初期伊万里展 −素朴と創意の日本磁器−

caltec2008-06-01



渋谷にある戸栗美術館にて「初期伊万里展 −素朴と創意の日本磁器−」を見る。渋谷の高級住宅街、松涛にある美術館と言うと「松涛美術館」しか知らなかったのだが、実はその近くに今日訪れた戸栗美術館があった。


先日行った出光美術館の「柿右衛門と鍋島 ―肥前磁器の精華―」展でも触れられていたが、柿右衛門様式や鍋島様式が確立する前の様式が、今回戸栗美術館で展示されている「初期伊万里様式」だ。


同美術館のHPによると

初期伊万里とは


日本における磁器の誕生は、16世紀末の文禄・慶長の役で出兵した大名が朝鮮人陶工を伴って帰国し、磁器の技術がもたらされたのが契機と考えられています。17世紀初頭に佐賀県有田周辺で日本初の磁器が生産され、伊万里港から各地へ搬出されたため「伊万里焼」と呼ばれるようになりました。伊万里焼の草創期である1610年代頃から、色絵磁器の誕生という技術革新を迎える1640年代〜50年代頃までの作品を「初期伊万里」と総称します。酸化コバルトを含む絵具「呉須(ごす)」で文様を描き、その上に釉薬を掛けて焼く染付という技法を中心に皿や鉢、水指などがつくられました。伊万里焼は初めは陶器と同じ窯で焼かれた例もありますが、寛永14年(1637)に鍋島藩によって窯場が整理統合され、磁器専門の窯ができて本格的に生産されるようになります。染付の色が一定しなかったり、器形が歪んでいたり、陶工の指の跡が残っていたりと技術的には未完成ですが、素朴であたたかみのある味わいや未完成ゆえの面白みが魅力となり、茶陶もつくられました。


絢爛豪華な古九谷、朱色が特徴的な柿右衛門様式、そして洗練された文様美の鍋島様式。こうした様式が確立される前の初期伊万里様式はとてもシンプルで素朴なものだ、というのが本展覧会をみた感想だ。


HPにも書かれているように、染付けが主体で、朝鮮や景徳鎮の影響を多分に受けているというのが初期伊万里の特徴。

初期伊万里朝鮮人陶工の手による磁器焼成だったため朝鮮の技術が使われましたが、当時の日本で求められていたのは中国・景徳鎮窯の染付磁器でした。染付に必要な呉須は中国からの輸入が主で、意匠には龍や鳳凰水墨画風のモチーフなど中国風の文様や、幾何学文様の「祥瑞(しょんずい)」を写したものが多く描かれていますが、その表現は中国磁器のきっちりした文様とは違い、おおらかで飄逸な風情があります。また、中国や朝鮮のやきものには見られない和風の文様や、染付だけではなく数種類の釉薬を掛け分けて色を表した作品もつくられました。中国磁器を目標に、朝鮮から来た陶工たちによってつくられ、さらに和様の意匠へと展開していった伊万里焼草創期の作品群を、朝鮮や中国の影響と日本の独自性、技術発展の変遷など歴史的背景をも視野に入れて展示いたします。


今回展示されていた中では、「祥瑞(しょんずい)」のものが見ごたえがあった。絢爛豪華な輸出用の陶磁器もいいが、初期伊万里のような素朴な陶磁器もまたいいものだなあ、と思いを新たにした。


また、6月29日からはより「古伊万里展―いろゑうるはし」を開催するようなので、2つの様式の違いを比べるのもおもしろいかもしれない。


企画力  :★★☆☆☆
展示方法 :★★☆☆☆
作品充実度:★★★☆☆
満足度  :★★★☆☆