生誕120年記念 色彩のファンタジー シャガール展

caltec2007-11-16



上野の森美術館にて「生誕120年記念 色彩のファンタジー シャガール展」を見る。個人の画家の展覧会の場合、その画家の画風の成立の過程や、画風の変遷がわかるよう、幼少期から晩年までの作品を扱った展示内容のものが多いが、本展はそうした趣の展覧会とは違っている。出展作品の大半が彼の版画作品であり、それと共に写真家イジスの撮影した写真も展示されている、という内容になっているのだ。


公式HPによると。。。

本展では、シャガールリトグラフの最高傑作ともいわれる《ダフニスとクロエ》やシャガールの版画世界がより大きな広がりをみせた木版画《ポエム》や《サーカス》、《聖書》、《アラビアンナイトの四つの物語》の5つのシリーズ合計222点と、愛や生命への賛歌を奔放な描線と、踊る色彩で幻想的に描いたシャガールの絵画17点を一挙に展示します。また、画家と交遊のあったリトアニア生まれの写真家イジスが優しい眼差しで撮影したシャガールの制作風景や素顔などの写真約100点を特別公開し、知られざるシャガールに迫ります。


つまり、本展覧会で見られるのは絵画というより、物語画家、デザイン画家、版画画家としてのシャガールの画風と、限定された色彩を用いながらも独特の世界観を確立したシャガールの、その色彩感覚に大いに触れることができる展覧会なのである(少なくともcaltecはそういう印象を受けた)。そういう意味では、表題の「"色彩のファンタジー"シャガール展」とは、上手いネーミングであると思う。


5つの版画作品は、シリーズのほとんどが展示されていることもあり、見ごたえ十分であった。その中で印象に残ったのは、やはりシャガール独特の色使い(「ダフニスとクロエ」)と、彼のデザインセンス(「聖書」と「アラビアンナイトの四つの物語」)。特にダフニスとクロエの作品の中の、グレーとブルー・ピンクの組み合わせの幻想的な美しさが印象に残った。


シャガールという画家の全貌を明らかにする、というよりは、彼の残した版画作品の作風、およびイジスの撮影した写真から窺い知れるシャガールの人となりに迫ろうというのが、本展覧会の目指したところだと思う。そういう意味ではきちんとした評価を残した展示内容であるように思えた。


最後に、本展覧会の版画シリーズを鑑賞するあたり、聖書の内容や、物語(ダフニスとクロエ、アラビアンナイト)を知っていると、より一層楽しめると思うので、代表的なエピソードだけでもいいので、事前学習してから望むことをお勧めします。


企画力  :★★★☆☆
展示方法 :★★★☆☆
作品充実度:★★★☆☆
満足度  :★★★☆☆