世界選手権
【ロサンゼルス来住哲司】
10年バンクーバー五輪の国・地域別出場枠をかけたフィギュアスケートの世界選手権第2日は25日、当地のステープルズセンターで男子のショートプログラム(SP)とペアのフリーが行われた。
<男子シングル>
男子は小塚崇彦(トヨタ自動車)が5位、織田信成(関大)が7位、初出場の無良(むら)崇人(岡山・倉敷翠松高)が13位。前回2位のブライアン・ジュベール(フランス)が首位に立った。
◇五輪3枠獲得の圏内だが、フリーが正念場に
小塚が5位、織田が7位とやや出遅れたが、目標とするバンクーバー五輪の国・地域別出場枠3枠獲得の圏内に残った。上位2人の順位合計が「13」以内なら3枠を獲得する。戦後初めて日本男子3人を五輪に送り込めるか。26日のフリーは正念場だ。
SPで小塚はほぼノーミスだったが、得点は伸び悩んだ。織田は3−3回転連続ジャンプの着氷後にフェンスに激突し転倒。吉岡伸彦・日本スケート連盟フィギュア強化部長は「欲を言えばもう少し上に行きたかった」と漏らしつつも「3枠の目標達成の可能性は高い」と見る。
小塚はフリーで今季成功のない4回転トーループの回避を改めて宣言。「自分自身の達成感のため4回転をやってもいいが、3枠を取るためにちょっと我慢」と説明する。メダルを狙って確実性の低い大技に挑むより、安全策を取って順位を落とさない考えだ。
右ひざ故障のエース高橋大輔(関大大学院)を欠くメンバー。日本の男子は2006年トリノ五輪で1人だったが、1936年ガルミッシュ・パルテンキルヘン(ドイツ)五輪では4人出場したこともある。【来住哲司】
<ペア>
ペアはSP2位の川口悠子、アレクサンドル・スミルノフ組(ロシア)が計186.39点で3位となり、初の表彰台。日本の選手が他国の代表になってメダルを獲得するのは02年大会ペアの伊奈恭子(米国)以来2人目。SP首位のアリョーナ・サブチェンコ、ロビン・ゾルコビー組(ドイツ)が計203.48点で2連覇を果たした。
◇「挑戦する勇気」で川口、世界トップクラスに躍進
前々回9位、前回4位と着実に成長し、結成3季目で銅メダル。99年にシングルからペアに転向し、五輪出場のため1月にロシア国籍を取得したばかり。27歳の川口は、10年かけて名実ともに世界トップの仲間入りを果たした。
もっとも、本人は「うれしさより悔しい気持ちの方が大きい」と唇をかむ。スロー4回転サルコウに挑んだものの、スミルノフに投げられた川口は着氷で前のめりに転倒。「練習の成功率は7割くらいで準備はできていたのに」と残念がった。
07年11月に米国人ペアが成功するまでだれも跳べなかったこの大技に、川口はこだわりがある。ペア転向の動機の一つが「4回転を跳びたい」。昨年1月の欧州選手権で史上2組目の成功者となった。
タマラ・モスクビナ・コーチは「彼女は練習熱心で賢い。新たなことに挑戦する勇気がある」と評する。川口は「サインはすべて漢字」と日本への思いも強い。有力な五輪メダル候補が誕生した。【来住哲司】
(毎日新聞 2009年3月26日 20時20分(最終更新 3月26日 23時30分))