東京タワー

caltec2006-04-07



映画「東京タワー」を観る。同名の江國香織の小説を基にした映画だが、小説の内容に沿って映画化したというよりは、小説のいくつかのエピソードと設定を拾い上げ、映画用に物語を再構築した、というのが正直な感想。


江國独特のおぼろげでアンニュイで現実感があまりない小説の世界を、映像化によりリアル化しなければいけないので、いろいろな苦労もあったと思うのですが、僕は映画版のラストやストーリー展開は良かったと思います(小説の世界を体言していたか、といわれると疑問は残るとは思いますが)。


脚本は監督である源孝志と共に中園ミホ、そして音楽は溝口肇。この2人を起用したことで、台詞のリアリティさだとか、ちょっと廃頽的な空気を醸し出す音楽だとかを映画に与えることに成功していて、それがこの作品のクオリティを上げていたと思います。


出演者に関しては、僕が小説から受けた登場人物の印象に近いキャスティングをされていた人がいなかったのですが、(小説中の喜美子とは全く違う印象を受けた)寺島しのぶが強烈に印象に残りました。小説では全く描かれていなかった喜美子の生活(耕二と会っている以外の生活)がこの映画の中ではかなり描かれていて、喜美子自体にリアリティが増していたこともあるのかもしれないのですが、この映画の中で唯一「生きているな」と実感できたのが寺島しのぶ演じる喜美子でした。


詩史役の黒木瞳、透役の岡田准一の演技や、映像・音楽からは、小説から受けた印象と同様、夢物語的な印象を受けたので寺島しのぶ一人目立ってしまったのかもしれません。特に彼女が耕二に車をぶつけ、別れの台詞のタンカをきり、去るところなどは良かったです(ここら辺は、全くの映画オリジナルストーリーですが)。


江國小説を映画化するのは、結構難しいですよね。おそらく観客としてのターゲットも彼女の小説のファンである女性だと思うので、女性客が共感できるキャスティングをしなければならないので。美形で演技力もついてきて、年上の女性に人気がありそうな岡田准一、女性の反発も買わなそうでかつ年上の女性のかわいさとかも演じられる黒木瞳というキャスティングは、そういう観客層への配慮もあってのものなかなあ。松潤のキャスティングは、僕的には「?」なのですが、岡田君とのバーターではないですよね?もうちょっとお調子者でそつなくこなすタイプのキャラの人のキャスティングの方が良かったとは思います。


しかし、時折登場する「東京タワー」。きれいでした。