ドラマ:mother(最終回)
今クールで一番のドラマは?と聞かれたら、間違いなく、「Mother」と答えるでしょう。いや、「今クールで一番」ではなく「今年で一番」と言ってもいいかもしれないと思えるほど、そのクオリティーは、高かったと思います。
テレビドラマと一口に言っても、サスペンスあり、コメディあり、シリアスあり、と切り口は様々なので、何が「いいドラマ」なのか、人によって判断は異なるかと思いますが、今回のマザーに関して言えば、
・脚本の良さ
・出演者の良さ
が挙げられるのだろうと思います。
とにかく凄いなと感じたのが第8話、つぐみ(怜奈)の母親がフィーチャーされた回。
夫と子供に恵まれ、幸せに暮らす母親が、夫の死後、シングルマザーになり、家族ぐるみで付き合ってくれる知人を失い、だんだんとヤサグれていく様を、時間の経過を追いながら、虐待をするに至るまでの過程を丁寧に描いています。
「善」「悪」とステレオタイプに分類分けするのではなく、登場人物一人ひとりのいろいろな側面を描き出すことで、彼/彼女らが、一人の人として、立ち上がってくるのと同時に、また、母親として完璧な人はいないし、いつ自分がこちら側(つぐみ・直を支持する側)からあちら側(児童虐待をしてしまう側)へ変わるかもしれないという点を、実は描いているのではないか、と思えてきます。
全体のストーリーの大きな流れから見ると、急に番外編のように、異なる視点からの話が挿入されたようにも見えますが、このエピソード(放送回)があったからこそ、motherという世界により広がりと深みが増した気がします。
初回〜第2回は「画像も暗いし、話も暗いし、今後どうなるのか?」と感じていましたが、回を重ねていくうちに、ボディーブローのようにじわりじわりと登場人物達の「母としての想い」が胸に突き刺さってきます。
今クール、NHKで放送された「チェイス」と併せて、脚本家:坂元裕二の力量を見せ付けられたような、そんなドラマでした。