語り、色紙に「大人」と書いた。


「小さいころ、わら半紙に目標を『五輪に出る』と書いていた」と懐かしむ父は、きょうの演技を「80点」と評した。その言葉に「頑張った分20点足してくれた」と返した。大きな背中に肩を並べ「先生(コーチ)や育ててもらった父母に感謝の気持ちを忘れず滑る」。バンクーバーでの活躍は小塚選手の家族はもちろん、応援する皆の願いでもある。【村社拓信】


毎日新聞 2009年12月27日 9時18分(最終更新 12月27日 14時23分))



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