はるがいったら


お正月だというのに、することがなく、読書三昧。今日は飛鳥井千砂の『はるがいったら』を読み終える。 実は「王様のブランチ」で紹介されていた飛鳥井千砂の『タイニー・タイニー・ハッピー』を読みたいなと思っていたのだが、彼女のデビュー作である本作を読んでから『タイニー・タイニー・ハッピー』を読んでみようと思い、まずはこの『はるがいったら』からとなった。


はるがいったら (集英社文庫)

はるがいったら (集英社文庫)


『はるがいったら』は漢字にすると『はる(飼い犬の名前)が逝ったら』となり、親が離婚して別々に暮らしている姉「園(その)」と弟「行(ゆき)」を中心に彼らの日常生活を取り巻く人間関係が、はるが逝く日までの間、描かれている作品。


読んでみてまず思ったのは、当然のことながら女性の書く小説だな、ということ。ちょっとした表情や台詞に、その登場人物の感情が込められていたり、人間性や相手との関連性が見て取れる、そうした「感情や関係性」を重視する、というのは女性作家ならではのもの。物語りも「はるが逝く」というエンディングに向かって進行してはいるものの、男性作家に見られるような、ゴール(大団円)に向かって駒を進めていくという、ストーリー主体の話でもないような印象を受けた。


そして、彼女の描く人物は、皆、「本来、他人には隠したくなるような感情」「欠点といわれる部分」を文中で惜しげもなく晒している点が、特徴的だ。登場人物をより魅力的に描くならば、「明」だけではなく「暗」の部分も描く必要があるかとは思うが、ここまで執拗に「暗」「負」の面を描かなくてもいいのになあ、特に女性特有のいやらしい面をそこまで描かなくても物語としては成立するのになあ、、と思いながらこの作品を読んだが、その負の面をも描ききってしまうことが作家飛鳥井千砂の特徴なのかな、とも感じた。



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