アイドル!

caltec2007-01-08



アイドル!@横浜美術館を観る。篠山記新、草間弥生蜷川実花などのアーティストが捉えた「アイドル」(偶像崇拝)をジャンルにこだわらずに集めることにより、その時々で捉えられたアイドル像の変遷、ひいては時代の変遷を辿ろう、という意図のもとに企画された展覧会であると思う。


そして人々は「アイドル」にどんなイメージを抱くのだろう?つまり、人々が偶像崇拝する人物はどんなものなのだろう?という期待を抱いて会場に向かった。


ところが、アイドル像を探ろうという試みは、最初の展示内容を見て、見事に覆された。現代の子供たちのアイドルとして「きらりん☆レボリューション」と「オシャレ魔女 ラブandベリー」が紹介されていたのだが、この世代の子供たちに接する機会のほとんどないCaltecにとっては、かなり衝撃的な内容だった。特に「オシャレ魔女 ラブ&ベリー」のビジネスモデルが秀逸なのだ。他の展示内容よりも、Caltecの頭の中はラブべりのビジネスモデルの巧みさのことで頭が一杯になってしまった。


会場を後にして家に帰り早速ネットで「オシャレ魔女 ラブandベリー」について検索してみると、以下のことが分かった。

女子版「ムシキング」!? ラブandベリー誕生秘話


[ 2005年09月11日 00時00分 ] エキサイト


いま小学生の女の子などが行列をなしているカードゲーム『オシャレ魔女ラブandベリー』。
アイテムの組み合わせでオシャレパワーを競うゲームだが、なんと開発者はムシキング開発者と同一人物。『ムシキング』では"ブラック博士"、『ラブandベリー』のときは"ダンディ植村"として子どもたちに知られている、セガのファミリーエンターテインメント研究開発部部長・植村比呂志さんに開発のきっかけを聞いた。


「もともとセガでは、子供向けのものをあまり出してなかったんですが、ムシキングに続けてファミリー向けに何かできないかということになりまして。ただし、ムシキングとの競合をさせないために、ターゲットを女の子に変えて全く新しいタイトルを作ろうという事になりました」


実は、プリクラやUFOキャッチャーの人気もあってか、ゲームセンターにいるのは女の子のほうが多いというデータがあり、「お父さんお母さんに嫌われない、女の子向けゲーム」として考えたテーマが"オシャレ"だった。
「男の子にとっての"虫"のように、30年後も興味を失うことがないものって、女の子にとってはやっぱりオシャレでしょ?」たとえば、舞踏会に行くときにGパンはNGだが、子どもは「なんで?」と言う。そんな親子のやりとりが楽しめるのもポイントだとか。


ところで、難しいのは「オシャレ」をゲームとしてどう評価するかということだが、「カード1枚1枚には、パワーの差や当たり外れがないんです。だって、『幻のドレス』とか設定しちゃうと楽しくないし、『イケてないTシャツ』とか『ステテコ』とかのカードなんて、誰も欲しくないでしょ? オシャレはあくまでTPOと組み合わせ」と植村さん。


驚くべきは、第一弾の「オシャレアイテムと組み合わせ」を考えていたチームは、デザイナーの女性以外、6人全員男性だったということだ。


ティーンズのファッション誌をみながら、ゲキとばして、みんなで激論ですよ(笑)。普段、ユニクロしか着ないような男性ばっかりなので、『やろう好み』のオシャレになっちゃわないように、平均化させるのが苦労でしたね」
オシャレ→ディスコ→ボディコンの発想から、ボディコンカードを作る案も出たが、デザイナーから「子どもは、そんなの欲しがらない」と言われ、ボツになったこともあるとか。


ゲームでは髪、服、靴の組み合わせが悪いと「?」みたいな反応をキャラにされるが、「良い組み合わせ」はどうやって決めてるのか?


「第一弾のカード、76枚の段階では、何千マスという大きな表をつくって、総当りで点数をつけました。でも、第一回で燃え尽きた(苦笑)。天文学的な数字になるから、ムリ! 二弾目以降はソフトウェアと人手、半々で決めてます」


ちなみに、開発者である植村さん自身の「マイベスト」は、「さらさらロングのヘアに、メタリックダウンの服、星つきJ.Lo風ブーツ」とか。


「僕自身は、何と言っても露出の多いオシャレが好きですね!」


田幸和歌子

こうして生まれた セガ「オシャレ魔女ラブandベリー」


オシャレ魔女ラブandベリーの開発者、植村比呂志さん(撮影・山口暢彦)


