日米対抗フィギュア2007

caltec2007-10-07



今年の日米対抗フィギュアは日本での開催。男女ともにアメリカの勝利という結果に終わった。女子に関しては、安藤・浅田・村主という布陣で望んだ日本チームが、若手中心の米国チームに僅差であれ負けたという点がちょっと残念だった。


本大会を見て感じたのは、世代交代は確実に起こっているという点と、女子シングルはアジアの時代になったという点だ。


米国の出場選手はレイチェル・フラットを除く3人は皆アジア系(キャロライン・ジャン、ベベ・リャン、長洲未来)。去年の世界ジュニアの1位(キャロライン・ジャン)・2位(長洲未来)、そして一昨年の世界ジュニアチャンピオンのキム・ヨナ、2年前の世界ジュニアチャンピオンの浅田真央。この4人がバンクーバーを担う女子の中心選手になると言ってもいいかもしれない。今回キャロライン・ジャンの演技を始めてみたが、その柔軟性、スピンの独創性、表現力の豊かさには目を見張るものがあった。今年の世界選手権での米国代表として出場してくると浅田真央の強力なライバルとなると思う。


かつてはアジア人である、というだけでセカンドマーク(芸術点)を低く抑えられる傾向にあった、ということだが、クリスティ・ヤマグチがフィギュア大国アメリカの第一代表となってから、その傾向はなくなったように思う。この10年間の世界チャンピオンを見ても、ほとんどがアジア系だ。


若い選手を見て思うのは、その柔軟性の高さとスピンの多彩さ。旧採点ルールと新採点ルールでの重点の置き方の一番の違いは、新採点ルールでは柔軟性が重要視されている点だと思うが、若い選手はそのあたりの対応も十分で、旧採点ルール世代の村主選手の演技と、ジュニア上がりの選手の演技構成をみると歴然とした差があったのは事実だ。


かつての力強く(ジャンプ)かつ美しいフィギュアスケートではなく、新体操のような柔軟性重視へと変貌を遂げた現在のフィギュアスケートの演技は、20年来フィギュアを見続けてきた者にとっては、全く違ったスポーツになってきたなという印象を受ける。言い方は悪いが、曲芸的な要素が強くなってきているように思う。
「昔は良かったなあ」と思ってしまうのは、歳を取った証拠なのかなあ。。。


男子は全体的にミスが多く、個人的な収穫は、エキシビションのときに疲労された高橋大輔の今シーズンのショートプログラム。あの演技を大会でビシッと決められたら、どれくらいの点数がつくのだろう?と今から楽しみだ。


大会結果

<男子>
日本:total score:334.48
米国:total score:362.81

高橋大輔(FS)122.83、南里康晴(SP)51.07、中庭健介(SP)58.24、町田 樹(FS)102.34
ジェレミー・アボット(FS)116.96、ジョニー・ウィア(SP)73.90、ライアン・ブラッドリー(SP)49.56、ステファン・カリエール(FS)122.39


<女子>

日本:total score:284.90
米国:total score:289.00

村主章枝(FS)90.15、 浅田真央(SP)60.42、安藤美姫(SP)46.54、水津瑠美(FS)87.79、
ベベ・リャン(FS)92.48、キャロライン・ジャン(SP)56.78、レイチェル・フラット(SP)53.78、長洲未来(FS)85.96

フィギュアスケート:日米対抗大会 日本、男女とも敗れる 仕上がり遅く、ミス続出


国際スケート連盟(ISU)公認のフィギュアスケートの国際競技大会、日米対抗が6日、新横浜スケートセンターであり、男女とも日本は敗れた。


世界女王の安藤美姫トヨタ自動車)、世界選手権2位の浅田真央(愛知・中京大中京高)、村主章枝(avex)、水津瑠美(東京・駒場学園高)で構成した日本女子は、安藤がジャンプ転倒で演技を一時中断し、村主も2度転倒するなどミス続出で合計284・90点。世界ジュニア選手権1位のキャロライン・ザン、同2位で日本人の両親を持つ長洲未来の14歳コンビのいる米国は合計289・00点だった。


日本男子も世界選手権2位の高橋大輔(関大)、南里康晴中村学園大)、中庭健介(パピオク)、町田樹(岡山・倉敷翠松高)の全員が演技に失敗し、合計334・48点。トリノ五輪5位のジョニー・ウェアらの米国は合計362・81点をマークした。


