コロー 光と追憶の変奏曲 展

caltec2008-08-09



お盆休みでごった返す上野公園に向かい、国立西洋美術館にて「コロー 光と追憶の変奏曲」展を見る。(思ったより本展覧会は混んでいなかった。狙い目です!)


同美術館のHPによる、本展覧会の概要は以下の通り。

19世紀フランスの画家カミーユ・コローが生み出した数々の詩情あふれる風景画や人物画は、これまで世界中の芸術家や美術愛好家たちを魅了してきました。本展は、ルーヴル美術館所蔵のコローの代表作群を中心に、初期のロマン主義的風景からレアリスムの時代、霧に煙る夢想的な後期の画面、そして繊細な人物画の数々を集大成し、コロー芸術の魅力と秘密を再検証するものです。また、世界でもはじめての試みとして、印象派からキュビストまで、コローの芸術に深い影響を受けた画家たちの作品をあわせて展示いたします。


コローというと、「モヤっとした作風の、緻密な絵を描く画家だな」という印象しかなかったが、本展覧会で一連のコロー作品を見て、コローの持つ良さを初めて実感できた。


その良さとは、一枚の絵画の中の調和、そして「物語」がそこに存在し、絵画の世界観に広がりがある点だと思う。


グレーがかかってモヤがかかったように見えるコローの絵。人目を引く印象派の絵が隣にあると、ふと一見して通り過ぎてしまいがちだが、コローの絵の前にたたずみ、じーっと作品を見て対峙する。。。そうすると、霧が晴れ、コローの描く絵画の世界に引き込まれていく自分を発見することが出来る。そして、目の前に広がる絵の世界に入り込むと、そこにはある世界が広がっているのだ。


馬に乗り帰途に帰る男。その男と何やら大声で話をする赤ん坊を抱いた女性。絵の右端では女性が2人、立ち話に興じている。。。 農家の庭先では鶏が餌を食べ、家々の煙突からは夕食を用意しているであろう煙が立ち上る。。平和な村の何気ない夕刻の風景がそこには広がっている。


人物を配することで一枚一枚の絵にストーリーが生まれ、それがコローの繊細で緻密な描写と相まって、まるでそこに別のもうひとつの世界が存在するかのような錯覚すら覚えてしまうのだ。霞がかったグレーな色調も、水辺の湿気を含んだひんやりとした大気を表現しているとも思え、現実に目にする風景に近いという印象すら覚えてしまうから不思議だ。


コローの絵が一同に会した本展覧会、コローの画風の特徴を知るにはいい展覧会だし、あわせて展示されているルノワールピサロ、モネの作品をコロー作品を比べることで、同時代のコローの位置付けも理解できるように構成されている、なかなかの良企画な展覧会だと思う。


企画力  :★★★☆☆
展示方法 :★★★☆☆
作品充実度:★★★★☆
満足度  :★★★★★