■現実路線で母親も夢中


ヘアスタイルやドレスの絵が描かれた"魔法"のカードを本体のリーダーで読ませ、コンピューターグラフィック画面の女の子におしゃれをさせる。そして舞踏会やディスコで、ダンスをライバルと競う−。遊戯施設などに置かれたゲーム機「オシャレ魔女ラブandベリー」に、小学生や幼稚園の女の子が夢中になっている。


登場は2年前の10月。カード販売総枚数が2億1500万枚を超える大ヒットだ。カードは1枚100円で原則、ゲーム機本体にお金を入れて買う。


ラブとベリーは、登場し"対決"する少女2人の名前。「ラブは私の10歳の娘(愛さん)にあやかっています」とセガの開発チームリーダー、植村比呂志さん。一方のベリーはラブとの組み合わせの響きで決めたとか。


そもそも開発に手をつけたのは、世界のカブトムシが戦う同社のゲーム機「甲虫王者ムシキング」に続くヒットゲーム機を出したかったから。


当時、女の子向けのカードゲーム機はまだ存在せず、「うまくいくのか」という心配もあった。しかし男の子向けの「ムシキング」と競合させないため、女の子向けのゲーム機を作らざるをえなかったのだという。ちなみに「ムシキング」の開発も植村さんだ。


「実際にお金を払う母親の気持ちをつかまなければならない。非現実的な世界なら、すぐ離れてしまうだろう」


そんな信念から、開発の際はリアリティーにこだわった。ファッションはデザイナーが協力し、「わが子に着せたくなるものばかり」。ラブとベリーは、ゲームにありがちな、頭が大きく胴が短いアニメ風のキャラクターを避け、5.5頭身という現実的なスタイルにした。


フタを開けると狙い通り。子供より母親のほうが夢中になっている光景すらみられるようになった。


"活躍の場"を広げる「ラブandベリー」。11月には携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」用ソフトが発売され、来春には映画が公開される。「いま楽しんでいる女の子が20年後、自分の娘と遊ぶ姿を見てみたい」−。そう言って植村さんは笑った。


(山口暢彦)(2006/12/01 09:30)


「オシャレ魔女 ラブandベリー」とは、どうやら女の子版「ムシキング」らしい。


子供がカードマシンでカードを1枚買い、手元にあるアイテム(カード)を組み合わせ、ゲーム上の登場人物(ラブまたはベリー)を二次元的に着せ変える。このときの髪型と服と靴の組み合わせによって「オシャレ度」が点数化される。そしてゲームから流れる音楽に合わせて、パッドをたたくことで、登場人物(ラブもしくはベリー)が対戦するのだ。


つまり、これはトレーディングカード的なアイテムコレクション要素と、リカちゃん人形的な着せ替え要素と、そして、音楽に合わせて対戦するという、ゲームの対戦的要素が、絶妙にミックスされたエンターテイメントだといえる。


かつて遊んだリカちゃんの世界を髣髴とさせ、かつこのゲームによってオシャレセンスが磨かれると合って、母親の間でも子供同様ラブベリにはまっているものが多いという。


さらにすごいとこは、人気のあった衣装が、実際に子供服として商品化されたり、対戦する際に使われる音楽がCDやビデオとなって発売され、得点アップを目指し、購入し学習している点である。


あるカードゲームをキーにあれでもか、これでもかと拡大してくラブベリビジネス。つい先日はニンテンドーDSでも発売され、来春にはアニメ化もされるらしい。


秋葉原を中心に勢力を張るアニオタを遠ざかるために頭が大きく胴が短いアニメ風のキャラクターを避け、5.5頭身という現実的なスタイルにした点も子供たちの聖域であり続けている一つの要因だろう。


展示作品云々についてジックリと味わうというより、この「オシャレ魔女 ラブandベリー」にドカンとやられてしまったcaltecであった。まあ、こういう予想外の出会いがある展覧会もまたおもしろいかもしれない。


実を言うと「きらレボ」(きらりん☆レボリューション)と「ラブべり」以外の展覧物に関しては、あまり知的好奇心がくすぐられなかったというのが本音のところだ。名作と誉れ高い篠山き新が撮り下ろした山口百恵ポートレートを元に構成したNHKスペシャルも放映されていたが、所謂ポップカルチャーサブカルチャー的な要素の高いこうした一連の作品は、既に雑誌やテレビなどの日常のメディアであふれているため、「既知のもの」として僕の中で認識されてしまっているからかもしれない。なんら新しい視点からの切り口が見られなかったのが少し残念だった。


どちらかというとハイブラウな美術館・博物館という場で、こうした ロウブラウなテーマの企画を行ったことは評価すべきことかもしれないが。


満足度:★★★★☆