ユトリロ展

caltec2005-10-08



ユトリロ展@日本橋高島屋に行く。
バブルの崩壊と、その後押し寄せる百貨店不況により、続々と百貨店の美術館が潰れていて、なかなか百貨店で美術展を見ることが少なくなってきた昨今の日本(特に東京)の美術事情ですが、ユトリロ没後50周年を記念するこのユトリロ展は、全国の高島屋を巡回していくようです。なかなかやりますね、高島屋さん。


さて、肝心の展覧会の内容ですが、ユトリロの絵=白の時代(1910〜1914に描かれた絵)の絵と言っても言いくらいで、この時代の作品がユトリロの絶頂期だった、というのが本展覧会を見てよくわかりました。
本展覧会の作品の多くは、色彩の時代(1915〜)なのですが、明らかに白の時代の作品の方がいいのですよ。風景はパリの街角(モンマルトルが多い)。画面には人物は登場せず、鈍色の空の下にくすんだ白い漆喰の壁の建物が佇んでいる。どことなく寂し気であるのだが、見ていると何故か心落ち着く。そんな魅力がユトリロの絵にはあると思うのですが、色彩の時代になると、そういったユトリロらしさは影を潜め、彼の絵が深みのない、ただのスケッチに思えてきてしまうのはなぜでしょうか?


今まで見てきたユトリロの作品がほとんど白の時代のものが多かっただけに、今回のユトリロ展での色彩の時代の作品は、僕にとっては大きな驚きでした。(実は、恥ずかしながら、色彩の時代のユトリロ作品をほとんど知らなかったので)

他の多くの作家の傑作が晩年の作品であるのに対し、ユトリロの場合は、傑作は若い頃の作品であり、晩年はその輝きを失ってしまった、という事実にも実は驚いたのでした。


母であるヴァラドンルノワールドガなどの印象派のモデルをつとめた)から十分な愛情を得る事のなかったユトリロが、絵を描くことで母親とつながろうとする。その想いが白の時代の絵に表れているのかもしれないですね。意外にも、白の時代の絵に人気が出て、第二次大戦後、ユトリロは人気画家になっています。そして人気がある=高値で売れるということで、絵画の大量生産マシーンと化していく、それらの作品が色彩の時代の作品になるわけですが、この時代の作品になると、やはりユトリロらしさ、というか、寂寥感と安堵感が入り交じったあの不思議な白の時代の深い精神性をたたえた作風はすっかり影を潜めてしまうのです。。。


満足度:★★★☆☆