海猫

caltec2004-09-26



「海猫」(谷村志穂著)を読み終える。まずこの作品を読んで思ったのは、とても女性作家らしい作品だなあということ。物語の終盤のクライマックスに向けて(または作品のテーマに向けて)順を追いつつ、まっすぐに進んでいく男性作家の作品と比べて、女性作家の作品で大切にされているのは、人間の感情の襞。そのシチュエーションにおける登場人物の感情の揺らぎだとか、ある事柄にたいする感情の変化の描写に重きが置かれているような気がします。作品の結果やテーマを重視するのが男性作家だとすると、その過程(感情の移り変わり)を重視するのが女性作家だと思うのです。(あくまでそういう作家が多いというだけで、女性作家だから必ず過程を重視する、というわけではないですが)


惜しむらくは、誰の感情が描かれているのか読み取りづらい個所が多々あるところと、作品を通じてのテーマが(僕には)ダイレクトに伝わってこないところ。登場人物の心の動きや時間の経緯・展開はわかるのだけれど、作者が作品全体を通して言いたかったことを一言で言うと?と考えると僕には上手く表現しきれない。まだ読み取りきれていないのかもしれないけど、女性作家の作品を読んでいるときに感じる違和感というのは、はやりあるのですね。


逆に僕は男なので、女性特有の物事の感じ取り方については、女性はこういう風に物事を捉えるのか、といい勉強になることも事実ではあるのです。ははは。「男性作家の描く女性像は理想像過ぎて私が読むと全然リアリティがない」というのは某女性評論家の言葉ですが、結局そんなものなのかなあ。男女の壁ってなかなか超えられないものなのでしょうか?


★ふと思ったこと★
「海猫」ですが、主人公だと思っていた薫が途中で亡り、娘にその役目が引き渡されるなど「闇の中のパープルアイ」(篠原千絵)を思い起こさせるつくり。。。