全日本選手権

フィギュアスケート全日本選手権 真央V4、復活舞踏会 苦しんで、初の五輪へ 


最終日の27日、大阪・なみはやドームで女子とアイスダンスのフリーを行った。


女子シングル


女子はショートプログラム(SP)首位の浅田真央中京大)がフリーでも1位となり、計204・62点で4年連続4回目の優勝を果たした。4連覇は8連覇の伊藤みどり以来18季ぶり。


SP4位の鈴木明子(邦和スポーツランド)が計195・90点で2位、SP2位の中野友加里プリンスホテル)が計195・73点で3位、SP3位の安藤美姫トヨタ自動車)が計185・44点で4位。SP6位の村主章枝(AK)は計161・29点で7位に終わった。


◇真央V4、苦しんで初の五輪へ…修正2カ月、実を結ぶ


浅田がよみがえった。不調のどん底から2カ月間で立ち直り、4連覇。夢舞台への切符をつかんだ。


冒頭のトリプルアクセル(3回転半)。今季これまで9度試みて成功は1回だけだったが、安定した助走から軽々と跳んでみせた。続く3回転半からの連続ジャンプは一つ目をダブルアクセル(2回転半)に。「2回やるのは負担があるし、他の部分に集中しようと。朝(練習)の時点で決めた」。3連続ジャンプなどで回転不足のミスはあったが、伸びやかな演技で合計200点超えを達成した。


5位に沈んだ10月下旬のロシア杯後、プログラムを修正した。「構成を変えた。スパイラルやスピンのレベルを取りやすくした」と説明する。フリーでは3回転フリップに入るコースを時計回りから、跳びやすい逆回りに変え、ストレートラインステップは約1秒短縮。スパイラルの姿勢の順序やコースも変え、ジャンプへの助走距離を長くした。この2カ月間を「自分の演技を見直すことができた。毎日が充実していた」と振り返る。


「3回転半2回」に固執せず、プログラム全体の難度を下げて滑りに余裕を取り戻し、見事な復活。戦略や取り組みを見直すうえで、今季序盤は不振でよかったのかもしれない。「自分は(シーズン後半に強い)後半型。修正することはたくさんあるが、やっていくだけ」。五輪金メダルに向け、希望が膨らんだ。【来住哲司】


◇安藤


既に五輪代表に内定していた安藤は、SPの3位から順位を一つ下げた。3回転ルッツやダブルアクセル(2回転半)が回転不足とされるなど、ジャンプの精度に課題を残した形。安藤は「内定に恥じない演技をという緊張があった」としながらも、「(全日本に向け)すごくいい練習ができ、やっと気持ちと音楽が合ってきた。練習はうそをつかないと思った」と一定の手応えも口にした。ジャンプを含めた修正点は既に確認しているようで、「五輪では、トータルで点が取れる演技をしたい」と抱負を語った。


◇鈴木2位 転倒でも笑み、夢射止める


自分の名前がスクリーンで2位に表示されたのを見た瞬間、鈴木は大きな瞳から涙を流した。「最高の演技ができたうれしさに結果がついてきてくれた」。全日本選手権で初めて立つ表彰台が、五輪への懸け橋となった。


中野、安藤、浅田の後に登場。中野が好演技をしたと知り、「私も波に乗ろう」と気持ちを高めた。3回転ループで着氷後、次の一歩で左足先がつまずき転倒。だが「何をやってるんだろうと笑ってしまった」と動じず、終盤のステップでは大歓声を浴びながら満面の笑みで舞った。「得点は考えず自分のスケートを見せたい」という思いが実った。


6季前に摂食障害で体重が激減し、一時はスケートから離れたことも。東北福祉大を卒業して3年目の今季、中国杯でGP初優勝、GPファイナルも3位と躍進した。「悪いことも一つ一つ次へのステップにした。それが結果につながったかな」。24歳でついに立つ大舞台。「五輪でも心をこめて滑りたい」と、思いを強くした。【石井朗生】


◇中野、痛恨0・17点差


SPで2位に付けて逆転優勝を狙った中野は、演技冒頭に予定していた3回転ルッツをステップアウト。五輪代表の座を争っていた鈴木にわずか0・17点差で抜かれ、3位に終わった。中盤からは、演技を立て直しただけに「ミスを少なくしたかったのだが……」と悔やむばかり。前回のトリノ五輪でも、代表の座に一歩届かなかった中野。五輪切符が懸かった全日本選手権を「人生の中で、これだけ緊張することがこの先あるのかな、というぐらい緊張した」と振り返った。


◇村主、3度目ならず


村主は最初のジャンプでミスをするなど精彩を欠いて7位。「最後まであきらめず最大限の努力をした」と挑戦心を見せたが、3大会連続の五輪には届かなかった。大みそかには29歳。今後について「周囲とも話し合って、何をしたら日本のフィギュアを盛り上げられるか考えたい」と、新たな道への模索を示した。