◇着氷何度も乱れる

フリーの演技をした高橋は、冒頭の4回転トーループでステップアウトして後ろ手をつき、再び挑んだものの転倒。その後もジャンプで3回続けて着氷が乱れた。


「シーズン初めで滑り込みが足りない」と苦笑しつつも「(体力的に)4回転ジャンプを2度入れられると実感した」と手応えも感じた様子。スピンの柔軟性など課題が多いことも認めたうえで、今季の目標を「世界選手権の優勝」と力強く言い切り、表情は明るかった。


◇右肩の痛み再発、安藤無理できず

世界女王の安藤、浅田、村主と世界トップ級をそろえた日本に対し、米国はザン、長洲の14歳コンビが中心。負けるはずがなかったが、まさかの結果になった。

安藤は冒頭の3回転ルッツで転倒し、演技を一時中断。前夜の練習で転倒した際に古傷の右肩の痛みが再発していた。「痛くて無理できない」と、スピンは無難な姿勢しか取れず、3種類とも最低のレベル1。ショートプログラム(SP)を滑った4人の中で最低の46・54点に沈んだ。


浅田は3回転フリップの後の連続ジャンプを入れず、「フリップの後に迷ってしまった。他の部分も練習よりもいい演技ができずに残念」と笑顔はなし。村主も2度転倒などミスが相次いだ。


今季開幕戦で仕上がりの遅さが目立つ日本勢。村主が二つのスピンでレベル4を取り、新採点方式対策に一定の成果を上げる収穫もあったが、安藤と村主は「みんなの足を引っ張ってしまった」と反省する。10月下旬開幕のグランプリシリーズに向け、一抹の不安が残った。


【来住哲司】(毎日新聞 2007年10月7日 東京朝刊)

フィギュアスケート二重国籍の14歳天才少女…美姫、真央の「妹」? それとも強敵に?


新横浜スケートセンターで開催されていた日米対抗フィギュアスケート競技大会は7日、エキシビションが行われ、閉幕した。2日間の競技で特に輝きを放っていたのは、米国チームの長洲未来選手とキャロライン・ザン選手だ。共に1993年生まれの14歳で、2010年のバンクーバー五輪では安藤美姫選手や浅田真央選手、キム・ヨナ選手(韓国)らトップ選手を脅かす存在になるのではないかと注目されている。


長洲選手は米カリフォルニア州生まれ。今年1月に初出場した全米ジュニア選手権で優勝し、3月の世界ジュニア選手権でも2位に入るなど一躍、注目を集めた。体の柔軟性とジャンプ力は抜群で、難易度の高い技もやすやすとこなす。滑らかで美しい滑りと、音楽に合わせた表現力など、ジュニアとは思えない演技力を持つ。公式戦日本初登場となった日米対抗では、6日の団体戦こそ欧州転戦の疲れもあったためか「全然駄目だった」と本人も不満の残る出来だったが、7日のエキシビションでは体の切れが良くなり、美しいスパイラル、軸のぶれない高速スピン、さらには荒川静香選手ばりのイナバウアーを決め、会場から盛んな拍手を浴びた。


両親は日本人だが日米両国籍を持つ。このためバンクーバー五輪では日本代表選手として出場する可能性もある。あこがれはミッシェル・クワン選手と浅田選手という。安藤選手や浅田選手ら日本勢の強敵となるのか、それとも心強い「妹」となってくれるのか。


長洲選手のライバルはザン選手だ。全米ジュニアでは2位、世界ジュニアでは優勝と、長洲選手と頂点を争ってきた。確実なジャンプと並外れた柔軟性が武器で、7日のエキシビションでは、頭が腰よりも低くなるほど反り返った状態からフリーの足をつかんでビールマンスピンに移るというオリジナル技「ザン・スピン」を披露し、会場を沸かせた。今シーズンからはシニアの大会に参戦するという。


「自分の滑りを大切にして自己ベストの得点を出したい」(ザン選手)、「大人のスケーターとしてシニアでも通用する選手に」(長洲選手)と、今後の目標を語る両選手。シニアでも一層の活躍が期待されている。


【小座野容斉】 (毎日新聞 2007年10月7日)