caltec2001-08-11



風と共に去りぬ」(東宝、帝劇)を見てきました。


誰もが知っているマーガレット・ミッチェル作のこの作品、ヴィヴィアン・リー演じるスカーレットの姿を真っ先に思い出す方も多いと思います。


そのスカーレットを大地真央が、相手役のレット・バトラーを山口祐一郎がそれぞれ演じるということで、主役2人の人気だけで会場が満員となってしまいそうな、そんな舞台でした。


他には、杜けあき今井清隆寿ひずる、花山佳子、林アキラといった実力派で脇を固め、かなり手堅いキャスティングとなっていたと思います。
#まあ、逆に言えば意外性というか面白味は少なかったですけど。


この舞台は一言で言ってしまえば、スカーレットを演じる大地真央のためにあるような、そんな舞台で、逆に言えば、大地真央の演技如何で作品の評価が下されてしまうような、そんな舞台でもあると言えると思います。


で、肝心のその評価なのですが。。。
映画でのヴィヴィアン・リーの演じたスカーレットのイメージが既に頭の中にあるため、どうしてもそのスカーレット像と、大地が作り出すスカーレット像をついつい比較してしまいます。


ヴィヴィアン演じるスカーレットの自分で人生を切り開いていく、勝ち気で前向きな力強い女性と比べ、大地の演じるスカーレットは、自分の気持に嘘がつけず、天真爛漫で(でも我が侭で)アメリカ南部の大農場の令嬢といった感じでした。


女性の持つ芯の強さよりも、女性の持つかわいらしさが全面に押し出されていて、でも、懸命に生きる姿や、すごい自分勝手さも出ていて、ある種凄いなあ、と感じ入ってしまいました。他の人が演じると「ただの我が侭娘じゃん」と思ってしまうと思うのですが、彼女が演じると、何故かそれが許されるのですね。不思議です。


カルメンを演じたときの大地真央の作り出すイメージとはまた違った女性像でした。
#個人的な意見ですが、僕としてはもっと力強いバイタリティ溢れるスカーレットを演じて欲しかったとは思います。


しかし、彼女の舞台上での「華」は凄いですね。彼女が登場しただけで、舞台がぱっと明るくなります。
#もちろん彼女を照らすスポットライトがひときわ明るいものであることもその要因の一つではありますが。。。


そして、天性のコメディアン振りをいかんなく発揮していました。40をとうに過ぎて、あの健気で愛らしい演技ができるのは凄いですよね。寿 ひずると1期違いなんて信じられない!


山口のレットは、都会的で洒落ていて、スマートなバトラー。映画の男くさーいイメージは全然ありませんでした。相変らずあの美声は健在でした。


歌に関しては、大地よりは杜けあきの方が上手かったと思います。(これに関しては万人納得の行くところだと思います)杜も宝塚のトップスターだった人ですが、芝居良し、歌良しなのに、大地と比べると華がないのか、イマイチ地味なんだよなあ。。


でも、こういった実力者が主役を補佐してこそ、舞台のクオリティーはあがるのですけど。
杜の舞台登場のときに、観客席の一部から強烈な拍手が起りましたが、さすが元宝塚トップスター。固定ファンがいるのですね。


今回の舞台の中で一番気に入ったナンバーは、花山佳子と寿ひずるが唄う黒人霊歌の旋律に似たナンバー。スカーレットとバトラーの一人娘が落馬死し、彼女の葬儀の際に唄われるナンバーですが、実力派2人の、それぞれ持ち味の違う唄い方も同時に味わえ、僕の心に響いてきました。


ストーリーは皆の知るところだと思うので、この舞台は大地真央のスカーレット振りと、南部戦争時代の衣裳なんかに注目してみると面白いと思います。
#残念ながら、ミュージカル作品を代表するような、特に有名になるようなナンバーは少ないと思います。


冒頭に会場全体にマグノリアの香りが行き渡ったりする演出や、アトランタから脱出するシーンのスペクタクルさなどは見ごたえがあって、おススメです。


ただ、ひとつだけ僕の腑に落ちないところが。。。


風と共に去りぬ」の有名なラストシーン、スカーレットが焼け焦がれたタラの大地に立ち、明日からまた生きていくことを誓うシーンですが、その時のスカーレットの姿が。。。髪をアップにし、白いブラウスに黒のロングスカート。


感動的なシーンのはずですが、その姿が僕にはデヴィ夫人に思えてならなくて、頭の中を「ゴキブリの殺虫剤のCMのデヴィ人形」が過ぎり、感動できるものも出来なくなってしまいました。


なんであの衣裳だったんだろう???


今度行かれる方がいらしたら、是非衣裳に注目してみてください。



音 楽 : ★★★☆☆
脚 本 : ★★★☆☆
演 出 : ★★★☆☆
役 者 : ★★★★☆
舞台/衣装:★★★☆☆
満足度 : ★★☆☆☆