バンクーバー五輪代表の選考方法


男女各3枠、アイスダンス1枠。男女はGPファイナルの日本勢最上位のメダリストが、全日本選手権出場を条件に内定。さらに全日本選手権の優勝者を選出。残りを▽全日本選手権3位以内▽GPファイナル進出者▽世界ランキング日本勢上位3人−−を対象に、競技会得点や演技内容などを総合的に判断して選ぶ。過去に世界選手権6位以内の実績を持つ選手がけがなどで選考基準に達しない場合、選考に加えることもある。 


◇女子の主な五輪代表候補の今季成績◇


(3)浅田真央ジャパンオープン(3)(フリー102.94点)▽フランス杯(2)(173.99点)▽ロシア杯(5)(150.28点)▽全日本選手権(1)(204.62点)


(5)安藤美姫▽ロシア杯(1)(171.93点)▽NHK杯(1)(162.55点)▽GPファイナル(2)(185.94点)=代表内定▽全日本選手権(4)(185.44点)


(8)鈴木明子▽飯塚アイスパレス杯(1)(151.65点)▽ウインターゲームズニュージーランド(1)(159.10点)▽中部選手権(1)(182.06点)▽中国杯(1)(176.66点)▽スケートカナダ(5)(147.72点)▽GPファイナル(3)(174.00点)▽全日本選手権(2)(195.90点)


(14)中野友加里ジャパンオープン(4)(フリー91.52点)▽フランス杯(3)(165.70点)▽NHK杯(4)(152.35点)▽全日本選手権(3)(195.73点)


(17)村主章枝フィンランディア杯(7)(136.91点)▽中国杯(7)(145.99点)▽スケートアメリカ(4)(148.99点)▽全日本選手権(7)(161.29点)


※カッコ内の数字は順位、名前の前は世界ランキング。ジャパンオープンはフリーのみ。


アイスダンス


アイスダンスオリジナルダンス(OD)まで首位のキャシー・リードクリス・リード組(木下工務店ク東京)が計163・37点で3連覇を飾った。


姉弟の息ピッタリ


米国人の父、日本人の母を持つリード姉弟組が、アイスダンスで3連覇を達成し、バンクーバー五輪出場を決めた。中盤に見せた互いにポジションを変えるリフトも、息はピッタリ。キャシーは「私は半分、日本人。名誉なことだと思います」と、喜びを口にした。妹のアリソンも、アイスダンスグルジア代表としてバンクーバーに出場することが決まっている。「両親は、子供が3人とも五輪に出るなんて驚いていると思う」


毎日新聞 2009年12月28日 東京朝刊)

◇真央ちゃんキッパリ!五輪でも「金メダルがいいな」


真央が待ちに待った五輪切符を手に入れた−−。フィギュアスケート全日本選手権バンクーバー五輪代表最終選考会最終日は27日、大阪のなみはやドームで女子フリーが行われ、SP首位の浅田真央(19=中京大)がトップの135・50点をマークし、合計204・62点で4連覇を達成、バンクーバー五輪出場を決めた。06年トリノ五輪は年齢制限で出場できなかったが、4年を経て初めて立つ夢の舞台では、復活したトリプルアクセルで金メダルを狙う。


大観衆のスタンディング・オベーションが誰が勝者かを示していた。両手を天に突き上げてフィニッシュすると、拍手と歓声のシャワーが一斉に降り注ぐ。重圧から解放された浅田は笑みを浮かべ小さく息を吐き出した。フリー1位の135・50点をマークして合計204・62点で全日本4連覇。文句なしで五輪切符を手に入れた。その瞳はかすかに潤んでいた。


「ほっとしたのと、うれしかった。一つのミスもできないという思いがあった。初めて五輪に出ることができるので、すごくうれしい」


バンクーバーへの道を切り開いたのは代名詞の大技だった。ラフマニノフ前奏曲「鐘」に乗って、冒頭のトリプルアクセルを決めた。今季9度試み1度しか決められなかったが、大一番で成功。次のトリプルアクセル−2回転トーループは、安全策からダブルアクセルに。「2回するよりも他の部分に集中しようと思った」。ジャンプが3度も回転不足になるミスはあったものの、表現力が問われる5項目の演技点でただ1人、すべて8点台を叩き出した。


トリノ五輪を控えた4季前は、GPファイナルで荒川、スルツカヤを撃破するなど氷上の主役を演じながら年齢制限で五輪の舞台を逃した。特例での出場を求める世論も高まったが、当時の山田満知子コーチと浅田、家族の間でも「トリノに出たい」という願望は話題に上らなかった。そして浅田は言った。「これからの4年間は長いと思います」。言葉通り長く険しい五輪ロードだった。


