グランプリシリーズ:グランプリファイナル

フィギュアスケート:GPファイナル 安藤と高橋、SP首位


第2日の4日、東京・代々木第1体育館で3種目を行った。


女子シングル


女子のショートプログラム(SP)は安藤美姫トヨタ自動車)が66・20点で首位に立った。鈴木明子(邦和スポーツランド)は57・54点で5位。昨季世界女王の金妍児キム・ヨナ、韓国)が65・64点で2位、昨季世界ジュニア女王のアリョーナ・レオノワ(ロシア)が61・60点で3位につけた。


◇ヨナ、緊張残り2位


金妍児は安藤にわずか0・56点差ながら、2位スタートとなった。冒頭の3−3回転連続ジャンプは二つ目が回転不足、続く3回転フリップは1回転。「演技直前に転んでしまい、当惑してしまった。緊張が残っていた」と振り返った。SPで大きくリードを奪い、フリーで逃げ切る「勝ちパターン」が崩れた形だが、「違う大会のつもりで臨みたい」と闘志を燃やしていた。


◇大崩れせず、演技まとめ


バンクーバー五輪代表に、安藤が大きく前進した。昨季世界女王の金妍児を抑え、堂々の首位スタートだ。


完ぺきな演技ではなかった。「コーチと『絶対入れてやろう』と話し合っていた」という冒頭の3−3回転連続ジャンプ。「(助走が)回り込みすぎてしまった」と最初のルッツは着氷が乱れ、とっさに二つ目のループは2回転に自重したものの、体勢がゆがんだ。後半のレイバックスピンは、最低のレベル1認定。だが、大きく崩れることなくまとめ、表現力などを示すプログラム構成点は5項目中4項目で7点台後半を並べた。


今季はロシア杯、NHK杯を連勝。ミスが出ても崩れずに安定感が増し、ニコライ・モロゾフ・コーチは「以前はミスが出るとギブアップしてしまったが、今季は表現を続けている」と成長を指摘する。今大会前、曲に合わせてSPの三つのジャンプを跳ぶことを10回続けて繰り返すようなハードな練習をこなしてきた。安藤は「最初の(連続)ジャンプで失敗しても、次のフリップで失敗しなかったのは練習の成果が出た」と強調した。


3−3回転連続ジャンプの成功が今季ないのは課題だが、五輪に向かう道のりは順調。フリーに向けて「楽しみながら、ベストを尽くしたい」と誓う。5回目のGPファイナルで初の表彰台と「五輪内定」まで、あと一歩だ。【来住哲司】


男子シングル


男子のSPは高橋大輔(関大大学院)が89・95点で首位に立った。昨季世界王者のエバン・ライサチェク(米国)が89・85点で2位、織田信成(関大)が87・65点で3位につけ、上位4人が自己ベスト得点を更新した。


◇見せ場で表現力発揮


昨年11月に右ひざを手術した高橋は、忘れかけていた感覚を久々に味わっていた。スタンドを埋める観客の顔が見える。ファンの反応を、しっかりと受け止めることができる。


終盤の見せ場だった。上半身を大きく使ったステップが、情熱的な曲調にぴったりとマッチし、会場は一体感に包み込まれる。高橋の動きを見つめる一人一人が、その豊かな表現力に引き付けられていた。


復帰後初のGP大会となった11月上旬のNHK杯で、高橋は「アピール不足」を実感したという。そこで「表現」を意識しながら練習に取り組んだ成果が形になった。さらに、終盤に内容の濃い演技を披露し、復帰当初に感じさせたスタミナ面の不安を振り払う結果にもなった。


「滑りは納得できるものではない。小さなミスもあったので、この点数に驚いている」と演技を振り返った。SPの89・95点は、06年トリノ五輪で、ロシアのエフゲニー・プルシェンコがマークした90・66点に次ぐ世界歴代2位のハイスコア。08年の4大陸選手権で記録した88・57点の自己ベストを上回っている。高橋は自身の感覚以上の早さで復活への道を歩んでいるのかもしれない。【栗林創造】


◇織田、ノーミス3位


織田が06年NHK杯で出した自己ベスト(83・55点)を更新する87・65点をマーク。冒頭のトリプルアクセル(3回転半)、続く3−3回転連続ジャンプを決めるなど、ほぼノーミスでこなした。「自分(のこと)に集中して、緊張した中で冷静にできたのは収穫」と満足げに振り返った。今大会でバンクーバー五輪内定を勝ち取るためには、フリーで高橋を逆転しなければならない。チャプリンの映画音楽メドレーで踊るフリーに向けて「滑りやすい曲なので、その流れに乗っていきたい」と誓った。


アイスダンス


アイスダンスのフリーはオリジナルダンス(OD)首位のメリル・デービスチャーリー・ホワイト組(米国)が逃げ切り、計169・44点で初優勝。


最終日の5日は男女とペアのフリーが行われる。


日本スケート連盟は今大会をバンクーバー五輪代表選考基準の一つとし、日本勢最上位のメダリストは、全日本選手権(今月25〜27日)出場を条件として代表に内定する。


毎日新聞 2009年12月5日 東京朝刊)

フィギュアスケート:ジュニアGPファイナル 羽生、逆転V−−男子


フィギュアスケートのジュニアグランプリ(GP)ファイナルは第2日の4日、東京・代々木第1体育館で2種目を行った。男子のフリーは、ショートプログラム(SP)3位の羽生結弦(はにゅう・ゆづる)=宮城ク=が1位となり、計206・77点で逆転優勝した。日本男子勢の優勝は05年の小塚崇彦以来史上2人目。SP8位の中村健人明治神宮外苑ク)は計142・78点で最下位の8位だった。ペアはSP2位の高橋成美(アクアリンクちば)、マービン・トラン(カナダ)組がフリーも2位となり、計145・80点で2位に入った。ペアで日本勢のメダル獲得は、00年3位の川口悠子、アレクサンドル・マルクンツォフ以来2組目。


◇ミス引きずらず


ジュニア男子で、SP3位の羽生が逆転優勝を果たした。「緊張で最初から心拍数が上がり、呼吸も乱れていた」という状態で、中盤にトリプルアクセルを試みた際に転倒。しかし、「一発勝負。スコアじゃない」と思っていたためミスを引きずらず、以後はジャンプを確実に決めた。後半には06年トリノ五輪の女子シングルで金メダルを獲得した荒川静香の得意技「イナバウアー」も披露した。ジャンプの切れ味と柔らかな表現力を兼ね備えた14歳の新星が、14年ソチ五輪へ期待を抱かせる華やかなスタートを切った。


毎日新聞 2009年12月5日 東京朝刊)



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