旅 第3部 異邦へ 日本の写真家たちが見つめた異国世界

caltec2009-11-12



目黒にある東京都写真美術館にて「旅 第3部 異邦へ 日本の写真家たちが見つめた異国世界」を見る。


前回の「ヴィジョンズ・オブ・アメリカ」展と同様、第3部が一番充実していたように思う。その第3部の概要は以下の通りだ。


「旅」と「写真」は、19世紀の写真の黎明期から常に深い関係がありました。日本においても幕末に写真が渡来して以来、様々な視点で旅と関わり合いのある写真が残されています。本展は、写真術が発明された19世紀から現代に至るまで、「旅」というテーマのなかから生み出されたさまざまな表現を持つ作品を、異なる視点をもつ3つのアプローチにより構成するシリーズ展です。第1部「東方へ」(7月12日に終了)、第2部「異郷へ」(9月23日まで開催)に引き続き、第3部「異邦へ」を開催いたします。


第3部では、日本の写真家たちが旅先で捉えた海外への視線を辿ります。ピクトリアリズムの影響を留めた安本江陽による郷愁漂う風景や、建築写真家渡辺義雄による生き生きとした海外の街のスナップショットをはじめ、日本の写真史を確立させた名写真家たちによる異国での光景を、異邦人として旅した日本人写真家たちの視覚を通して、鮮やかに蘇らせます。著名作家の代表作から、秘蔵の名作まで、東京都写真美術館の約2万6,000点のコレクションから選りすぐられた、珠玉の名品をお楽しみください。各部が独立した企画構成になっていますので、第1部・第2部を見逃された方も充分にお楽しみいただける内容です。


本展は4つの構成で、日本の写家たちがみつめた異国世界をご紹介します。


□第1章:異邦へ −絵画的風景の方へ−


写真家たちを旅へと駆り立てたものは何だったのでしょうか。彼らは、新たなる「現実との出会い」を求め、旅に出ます。真実の体験のなかで、自らの内にある意識や感性に気付き、また触発されることによって、彼らの代表作となる重要な作品群を生み出してゆくのです。第1章では、絵画的写真(ピクトリアリズム)で旅先を捉えた二人の写真家をご紹介します。


[主な出品作家]
安本江陽、福原信三(写真集『巴里とセイヌ』『西湖風景』『布哇風景』による展示)


□第2章:異邦人としての眼差し


日常とは異なる場所へ身を置くという体験は、取り巻かれた日常空間では意識するとこのできない新たな感覚を喚起させ、写真家たちに新たな一面を知る機会をもたらします。しかし任務を負って旅をした写真家にとっては、職業写真家としての苦しみも感じたことでしょう。第2章では、アサイメントとして異国に赴き作品を制作した作家をご紹介します。


[主な出品作家]


木村伊兵衛、渡辺義雄、桑原甲子雄名取洋之助、三木淳、林忠彦


□第3章:自己探求への途


人生の土台作りの時期に異国世界に赴いた写真家にとって、その旅とは自己の存在理由を求める旅でもあったにちがいありません。第3章では、海外での作品制作が代表作となり、また作家人生にとっても重要な契機であった旅をご紹介します。


[主な出品作家]


奈良原一高、川田喜久治、植田正治森山大道小川隆之、深瀬昌久


□第4章:歴史の証言者としての旅


第4章では歴史的な事項を検証する旅をした写真家をご紹介します。歴史を旅する写真家は、現在と過去を交差させながら、刻々と変貌を遂げる世界を写真にしかと記憶させたいと欲望しました。写真は、一瞬一瞬の証人として、かけがえのない存在としてそこに寄り添う、「旅」の随行者だったのです。


[主な出品作家]


港千尋白川義員、並河万里、長野重一


木村伊兵衛植田正治森山大道、並河万里、長野重一など、caltecでもその名前と作品を知っている写真家達の作品が飾られ、今日(こんにち)の私達が思い浮かべる「旅」「写真」「外国」というものを、本展覧会では私達に提示してくれる。


それは「外国」というものが、私達の身近になったということの表れでもあり、また、「旅」というものと私達のかかわり方が変ってきたことも同時にあらわしている。旅行好きのcaltecにとって、外国を旅することは、未知のものと遭遇することであり、またそれらに触れ合うことで新しい自分を発見することでもあり、そして、今まで当たり前であると思っていたものを再認識することでもある。そんな自分の「旅」のあり方と、展示されている写真家の「旅」の共通点や相違点を考えながら本展覧会を楽しむことが出来た。


企画力  :★★★★☆
展示方法 :★★★☆☆
作品充実度:★★★★☆
満足度  :★★★★☆



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