4年間で身長が5センチ伸びて体のバランスが変わり、得意だったトリプルアクセルもミスが増えた。精神面でも周囲の期待を背負いスケートを楽しめなくなった。昨季の世界選手権ではシニア参戦後初めて表彰台を逃し、今季はGPファイナル出場を逃すなど不振に陥った。タラソワ・コーチに課された今季のテーマは「乗り越える」。今大会に帯同できなかった同コーチから、開幕前に「信じているから頑張りなさい」という手紙を受け取った。栄光と挫折が交錯する中、五輪切符を獲得した今、浅田は「4年間は早かった」と笑った。


そして、金メダルを胸に言った。「金メダルをもらう時はすごくうれしいし、良かったって思う。(五輪でも)金メダルがいいな」。抱き続けてきた黄金の夢をかなえる準備は整った。


◇「フワフワしてます!」 シンデレラ明子が第3の女に!


激戦となった“第3の女”レースを制したのは鈴木明子(24=邦和スポーツランド)だった。SP終了後は中野友加里(24=プリンスホテル)にリードを許していたが、フリーで逆転。今季のGPファイナル3位の実績と今大会の2位表彰台で初の五輪出場を決めた。また、五輪出場を決めていた安藤美姫(22=トヨタ自動車)は4位に終わった。


こみ上げてくる感情を抑えられない。ライバル中野をわずか0・17点差で振り切った鈴木の大きな目から、この日2度目の涙があふれ出た。


「演技直後は楽しめたという高ぶりがあったけど、得点という現実を見てびっくりしちゃいました。まだふわふわしています」


転倒のピンチを乗り越えた。最初の二つのコンビネーションジャンプを決め、三つ目の3回転ループも無事に着氷したかに思われたが、次の瞬間、左足のエッジが氷にひっかかり前のめりに転んだ。手痛いミスだったが「何やっているんだろうって笑っちゃいました」と開き直り、終盤のジャンプ、ステップを決めてフィニッシュ。感極まり顔を両手で覆った。迎えた長久保裕コーチに「こけちゃった」と謝り、代表落ちを覚悟した直後、先に演技して高得点を出していた中野を上回る高得点が発表された。


まさにシンデレラストーリーだ。ジュニア時代はジュニアGPシリーズで2度優勝するなど将来を嘱望された。しかし、愛知県の親元を離れて東北福祉大に入学した直後から厳しい体重制限を気にするあまり、食べてもすぐに吐いてしまう摂食障害に悩まされた。48キロあった体重はみるみるうちに32キロに。6歳から始めたスケートを一時離れて療養し、リンクに立つことすらできなかった。


04〜05年シーズンから復帰したものの、トリノ五輪前の全日本選手権では12位。「最終組はピリピリしていて、次元が違った。私と同じ試合に出ているとは思えないほどレベルが高かった」と、し烈な女の戦いに圧倒された。だが、4年の時を経て、別世界だった選考レースの主役の一人となった。苦しい経験をしているからこそ、周囲への感謝も忘れない。シーズンオフの間は所属先の名古屋市内のスケートリンクで、貸し靴のカウンター業務や子どものスケート教室の出欠確認などをして、競技への励みとしてきた。


今季は中国杯で優勝、GPファイナルで3位と大躍進。重圧がかかった全日本選手権では精神面の強さも見せつけた。「サプライズのシーズンだったけれど、最後もびっくり。頑張ってきて良かった」。物語の続きはバンクーバーから再び始まる。


◇大技回避の美姫…4位にも「感触つかめた」


エンジョイとチャレンジをテーマにした安藤美姫のフリー。「全日本は目標にしていた大会」という勝利への執念が“チャレンジ”を上回った。3−3回転のコンビネーションも、4回転サルコーも封印し「前半は完ぺきだった」。しかし「五輪代表に内定しているんだから、完ぺきな演技をしなきゃ、と思ってしまった」という中盤に、落とし穴があった。3回転ルッツでリズムを崩すと、3回転トーループからの3連続ジャンプも完了できず。「今季一番良くなかったフリーだった」と悔やむ結果となった。


それでも、来年のえと「寅」を連想させるコスチュームに身を包んだクレオパトラは、五輪への手応えも運んできた。「この全日本に向けて練習してきた成果で、ようやく音楽と気持ちが合ってきた。五輪前最後にいい感触がつかめた」と笑顔も飛び出し「私にはいろいろジャンプのバリエーションがある。失敗の少ない構成を考えたい」とプログラムの微調整も率先して口にした。代表発表セレモニーでは「できればメダルを持って帰りたい」と目標を口にした22歳。2度目の五輪は、結果を求める舞台となる。


