caltec2009-01-16



今日のニュースは、この話題で持ちきりでした。


映画のような本当の話。すごいです。

米旅客機、NYの川に不時着 2邦人含む全員救助


【ニューヨーク=真鍋弘樹、村上尚史】


15日午後3時半(日本時間16日午前5時半)ごろ、米ニューヨーク市のマンハッタン西側を流れるハドソン川に、USエアウェイズ1549便(乗客150人、乗員5人、エアバスA320型)が不時着した。同機は機体の姿勢を維持したまま着水に成功し、全員が救出された。ニューヨーク州のパターソン知事は緊急記者会見で「ハドソン川の奇跡」と呼び、関係者の事故対処をたたえた。


この便はニューヨーク・ラガーディア空港発ノースカロライナ州シャーロット行き。米連邦航空局(FAA)は、航空機のエンジンに鳥の群れがぶつかったこと(バードストライク)による事故の可能性が高いとみており、国家運輸安全委員会が調査チームを現場に派遣した。


CNNなどによると、離陸から数十秒後、機長が航空管制当局に「ダブル・バードストライク」を通報した。エンジン2基が停止した時は上空900メートル付近。機長は、最寄りの空港までの飛行は無理と判断し、ハドソン川に沿って下降。無事に着水、停止させた。離陸から着水までの時間は5分前後とみられ、ラガーディア空港からの直線距離は約11キロの地点だった。


着水直後、沿岸警備隊や民間フェリーなど多数の船舶が救助に向かい、機内から救命胴衣を身につけ、次々と脱出する乗客らを運んだ。機体は部分的に水没したが、数十分以内に全員救助された。


消防当局によると、半数程度の乗客が病院に運ばれ、低体温症や打撲などの手当てを受けたが、足を骨折した人がいる以外に重傷はないという。ブッシュ米大統領は「乗務員の英雄的な行動と救助関係者の尽力に感激した」との声明を出した。


朝日新聞 2009年1月16日12時2分)

エンジンからパチパチ、乗客「もうだめかと」米機不時着


【ニューヨーク=村上尚史】


摩天楼の真横を縫うように下降し、無事着水した乗員乗客155人乗りの旅客機。ニューヨークで起きた不時着事故は、一歩違えば大惨事を招くところだった。ニューヨーク州知事らが「奇跡」と呼んだ事故の体験を、乗客たちが凍えるような冷気の中で報道陣に語った。


ラガーディア空港から機体がふわりと飛び立つと、フレッド・ベレッタさんは仮眠をしようと目を閉じた。しばらくすると、左翼のエンジン付近から異音が聞こえてきた。パチパチという音がしたと思ったら静かに。やがて何かが噴き出すような音がした。


座席は16列目の左翼側の窓側。ベレッタさんは「窓の外を見ると、エンジンから煙が出ていた。火が出ているようにも見え、そのうち煙のにおいがしてきた。周りには祈りをささげる人もいた。私ももう死ぬかと思い、いろんなことが頭に浮かんだ」。


別の座席にいたアルベルト・パネロさんは「爆発音の後、機体がものすごく揺れた。みんな、どうしようもない何か悪いことが起こったと確信していたと思う」。機体が大きく旋回すると、泣き出したり、声にならない叫び声を上げたりする乗客もいたという。


乗務員から詳しい状況の説明はなかった。だが、機長から「衝撃への用意を!」というアナウンスが入ると、機内は一瞬で静まった。フロリダ州の20代の男性は「どんどん高度が低くなり、水面が近づいてきた。もうだめかと思い、恐怖でふるえていた」。


デビッド・サンダーソンさんは「川に着水するしかないことはわかっていた。機長のアナウンスの後、機内に大きなパニックはなかった」。不時着時、衝撃があり、頭を軽く打った。他の乗客たちによると、「自動車に乗っていて何かに衝突し、前後に激しく揺さぶられたような感じだった」という。


機体は後部から着水した。最後部付近に座っていたビリー・キャンプベルさんは「尾部が左右に揺れて、1回転するような感じだった。機体がバラバラになるかと思った。水が一気に流れ込み、20〜40秒で腰のあたりまでつかった」。後部の脱出口は開かなかったが、乗務員の案内で乗客は混乱なく左翼付近の非常口から脱出したという。


操縦士らと同じボートで脱出したキャンプベルさんは「彼らに何度も感謝の言葉を伝えた。命を救ってくれてありがとう、といって握手したよ」と語った。


朝日新聞 2009年1月16日11時35分)

