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浅田2年ぶり優勝 ファイナル進出 NHK杯
【フィギュアNHK杯】
フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第6戦・NHK杯は第2日の29日、東京・代々木第1体育館で行われた。
<女子シングル>
女子のフリーがあり、ショートプログラム(SP)首位の浅田真央(愛知・中京大中京高)が計191.13点で2年ぶり2回目の優勝を果たした。今季GP初勝利を挙げ、GP通算6勝目で自身の持つ日本選手最多勝利記録を更新。SP4位の鈴木明子(邦和スポーツランド)が2位、SP5位の中野友加里(プリンスホテル)が3位に入り、2年ぶりで日本勢が表彰台を独占した。
○…23歳でGPシリーズ初出場の鈴木が2位と大健闘。「ビックリしている。信じられない」と繰り返した。二つの連続ジャンプをミスし、中盤の3回転ルッツでも着氷が乱れたが「攻めていこうと決めていたので、切り替えられた」。その後はキレのいいステップと、思い切りのいいジャンプで波に乗り、「お客さんの手拍子のリズムが速いな」と感じる余裕さえあったという。東北福祉大在籍時の5シーズン前に、鈴木は摂食障害で体重が15キロも減り、フィギュアから一度離れた。それでも、スケートを目標に立ち直った。そんな鈴木の活躍を、同じ愛知県出身の浅田真と中野も「いい刺激になります」と祝福した。
GPファイナル(12月12〜13日、韓国・高陽)には浅田真、中野、安藤美姫(トヨタ自動車)の進出が決まり、村主章枝(avex)は進めなかった。SP8位の長洲未来(米国)は8位。
◇女子のGPファイナル進出者確定
フィギュアスケートGPファイナルの進出者(各種目6人・組)が29日、男子を除く3種目で確定した。日本勢では男子の小塚崇彦(トヨタ自動車)がすでにGPファイナル進出を決めている。
◇GPファイナル出場選手(女子)◇
GPポイント 総得点
(1)金妍児(韓国) 15+15=30☆385.20
(2)ロシェット(カナダ) 15+15=30☆369.62
(3)浅田真央 13+15=28☆358.72
(4)コストナー(イタリア) 9+15=24☆323.48
(5)中野友加里 13+11=24☆339.40
(6)安藤美姫 11+13=24☆339.30
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(7)村主章枝 13+11=24 325.90
※GPポイントは出場2大会の順位で算出(1位15点、2位13点、3位11点、4位9点、5位7点、6〜8位が5〜3点)。同点の場合は1大会のポイントが高い方が上位、それも同じ場合は2大会の総得点が高い方が上位。☆はGPファイナル進出確定。
▽安藤美姫
先に2試合が終わり、待っている時間が長かったけれど、GPファイナルに行けることが決まってうれしい。応援してくれる方々のためにも、韓国(でのGPファイナル)では、パワフルで自分らしい演技が100%できるように頑張ります。
○…中野がグランプリ(GP)ファイナルへの切符をもぎ取った。4位なら出場権を逃していただけに「うれしい」と、ホッとした様子で笑顔を見せた。今大会は右足首とこ関節に故障を抱えながらの出場で、前日のSPではミスを連発して5位。フリーでは、冒頭の3回転半ジャンプを2回転半に変更するなど、安全策をとった。後半の3回転フリップが回転不足と判定されたものの、それ以外はほぼミスなく滑りきり、演技終了後は涙を流した。GPファイナルに向けては早くも意欲満々で「3回転半、3回転−3回転にチャレンジするいい場所。治療をしつつ、このままいきたい」。
<アイスダンス>
アイスダンスはオリジナルダンス(OD)まで8位のキャシー・リード、クリス・リード組(川越ク)が計135.83点で8位。ODまで首位のフェデリカ・ファイエラ、マッシモ・スカリ組(イタリア)が計176.67点で初優勝した。
<ペア>
ペアのフリーはSP首位の■清、▲健組(中国)が計186.06点で初制覇し、SP2位の井上怜奈、ジョン・ボルドウィン組(米国)組は2位。
■は「广」の中が「龍」、▲はニンベンに「冬(下がニスイ)」
○…ペアで井上、ボルドウィン組がペア2位に食い込んだ。冒頭の3回転トーループでボルドウィンが転倒したが、その後はぴったりそろったスピンや正確なリフトで点数を稼いだ。井上は32歳、ボルドウィンは35歳。今季は引退を考え「髪を切って犬も飼い始めたのに、ジョンが8月に『GPシリーズに出たい』と言い始めた」と井上。準備不足で臨んだ10月末のスケートアメリカは5位だったが、今回は演技をまとめ上げた。井上は「やると決めた以上、しっかりやりたい」。ベテラン2人の挑戦はまだまだ続く。
(毎日新聞 2008年11月29日 22時11分(最終更新 11月30日 0時06分))
真央に戻ったジャンプと笑顔
【フィギュアNHK杯】
一度失っていたものを、浅田真央(愛知・中京大中京高)は取り戻した。自分本来のジャンプと自信。そして、はじけるような笑顔も。
冒頭にトリプルアクセル(3回転半)、続いてトリプルアクセル−2回転トーループに挑んだ。国際大会史上初となるトリプルアクセル2回成功の偉業がかかっていたが、2度目のコンビネーションジャンプ時は回転不足の判定。だが、その後は不調のルッツを簡単なトーループにする安全策も奏功し、5度のジャンプをすべて成功させた。「今朝の練習で調子が良く『攻めた方がいい』と思った。ダウングレード(回転不足)は悔しいけど、次は大丈夫と思った」と強調した。
2週間前のフランス杯でジャンプにミスが続いて2位に終わり、自信を失った。「以前のように何も考えず跳べたらいい」と悩み続けた。だが、前日のSPを大きなミスなく終え、復調の気配を実感。伊東秀仁・日本スケート連盟フィギュア部長は「(表情が)SPでは不安げだったが、フリーはいい感じだった」と説明する。
演技終了直前に体勢を崩したが、それを「倒れるくらいまでやれたらと思ったら、倒れかけました」と笑う浅田真。「優勝もうれしいが、自分(本来)のジャンプに戻ってきたことが一番うれしい」。同い年のライバル、金妍児(韓国)との今季初対決となるGPファイナルを前に、苦悩と課題を克服した。
【来住哲司】