2008年7月



とても楽しい本だった。


レプッブリカ広場、ドゥオーモ、ポンテ・ヴェッキオなど、フィレンツェの名所を各章で取り上げ、その場所にまつわる歴史、そしてフィレンツェ市民としての暮らしからの経験談、文化論などを、読みやすく丁寧に解説してくれるのが本書だ。


旅行のガイドブックの類には、①「見所紹介」的なアトラクション向け本か、②「歴史」や「芸術」のウンチクを滔々と述べる、読みづらい本のいずれかに偏る場合が多いが、本書はそうしたことなく、文化論とも、外国滞在記とも、フィレンツェのガイドしても読めるから3度おいしい。


サンタク・ローチェの章では以下の件がでてくる・・・

もちろんサンタ・クローチェはサンタ・クロースとはまったく関係がない。サンタ・クロースは聖ニコラウスという聖人のことなのだ。それに、イタリアでは子供たちにプレゼントを運んでくれるのはサンタ・クロースではなく、箒にまたがって空を飛ぶファーナという醜い魔女のようなおばあさんなのだ。


(中略)


トナカイの引くソリに乗ったサンタ・クロースというのは北方のプロテスタントの国々から生まれたものだろう。ついでに言えば、クリスマスツリーもイタリア本来の習慣ではない。モミの木などないのだから。


(中略)


冗談はともかく、サンタ・クローチェというのは聖十字架、つまりキリストがゴルゴだの丘ではりつけになったときに使われた気の十字架のことで、サンタ・クローチェ教会いはその一部が大切に保存されている(はすである)。


この本を読むまで、サンタ・クローチェは、サンタ・クロースと同一だと思っていた人が、ここにも一人。。。


しかし、こうした我々日本人が陥りがちな、キリスト教に関する誤解もさらっと読者に提供してしまうのはすごいなあ、と各章の記述を読むたびにうなっているcaltecでした。 イタリアやフィレンツェに興味のある方は、一読することをお勧めします。