全日本選手権


出場する選手のほとんどが「一番緊張する」大会と言う全日本選手権。女子ショートプログラムを見た。日本女子の選手の層は厚く、まるで世界選手権を見ているような充実振りだった。各自持ち味を活かした演技をする中、今シーズンジャンプが好調だった村主が得意のフリップでミスをする(回転不足+両足着氷)というらしからぬ出来で5位になったのが唯一の波乱といった感じで、それ以外の選手の順位は、想定の通り、といったところだと思う。


個人的には復活した太田と武田の滑りが見られたのが収穫。あとは、恩田はショートの音楽変えて正解だと思う。彼女には「春の海」は似合わない。現に国際大会でもフリーでは点数貰っているのに、ショートでは点数が低かったので。。


トップは浅田真央もしくは安藤に決まったようなものなので、3位が誰になるかに注目したいと思う。明日のフリーはまだ見ていないが、総合成績は1位浅田真央、2位安藤、3位村主、4位中野となるんじゃないかな、と勝手に予想する。

浅田真が首位に 2位は安藤 女子SP

フィギュアスケートの世界選手権(来年3月、東京)などの代表選考会を兼ねた第75回全日本選手権第2日は28日、名古屋市総合体育館レインボーアイスアリーナで男子フリー、女子ショートプログラム(SP)などを行った。男子はSP首位の高橋大輔(関大)がフリーで170.53点を出し、合計256.08点で2年連続2回目の優勝を果たした。SP2位の織田信成(同)は合計235.66点で2位。2人は大会終了後に決まる世界選手権の男子代表(2枠)を確実にした。


女子は、グランプリ(GP)ファイナル2位の浅田真央(愛知・中京大中京高)が71.14点で首位に立った。同5位の安藤美姫トヨタ自動車)が2位につけ、中野友加里早大)が3位。前回優勝の村主章枝(avex)は5位と出遅れた。


アイスダンスは前日トップの渡辺心木戸章之組(新横浜プリンスク)がオリジナルダンス(OD)でリードを広げた。


最終日の29日は、女子とアイスダンスのフリーが行われる。


◇浅田真、71.14点…ISU公認の世界最高点も抜く


浅田真の得点に場内がどよめいた。71.14点。NHK杯の自己ベスト69.50点を上回り、03年10月のスケートカナダサーシャ・コーエン(米国)が記録した国際スケート連盟(ISU)公認の女子SP世界最高、71.12点も抜いた。


冒頭の3回転ルッツ、続く3回転フリップ―3回転ループの連続ジャンプを決めて勢いに乗ると、ショパン作曲の「ノクターン夜想曲)」のゆったりとした調べに合わせて流れるような滑りを披露。ジャンプを含む要素一つ一つを「曲に合わせるようにやっている」という演技は、まさに天才だ。


今季は2連覇を逃したGPファイナルのように、フリーでトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)が決まらず、崩れるケースが目立つ。身長が5センチも伸びるなどの体型の変化が、跳ぶ感覚を狂わせている可能性も指摘されてきた。もっとも、本人は「GPファイナルでは気持ちがだめだった。今日は以前のように何も考えず跳んで、楽しく滑れた」と、精神面に原因を求める。


フリーに向けた抱負は「トリプルアクセルを決め、(合計点)200点を越えて優勝したい」。今大会はISU公認ではないが、NHK杯で自身がマークした合計199.52点の世界女子最高記録を上回る数字が目標。あどけない笑顔が輝く16歳の少女は、地元のリンクで金字塔をまた一つ打ち立てる決意だ。【来住哲司】


◇高橋 文句なし


総立ちの観客の拍手が鳴りやまない。氷上を情感を込めてミスなく滑り切った高橋の演技は、芸術の域に達していた。


オペラ座の怪人」の曲に乗り、冒頭の4回転トーループを鮮やかに決めると、その後もトリプルアクセル(3回転半)などジャンプを次々に成功させた。終盤のストレートラインステップは観客の手拍子を誘った。連続スピンの後に仮面をはぎ取るポーズで締めくくり、両手を上げてガッツポーズ。前回は表彰式後に採点の集計ミスが発覚した末の逆転優勝。それだけに、今回は「最終滑走でパーフェクトな演技ができて興奮しています」と声を弾ませた。


重圧に弱い「ガラスの心臓」と言われてきたが、今季は安定感が増した。トリノ五輪、NHK杯とも最終滑走を務め、GPファイナルでは体調不良の中で銀メダル。「経験がプラスになった。今日はそれほど緊張しなかった」。数々の修羅場を踏み、精神面も徐々に強くなってきた。


