フィギュア:浅田、SPで首位に 織田も同首位 NHK杯


2008年11月28日、手塚耕一郎撮影 フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第6戦・NHK杯は28日、東京・代々木第1体育館で開幕し、第1日は男女のショートプログラム(SP)などを行った。


<女子シングル>


女子は浅田真央(愛知・中京大中京高)が64.64点で首位。鈴木明子(邦和スポーツランド)が4位につけ、中野友加里プリンスホテル)は5位と出遅れた。


◇浅田、SP首位でも自己採点は辛め


満面の笑みとはいかなかった。「55点くらい、いや70点くらいです」という自己評価に、浅田真の気持ちの揺れが表れる。2週間前のフランス杯でミスが相次いだジャンプは大きなミスなくこなしたが、その後に落とし穴があった。


冒頭の3−3回転連続ジャンプは二つ目が回転不足となったが、次の3回転ルッツは無難に降りた。ところが、続くスパイラルはぐらつき、チェンジエッジでもたつくなどして最低のレベル1の評価。「ホッとしたのと同時に緊張が出た。体がこわばった感じだった」と悔やんだ。


得意だったジャンプが、今は最大の課題だ。フランス杯はシニア国際大会自己最低得点で2位。昨季からルッツとフリップの踏み切りの判定が厳しくなり、ルッツを直そうとしたところ、ジャンプ全体が崩れてしまった。


フランス杯後はタチアナ・タラソワコーチのいるモスクワで「ジャンプの感覚を以前のようにしたい」と集中的にジャンプ練習。今大会前の公式練習で「以前の感覚に近いものに戻すことができた」と感じたが、完ぺきではなかった。


表現力などを問うプログラム構成点で補い、SP首位。ルッツの踏み切りが正しく認定され、明るい兆しはある。フリーに向けて「攻める気持ちを忘れずに行きたい」と誓う。昨季世界女王が完全復活に一歩近付いたことは確かだ。【来住哲司】


◇中野、ジャンプミスが響く


中野はジャンプのミスが響いた。「緊張で体が硬くなった」といい、冒頭の3回転−2回転が2回転−2回転に。続く3回転ルッツも回転不足。その後は得意のスピンやスパイラルで立て直したが点数は伸びず、5位にとどまった。


GPシリーズ第1戦・スケートアメリカ以降に磨きをかけたスピンとスパイラルの評価を上げるなど収穫もあった。だが、「ジャンプを跳ばなければ点数は取れない」と厳しい表情だ。2位以上で2年連続のGPファイナル進出が決まる。重圧を吹き飛ばし、フリーで会心の演技を見せるしかない。


<男子シングル>


男子は織田信成(関大)が81.63点で首位に立ち、世界選手権3位のジョニー・ウェア(米国)は78.15点で2位。無良(むら)崇人(岡山・倉敷翠松高)は4位、南里康晴(ふくや)は8位。


◇織田が2季ぶりGP、試練を糧に堂々の首位


織田が2季ぶりにGPシリーズに帰ってきた。「声援に後押しされた」という演技はブランクを感じさせず、81.63の高得点。堂々首位に立った。


久しぶりの大舞台。緊張の色は濃かった。しかし、冒頭の3回転半ジャンプを決めると、徐々に演技に余裕が生まれた。続く3回転−3回転、3回転フリップも、持ち前の柔らかい足首を生かして軽やかに着氷。ステップやスピンも無難にまとめた。


07年7月、ミニバイクの酒気帯び運転で検挙され、国際大会派遣停止などの処分を受けた。結局07〜08年シーズンは棒に振った。環境を変えるべく、今季はニコライ・モロゾフ新コーチに師事。そこで学んだのは「スケートへの情熱と、楽しんで滑ること」。試練を成長の糧とした。


しかし、頂点に立ってこそ完全復活といえる。「フリーで4回転をしっかり決めたい」。織田自身が、それは一番よく分かっている。【山本亮子】


◇健闘、17歳無良


GPシリーズ初出場の17歳・無良がSP4位と健闘。冒頭にトリプルアクセルを決めるなど、ほぼノーミスだった。「観客が盛り上がってくれて元気をもらえた。気持ちよかった」と満足げに振り返った。


父隆志コーチは全日本選手権でペアで2度優勝、シングルで2位3度の実績を持つ。NHK杯は第1回(79年)〜第4回(82年)に出場し、大会最高成績はシングル4位、ペア3位(ともに80年)。無良はフリーに向けて「順位は気にしない。(合計で)200点以上出すのが目標」と意気込んだ。


