スケート連盟に不透明支出 赤字1.5億円


文部科学省所管の財団法人「日本スケート連盟」(東京都渋谷区)が、フィギュアなどの国際大会を運営する国際事業部門で03年までの3年間に不透明な資金管理で1億5000万円以上の赤字を出し、資金難に陥っていることが関係者の話でわかった。赤字を出した時期は、当時会長だった久永勝一郎氏(74)がこの部門を自分が経営していた会社事務所内に移し、資金管理も連盟本部とは別にして運営していた。連盟は外部の専門家を交えた調査委員会を近く発足させ、解明に乗り出す方針。


関係者によると、久永元会長は98年7月から04年6月まで連盟会長。就任後に国際事業部門「国際事業委員会」を連盟本部から、自分が98年6月から代表取締役を務めていた健康用品販売会社があった豊島区のマンションの一室に移転させた。新たに職員2人を採用し、事業委の資金管理も連盟本部とは別扱いにしていた。


内部資料によると、事業委は移転後、02年の世界フィギュア長野大会や国際スケート連盟京都総会などを運営。03年6月までの3年間の支出は約21億3000万円に上り、1億5000万円以上の赤字を出した。


連盟では剰余金を取り崩す事態に追い込まれ、98年の長野五輪後に預貯金など5億3000万円あった財産は、03年6月までに1億8800万円に急減。昨年6月期の決算でも2億2800万円にとどまっている。


連盟関係者によると、財産減少の原因は、事業委自体の赤字に加えて、事業委の甘い収益見通しに沿って予算を多めに組んだためという。連盟は資金不足を補うため銀行から融資を受け、連盟が負担していた世界選手権派遣費用の一部も選手側に負担させるようになった。


久永元会長の会社は、事業委の事務局をマンションに間借りさせた家賃として、04年までの約6年間に毎月25万円、計約1700万円を連盟側から受け取っていた。


登記簿謄本によると、この会社は97年8月の設立で、トリノ五輪のフィギュア監督を務めた城田憲子・フィギュア強化部長(59)も設立時から取締役を務めていた。


マンションは同年7月に城田部長名義で購入されたが、久永元会長は「購入資金は自分で出した」としている。


久永元会長は、この賃貸借契約を連盟理事会に報告せず、00年に連盟の公認会計士から「久永会長の関連する会社なので誤解を受けないように」として、理事会への報告、承認が必要と文書で指摘された後も、理事会に契約内容を説明していなかったという。


久永元会長は「健康上の理由」として04年6月に連盟会長を辞任。同年11月には会社の代表取締役も辞めた。城田部長は05年3月まで取締役だった。事業委事務局は04年秋に連盟本部に戻った。


久永元会長は朝日新聞の取材に対し、事業委の赤字について「長野五輪まで強化費をどんどん使ったが、その後も同じように使ったのが原因」とし、会社の家賃収入については「国際事業委員会は連盟と別会計で、賃貸借契約も会社と事業委で結んだ」と話している。


城田部長は、取締役就任やマンション所有について「久永さんを信用し、頼まれて名義を貸しただけ。会社のことは何もわからない」としている。


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〈キーワード:日本スケート連盟〉フィギュア、スピードスケート、ショートトラックの普及・振興を目的として設立。04年度は国などから強化費として約1億6000万円の補助金を受けた。毎年、全日本選手権やNHK杯国際フィギュアなどの大会を開催するほか、海外大会への選手派遣や国内外で強化合宿を行っている。久永元会長は98〜02年、国際スケート連盟副会長を兼任し国際フィギュア部門の最高責任者だった。城田部長は、98年長野、02年ソルトレーク、06年トリノの各五輪で日本選手団フィギュア監督。


2006年03月12日10時06分(朝日新聞