ルドンの黒

caltec2007-08-19



Bunkamura・ザ・ミュージアムにて「ルドンの黒」展を観る。


ルドンというと、幻想的な世界をパステルのやわらかい色彩で描く象徴派の画家だとばかり思っていたのだが、今回の「ルドンの黒」展は、そんなルドンの印象を大いに覆されるものだった。

ボルドーに生まれたオディロン・ルドン(1840−1916)はその2日後には里子に出され、親兄弟と別離し、殺風景な荘園が広がる親戚の老夫婦に育てられるなかで次第に心を閉ざしていきます。逆に、現代にも通じる普遍性はここにあるといえるでしょう。


その心の闇は、黒という色彩で彩られることになります。植物学者クラヴォーを通じて知った顕微鏡下の不思議な世界や、彼から導かれたエドガー・アラン・ポーフロベールなどの怪奇な物語との出会い、そして放浪の版画家ブレスダンを通じて学んだ版画の魅力と想像力の重要性―。そしてその闇はいつしか、多くの異形の者たちが住まう魅力的な王国へと変貌を遂げていったのです。


本展は岐阜県美術館の世界的に有名なルドンの素描と版画のコレクション200点により構成され、美術史上きわめてユニークな「黒の世界」を堪能できる稀有な機会となることでしょう。


こうした黒の時代を経た後、ルドンはパステル主体の、幻想的な世界へと発展していくのだが、どちらの世界においても幻想的・空想的な世界に支えられているところは共通している。今まではただ美しいと思っていたルドンの世界だが、その裏には本展覧会で見られるような黒の世界があることを知った後で、彼のパステルがを再び眺めてみると、また違って見えてくるから不思議だ。


企画力  :★★★☆☆
展示方法 :★★☆☆☆
作品充実度:★★☆☆☆
満足度  :★★☆☆☆