写真の現在3 臨界をめぐる6つの試論

caltec2006-12-25



東京国立近代美術館 ギャラリー4にて「写真の現在3 臨界をめぐる6つの試論」を観賞する。表題からわかるように6名の写真家たちの作品を紹介しているのだが、僕が興味を持った写真家は3名。


1人目は、世界各地の「監視カメラ」ばかりを取り集めた伊藤英次の「Watch」。東京、香港、ニューヨーク、フィンランド。所変われば品変わるわけではないので、監視カメラ自体はさほど違いはないが、その監視カメラが置かれた周りの風景によって(なんとなく)都市を窺い知ることができる。監視カメラをキーにした都市比較写真の様相を呈しており、なかなか楽しい作品だった。


もう1人、アイデアとして面白いなと思ったのが、北野謙の「our face」。ある職業の人々の写真を重ね合わせ「典型的な顔」を作り出した写真のコラージュだ。これはどういうことかというと、例えば「チアガール」17人の上半身写真を撮り、それを全て重ね合わせる。。。 そうすると結果として、17人の標準値的な顔が浮かび上がってくるのだ(もちろん、写真の間近に寄って見ると 微妙にずれた口や鼻がたくさん見られるのだが)。


人の顔は職業や年齢、趣味によって近似値があるのか? という問いに対する答えがそこにあると思うが、鳶職は鳶職らしい、ラガーマンラガーマンらしい、それぞれの顔つきをしていたように思う。そうかと思うとチアリーダーとアイドルファンの顔が似ていたりという発見もあったりして、なかなか面白かった。いろんな職業の顔写真を見てみるのも面白いなあ、と思った。


最後の3人目は、ひたすら海面と同じ目線で海を取り続けた力強い浅田暢夫の作品、「海のある場所」。前2者のようにアイデア・コンセプトで勝負する、というより、絶えず変化を続ける「海」という自然と対峙して、その姿をフィルムに焼き付けていく「写真」としての本来の姿で真っ向から勝負しているのが彼の作品だと思う。それだけに彼の作品を目の前にするとなんとも言えない迫力があり、その凄さに圧倒されてしまった。


「ドイツ写真の現在」展でも書いたが、写真という表現手段には、いろいろな広がりがあり、知れば知るほどその奥深さを味わえるメディアだと思う。今後も継続して写真に注目していきたいなあ、と思いながら会場を後にした。


満足度:★★☆☆☆