◇また届かず…中野「4年後までこの気持ちは続かない」


最終グループの1番手で滑ったSP2位の中野友加里は、3−2−2回転の着氷が乱れて単発の3回転になったものの、その後、臨機応変に単発ジャンプを3連続のコンビネーションに変更。合計195・73点のハイスコアで残る選手の演技を待ったが、鈴木に0・17点及ばない3位。わずかの差で代表を逃した06年トリノ大会に続いて、五輪の女神はほほ笑まなかった。来春、フジテレビに入社するが「4年後までこの気持ちは続かない。五輪を目指すのはこれが最後」と夢舞台へのチャレンジが終わったことを明かした。


スポニチ 2009年12月28日)

フィギュア:女子五輪代表は安藤、浅田、鈴木


フィギュアスケートバンクーバー五輪代表最終選考会を兼ねた全日本選手権は27日、大阪府門真市なみはやドームで最終日が行われ、女子で浅田真央(19)=中京大=が4年連続4回目の優勝を果たした。2位には鈴木明子(24)=邦和スポーツランド=が入った。日本スケート連盟は同日夜の理事会で、この2人と、グランプリファイナル(今月上旬、東京)の銀メダルで代表内定済みで今大会4位の安藤美姫(22)=トヨタ自動車=を加えた3人を代表に決定した。浅田、鈴木は初、安藤は2大会連続の五輪代表。


アイスダンスは米国出身で日本国籍を持つキャシー・リード(22)クリス・リード(20)組=木下工務店ク東京=が初の代表入り。男子は大会前に内定していた織田信成(22)=関大=と、今大会優勝の高橋大輔(23)=関大大学院、3位の小塚崇彦(20)=トヨタ自動車=の3人が正式に代表に選ばれた。


バンクーバー五輪フィギュアスケートは、大会第3日の2月14日(日本時間同15日)から行われる。【石井朗生】


◇誰もが納得する顔ぶれに


前回トリノ五輪では代表選考が論議を呼んだが、今回はだれもが納得する顔ぶれになった。伊東秀仁・日本スケート連盟フィギュア部長も「フィギュア委員会、理事会ともすぐ満場一致で決まった」と明かす。


女子3枠目は鈴木と中野が選考基準に達していたが、鈴木は今季、GPファイナルで3位に入り、今大会でも中野をわずか0.17点差ながら上回った。中野は世界選手権に3度出場してすべて5位以内と、世界選手権出場なしの鈴木より過去の実績では優位だが、伊東部長は「中野の実績や左肩負傷(による出遅れ)も考慮したが、今季と今大会の成績を踏まえた」と説明した。


五輪本番に向けて伊東部長は「目標は複数のメダル獲得。男女全員にチャンスがある」と強調する。浅田と小塚は「本人の希望」(伊東部長)で4大陸選手権に出場し、ややハードな日程となる。ただし、調整は各選手に一切任せられ、トリノ五輪前のような事前合宿はない。連盟側による選手の状態の把握、チームとしての一体感などにやや不安が残る。【来住哲司】


毎日新聞 2009年12月27日 21時28分(最終更新 12月27日 23時55分))

フィギュアスケート:世界選手権/4大陸選手権 代表に浅田ら


日本スケート連盟は27日、フィギュアスケートの世界選手権(来年3月23〜27日、イタリア・トリノ)と4大陸選手権(来年1月27〜30日、韓国・全州)の代表を発表した。女子の浅田真央中京大)、男子の小塚崇彦トヨタ自動車)らが両大会の代表に決まった。代表は次の通り。


【世界選手権】

▽女子

浅田真央中京大)、中野友加里プリンスホテル)、安藤美姫トヨタ自動車


▽男子

高橋大輔(関大大学院)、織田信成(関大)、小塚崇彦トヨタ自動車


アイスダンス

キャシー・リードクリス・リード組(木下工務店ク東京)


【4大陸選手権】

▽女子

浅田、鈴木明子(邦和スポーツランド)、中野


▽男子

小塚、町田樹(関大)、南里康晴(ふくや)


▽ペア

高橋成美(アクアリンクちば)マービン・トラン(カナダ)組


アイスダンス

キャシー・リードクリス・リード


毎日新聞 2009年12月28日 東京朝刊)

フィギュアスケート:4大陸選手権 小塚が回避へ


フィギュアスケート男子のバンクーバー五輪代表に決まった小塚崇彦トヨタ自動車)は28日、4大陸選手権(来年1月、韓国)の代表を辞退する意向を示した。当初は、五輪のショートプログラム(SP)の滑走順に影響する世界ランキングの順位を上げることを望み、同選手権の代表に選ばれたが、出場してもランキングに大きな変動がない見通しとなったため。世界ランキングは07〜08年シーズン以降の3季の成績によって決められ、小塚は現在、日本選手で最上位の10位に位置している。


毎日新聞 2009年12月28日 東京夕刊)


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