▽南里 


高橋大輔=関大大学院=の代替出場でSP8位)試合続きでいつも以上に疲れた。最初のトリプルアクセルがダブルになるなどダメだったが、点数が出ていてびっくりした。 


<ペア>


ペアSPはホウ清、※健組(中国組)が63.10点で首位、井上怜奈、ジョン・ボルドウィン組(米国)組は2位。


アイスダンス


アイスダンスは規定とオリジナルダンス(OD)があり、日米両国籍を持つキャシー・リードクリス・リード組(川越ク)が計67.04点で8位。フェデリカ・ファイエラ、マッシモ・スカリ組(イタリア)が計89.39点で首位を維持した。(※は、にんべんに冬)


○…米国人の父、日本人の母を持つキャシー、クリスのリード姉弟組は規定、オリジナルダンス(OD)を終えて10組中8位。


規定の課題曲は、スペインの闘牛とフラメンコをイメージしたダンス曲「パソドブレ」。2人が苦手とするシャープな動きが中心のダンスで8位だった。「私たちはワルツのようなゆったりとしたダンスの方が得意」とキャシーは苦笑い。


一方のODの課題は「1920、30、40年代のリズムとダンス」。こちらも最下位の10位と振るわなかったが、コミカルな演技で会場を沸かせた。

フィギュア:浅田真央「一番良かった」笑顔戻った首位


昨季の世界女王が復活した。フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ最終戦、NHK杯が28日、東京・国立代々木競技場で開幕し、女子ショートプログラム(SP)で浅田真央(18=中京大中京高)が64・64点の高得点をマークし、2位に3・12点差をつけて首位発進。課題のジャンプは大きなミスなくまとめ、今季初戦のフランス杯で失いかけた自信を取り戻した。GPファイナル(12月12〜14日、韓国・高陽)出場が懸かる29日のフリーでは、国際大会では女子初の2度の3回転半ジャンプに挑む。


演技を終えた浅田に、本物の笑顔が戻った。「今シーズンの中で、一番良かった。次につながるいいSPだった」。淡い紫の衣装をまとい、ドビュッシーの名曲「月の光」に乗り、大きなミスなく演じきった。64・64点は、昨季のSP最高得点だった世界選手権の64・10を上回る高得点。自己評価を問われるとしばらく考え込み「55点くらい…いや、やっぱり70点」と答えたが、文句なしの首位発進だった。


世界女王にとって、10年バンクーバー五輪への分岐点となる大事な演技だった。今季初戦だった2週前のフランス杯はジャンプのミスを連発して2位。難なく跳べていた頃の感覚が戻らず、自信を失いかけた。再び失敗すればバンクーバーまで尾を引きかねない状況で臨んだNHK杯。演技前は「失敗してしまうのではないかと心配があった」とジャンプに恐怖心すら覚えていた。


冒頭の3回転フリップ−3回転ループの連続ジャンプは2つ目が回転不足と判定されたが、無難に下り、続く3回転ルッツは完ぺきに決めた。昨季までエッジの使い方が不正とみなされていたジャンプを減点なしで着氷。後半のダブルアクセル(2回転半)もしっかり跳んだ。ジャンプに集中するあまり中盤のスパイラルでバランスを崩し、最低評価のレベル1とされたものの「以前に近い感覚を取り戻すことができた。自信が少し出てきた。きょうで、1つ乗り越えられたと思ってます」。演技中も硬かった表情がようやく和らいだ。


不調の原因は今季から師事するロシア人のタラソワ・コーチの練習法と従来の方法とのズレだった。荒川静香ヤグディンら五輪金メダリストを育てた同コーチの練習は短時間集中型。これまで1日8時間近く氷上にいた浅田にとって、3時間の練習で合わせる調整法には戸惑いがあった。フランス杯後はロシアで急きょ5日間の合宿を敢行。タラソワ・コーチに「まずは跳ぶこと。気持ちを強く持っていきなさい」とカツを入れられ、ジャンプだけの練習に集中して感覚を取り戻した。


29日はフリー。2位以上ならGPファイナル出場が決まるが、守りに入る気はない。国際大会では女子で初めて2度の3回転半ジャンプに挑む。「そのために練習してきているので。攻める気持ちを忘れないで、ミスなくやりたい」。苦境を乗り越えた女王は力強く宣言した。


スポニチ 2008年11月29日)



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