奇跡の米機不時着「衝撃へ用意を」 元空軍の機長、冷静


気温、零下6度。厳寒のハドソン川に不時着したUSエアウェイズ機。死者・行方不明者ゼロという「奇跡」を米連邦航空局や航空会社の発表、報道などから再現した。


■操縦士の判断


USエアウェイズ社によると、同機がニューヨークのクイーンズ地区にあるラガーディア空港を離陸したのは午後3時26分ごろ。直後にガンの一種とみられる水鳥の群れに遭遇した。


管制記録によると、サレンバーガー機長(57)は「ダブル・バードストライクだ」と管制に報告。左右両翼についたエンジンが同時に鳥を吸い込んだとみられる。乗客の証言では機内に衝撃音が響き、煙のにおいが立ちこめたという。


北へ向けて離陸した同機は、高度を落としながら大きく左旋回し、ブロンクス地区とマンハッタン島の北部上空を横切り、ニュージャージー州に近づく。管制官は、最寄りのニュージャージー州の小規模空港に着陸を指示。それが最後の交信だった。機長は、最終的にハドソン川に不時着することを決断する。


川幅は1キロほど。右はニュージャージー州の住宅街、左側は高層ビルが林立する人口密集地のマンハッタンだ。機長は元空軍戦闘機の操縦士で、同社に転職後は29年間、国際線も担ったベテラン。その冷静な判断と操縦が惨事を防いだとみられる。


■迅速な救助


目撃者によると、同機は普通の着陸のようにゆっくり着水した。「衝撃へ用意を!」と機長が機内放送した直後のこと。ある乗客は「最初はパニックが起きた。乗客の誰かが落ち着けと叫び、みな無事救出されると考えて落ち着き始めた」と語った。


ハドソン川の水温は2度近くまで下がっていた。乗客らが長時間水中に投げ出されていたら、凍死者が出た恐れがあった。着水直後、10分もたたないうちに、沿岸警備隊の救助艇がマンハッタン、ニュージャージー両岸から現場水域に急行した。


現場に真っ先に着いたのは、サークルラインと呼ばれる2階建ての観光船だった。さらに市消防局の消防船や市警のヘリコプターなどが急行。現場が都会だったことが逆に、迅速な救助態勢をもたらした。


機体のドアから女性や子どもたち、老人が先に避難。水面にぎりぎり浮かぶ機体の両翼に、足元を水につけながら数十人の乗客が立ち、冷静に並んで救命ボートに乗り込んだ。機長は最後に2回機内を歩き、残った人がいないことを確認して避難したという。


機体が水没した午後4時半ごろには乗員乗客全員が避難を終えていた。
(ニューヨーク=真鍋弘樹)


朝日新聞 2009年1月16日12時34分)

日本人乗客 着水「生きている」、浸水「沈むのか」


【ニューヨーク=真鍋弘樹】


避難しようとした足元に、川の水が――。ニューヨークで15日、ハドソン川に不時着したUSエアウェイズ便に乗り合わせた日本人会社員、出口適(かなう)さん(36)が、事故に遭遇した恐怖の数十分間を詳細に語った。


離陸してまもなく、出口さんの耳に、後方からドーンという音が聞こえた。座席は後ろから3番目の通路側だった。


客室乗務員が周囲を見回している。焦げ臭いにおいが漂い始めたと思ったら、他の乗客たちが「火が出ている」と騒ぎ始めた。不安になったが、テロとは思わなかった。


飛行は安定しており、機長のアナウンスで記憶に残っているのは「衝撃に準備を」という言葉だけだ。


窓から、マンハッタンのビルが見え始め、高度が下がっていることがわかって頭の中が真っ白になった。前の座席に手をかけてかがみ込んだ。


着水の瞬間、意外にも、少々乱暴な着陸ぐらいの衝撃しか感じなかった。「現実の世界とは思えなかったが、生きていると感じた」。だが、本当の恐怖はそれからやってきた。


機体後方から、すぐに機内に水が入ってきた。足元がぬれ始める。機体と一緒に川へ沈むのか――。機内は大混乱に陥り、席を乗り越えて非常口へ殺到する乗客もいた。機外に出るまで、5分か10分ほどかかっただろうか。


ようやく主翼脇の非常口から出て、主翼の上で救助の順番を待った。ひざ近くまで水に漬かり、体はかじかんでいたが、助かったという実感がわいた。座席4人分ほどの小さなボートに20人ぐらいが乗り込んだ。結局、持ち出せたのは、財布と携帯電話だけ。愛用のパソコンは、川に沈んでいった。


上司の瀧川裕己さん(43)の席は離れており、顔を合わせたのは救助されて事情聴取も終わってからだった。お互い、無事を喜び合った。


「機長には本当に感謝している。彼が判断を一歩間違えただけで、大惨事が起きていただろう」。今後、飛行機には乗れますか、と尋ねると、「再来週にさっそく次の出張が入っています」と苦笑いした。


朝日新聞 2009年1月17日3時1分)



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