終わりまであとどれくらいだろう


週に2回は通っている近所の大型書店で「村上春樹好きにはおススメ」というポップを見、この宣伝文句にひかれて読んでみた「終わりまであとどれくらいだろう」。


終わりまであとどれくらいだろう (双葉文庫 さ 29-1)

終わりまであとどれくらいだろう (双葉文庫 さ 29-1)


感想はと言えば、、、次の3点により、この作品は「独特な」立ち位置を得ていると思う。


【1点目】交差する登場人物
井坂幸太郎の作品のように、一見すると関係のない登場人物が、ある時点で交差し、ある時点で同じ空間を共有し、また離れていく、、、という一つ一つのピース(章)が複雑に絡み合っている構成を取っている。一度読み終わった後、2度、3度と読み返してみても新たな発見があるし、彼らの住む街ってどんな感じなんだろう?と地図を広げて彼らの生活を上から俯瞰して覗き見ているような気分にもなってくる。


【2点目】とある一日の群像劇
作品の時間としては、複数の若者の1日が、細切れに、時間軸にそって綴られているという形式で、終わり(終結)に向かって物語が突き進んでいくというタイプのものでもない。以前読んだ「きょうのできごと」に似ている感覚を読書中に感じることがあった。


【3点目】独特の文章表現
改行の仕方が変っており、かつ、句点が少なく、一文が長い。だが、文体自体がリズミカルなため、読みづらい構造があるにもかかわらず、読み進めていくうちに、不思議とだんだん苦ではなくなっていく。なかなか味わえない感覚。登場人物それぞれが、モヤモヤしたものを抱えており、それがちょっと毒のある表現で台詞や行動に現れてくる。


個人的に「村上春樹に似た感覚」はあまり感じなかったが、独特の世界観がある作品だとは大いに感じた。「この作品で言いたいことって、結局何なんだろうね?」などと自問自答し始めると、ちょっと扱いに困る作品だとは思うが、大仰ではなく、軽い気持で非日常の世界を味わいたい、そんなときに読むのに相応しい本であると思う。



人気ブログランキングへ