世界選手権に向けて「スピンの回転を正確にしてレベルを上げたい。4回転ももう1種類増やしたい」と課題を掲げる。ジャンプをすべて決め、表現力などを問うプログラム構成点でも8点台の高得点を並べた。この日の演技を再現できれば、金メダルも夢ではない。氷上で仮面をはぎとる仕草は、ひと皮むけた「ニュー高橋」を宣言しているように見えた。【来住哲司】


○…SP2位の織田はフリーで高橋に引き離され、前回に続いて2位。トリプルアクセル(3回転半)で転倒する痛恨のミスを犯し、「緊張してしまった。高橋先輩の方が上手だった」と完敗を認めた。前回はいったん優勝が決まりながら、表彰式後に採点の集計ミスが発覚して2位に。「悔しい思いを糧に頑張ってきたんですが……。自分に対してすごく悔しい」と、2年連続で大粒の涙を流した。前回4位に入った世界選手権の代表入りは確実。「3月まで時間があるのでゆっくり練習したい」と巻き返しを誓った。


○…女子SP3位の中野は3回転ルッツ―2回転トーループ、3回転フリップなどのジャンプを成功させ、最後はドーナツスピンで魅せた。「フリップは心配していたが、これだけ点数がもらえてうれしい」とホッとした様子。最近、練習内容を濃くし、本番を仮定しながら取り組むことで集中力を鍛えたという。その成果もあり調子は上向き。「フリーではトリプルアクセル(3回転半)にも挑戦したい」と意気込んでいた。


○…女子SP2位で2年ぶりの優勝を目指す安藤は「緊張したけど、地元(名古屋)で声援が大きくて楽しんで滑れた」と“ミキティスマイル”を振りまいた。3回転ルッツ―3回転ループの連続ジャンプを決めるなどほぼノーミスで、首位の浅田真に1.64点差の69.50点。GPファイナルは体調不良で5位に終わったものの、2日前から「自分の感覚が戻ってきた」という。昨季はこの大会で6位、トリノ五輪でも重圧やけがに苦しみ、15位に終わった。「(昨季不調の原因は)筋肉のたるみ。気持ち、練習量も十分ではなかった」と反省し、今季は体を絞ってジャンプの軸がぶれなくなった。「大人のセクシーさを取り入れたい」というフリーで逆転を狙う。


○…村主は首位と12.58点差のSP5位となり、連覇が厳しくなった。「もったいなかった。(ジャンプの)テークオフできちんとしたところに(タイミングが)はまってなかった」と悔やんだのが3回転フリップ。回転不足のうえ、両足で着氷してしまった。待たされる最終29番の滑走。「うまくいかなかった。まだまだ自分自身の未熟さだと思う」と自分を責めた。前回銀メダルを獲得した世界選手権の代表(3枠)入りも微妙な状況になってきた。


○…ベテランの恩田は大きなミスなくまとめ、女子SP4位。3位に終わった先月のロシア杯後「テンポに追われてステップを踏んでいるようだったから」と、SP曲を「春の海」から「ラブダンス」に変更。スローテンポの新曲で「感情を込めて滑るようにしたら、自分のスケートと一致した」という。フリーでも感情たっぷりに滑り、逆転で表彰台を狙う。


○…03年世界ジュニア、04年四大陸選手権を制した太田由希奈同志社大)が3年ぶりに全日本のリンクに戻ってきた。右足首を痛め、約2シーズンを棒に振った。「白鳥の湖」に乗りながら、課題のジャンプを無難にこなした。表現力豊かで流れるような滑りに会場から自然に手拍子が起きた。本人も「出場できたのはみんなのお陰だと思いながら演技できた。意外と冷静に滑れた」と納得の表情。54.46点でSP7位となり、フリーに向けて「最初のルッツを決めて、燃え尽きるように一つずつ滑っていきたい」と話した。


○…アイスダンス規定2位のリード姉弟組は、ODで姉キャシーが転倒するミス。規定で2.23点差だった渡辺、木戸組との差が7。01点に広がった。「氷の表面の問題ではなく、足の運びが悪かったみたい」とキャシー。それでも「セクシーやワイルドといったタンゴのすべてを表せた」と納得の表情。逆転優勝は厳しくなったが「集中するだけ」と、納得のいく滑りを心掛けるつもりだ。


アイスダンス(ODまで)
(1)渡辺心木戸章之(新横浜プリンスク)80.05点
(2)Ca・リード、Ch・リード(川越ク)73.04
(3)坂頂み、坂頂達(八戸工大)57.42


毎日新聞 12月28日 18時56分)