グランプリシリーズ第6戦:カナダ大会

caltec2009-11-22


フィギュア:高橋と鈴木がGPファイナル進出 第6戦


【キッチナー(カナダ)来住哲司】


フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第6戦・スケートカナダ第2日は21日、当地で4種目が行われた。


<男子シングル>


男子はショートプログラム(SP)2位の高橋大輔(関大大学院)がフリーで1位だったが合計では231.31点で2位となり、2シーズンぶりのGPファイナル(12月、東京)進出を決めた。SP首位のジェレミー・アボット(米国)が計232.99点で優勝。


○…昨季GPファイナル王者のアボットはSPのリードで逃げ切り、2年連続のGPファイナル進出を決めた。冒頭に4回転トーループを決めた一方、3回転フリップやトリプルアクセル(3回転半)の着氷が乱れるミスもあったが、崩れることなくまとめた。「優勝して最高の気分だ。ファイナルのことは考えず、自分のパフォーマンスを出すことに集中した」という。NHK杯5位の不振から短期間で復調し、指導にあたっている佐藤有香コーチも「不安な状況からここまで持ってきた精神力はすごい。素晴らしい勝利だった」とたたえた。


◇高橋、手術からの着実な復活証明…プログラム構成点で高評価


フリーだけなら1位となり、GPファイナル進出を決める2位を確保。1年前の右ひざ手術から着実に復活してきたことを、高橋が証明した。


演技自体は失敗の部類だ。冒頭の4回転トーループが3回転になったほか、3回転サルコウなど後半三つのジャンプでステップアウトなどのミス。サーキュラーステップはレベル2認定にとどまった。だが、プログラム構成点は5項目中4項目で8点台を並べ、滑りの美しさや表現力、音楽との調和などで極めて高い評価を得た。


フェデリコ・フェリーニ監督によるイタリアの名作映画「道」の哀愁漂う曲調に合わせ、高橋は「終始表情を作れた」という。「表情でジャッジにアピールしたし、ジャッジも(反応を)返してくれた」。情感豊かな表情と滑りで、観客だけでなく審判も魅了するのが高橋の演技。今季はこれまで体力面の不安を抱え、特に演技時間が長いフリーは精彩を欠いていたが、この日は演技を楽しむ余裕を取り戻していた。


「手術で体が変化したが、跳ぶタイミングが見つかっていない」という4回転トーループのほか、スピンやステップのレベル獲得など課題は多い。それでも「スピンのレベルを上げ、4回転も入れば、もっと点数が出ると実感した」と手応えは十分。日本勢最上位のメダリストになればバンクーバー五輪代表に内定するGPファイナルで、世界中に「ダイスケ完全復活」をアピールしたい。【来住哲司】


<女子シングル>


女子はSP8位の鈴木明子(邦和スポーツランド)がフリーも振るわず、合計147.72点で5位に終わったが初のGPファイナル進出を果たした。SP首位のジョアニー・ロシェット(カナダ)が計182.90点で2連覇を果たし、SP3位の長洲未来(米国)は4位に落ちた。


○…女子SP首位のロシェットはフリーでも1位になり、昨季世界選手権銀メダリストの貫禄を見せた。もっとも、ノーミスだったSPと違い、この日は3回転フリップがステップアウト、3回転のルッツとサルコウがいずれも2回転になるなどジャンプのミスが目立った。本人も「満足はしていない」と納得していない様子。フリーのプログラムの「サムソンとデリラ」について「とても難しい。だが、今までやった中で一番のプログラムと思う」と語り、五輪本番までに精度を高めていく考えを示した。


◇鈴木、辛うじてGPファイナル切符…「気持ちに負けた」


女子のGPファイナル6人目の切符は鈴木が辛うじて獲得した。自力進出の4位以内には届かなかったが、SPでの8位から5位に浮上したことが奏功した。


冒頭の3−2−2回転3連続ジャンプは最初のルッツがロングエッジ(誤った踏み切り)と判定され、続くダブルアクセル(2回転半)−3回転トーループは一つ目が1回転半、二つ目は回転不足。その後もループのパンクやルッツのロングエッジなどミスが続いた。プログラム構成点も低く抑えられ、フリー得点は94.62点。ところが、他選手も失敗が相次ぎ、順位を三つ上げた。


GPファイナル進出の感想を鈴木は「複雑で、申し訳ない気持ち」と表現した。先月末の中国杯で優勝し、GPファイナル進出が目前に迫った今大会。しかし、演技で平常心を保てなかった。「今までは無心で滑っていたのに、今回はいろいろなことが意識に入ってきた。気持ちに負けた」と悔やむ。


それでも、GPファイナル初出場を果たし、悲願のバンクーバー五輪代表入りに一歩近付いた。「このチャンスを無駄にしない」。苦い教訓を、次に生かす。【来住哲司】 


<ペア>


ペアのフリーはSP首位のアリョーナ・サブチェンコ、ロビン・ゾルコビー組(ドイツ)が計206.71点で優勝。アイスダンスオリジナルダンス(OD)は規定首位のテッサ・バーチュー、スコット・モイヤー組(カナダ)が計101.26点でトップを維持した。


これでアイスダンスを除く3種目のGPファイナル進出者(各種目6人・組)が決まり、女子の浅田真央中京大)、男子の小塚崇彦トヨタ自動車)は出場を逃した。最終日の22日はアイスダンスのフリーが行われる。


毎日新聞 2009年11月22日 17時15分(最終更新 11月22日 18時38分))



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